言葉
突然殴り倒されたアピナは、当然のように怒り、立ち上がった。あのとき、アピナはミカが泣き出したことに気がついていなかったようだった。いつものように三人で固まり、なにかを話していた。俺はてっきり、泣き出したミカを見て笑っているものだと、確認もせずに決めつけていた。モネーも同様だった。というか、ミカでさえそう感じていたんだ。
アピナはまず、モネーを殴った。やられたらやり返す。アピナらしいけれど、僕ならそうはしない。モネーの身体は僕には負けるけれどとても硬いんだよ。どうなるのかは目に見えている。事実、ゴツンッといい音が響いただけで、モネーの身体は微動だにしない。
ウウォー! イッテェじゃねぇかよ!
そう叫び、拳を振った。
その後アピナは、なぜだか踊り、歌い出した。それがまぁ、なかなかに様になっていたんだ。その言葉には確かな感情がこもっていた。
モネーは呆れて僕の元に引き返して来た。けれどミカは、さらに涙を零し、トイレに駆けて行った。アピナはミカに視線を向け、歌い続けていた。
俺は生きている。ずっと生きている。ここでお前を待っている。俺は絶対嘘をつかない。
はっきりとは覚えていないけれど、そんなニュアンスの言葉で歌っていた。




