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スペースセンチュリープライマリースクール  作者: 林 広正
第一章 四人の出会い
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下半身

 アピナの歌が酷いのは、リズムに問題があっただけではなく、その言葉にも問題があった。

 自分のことをただただ喋っていただけなのよね。幼い子がママの前で話す内容とまるで違わないのよ。あんなのは、聞いていてちっとも楽しくないわ。

 その後に仲良くなってから、ミカがそう言っていた。

 モネーの挨拶は確かに自分勝手だったけど、インパクトはあったし、私は嫌いじゃないよ。そう付け加えてもいた。

 アピナはその挨拶の最後になぜか突然上着を脱ぎ捨てた。そこまではまぁ、ただのバカだとみんなが感じていただけだったけれど、その後が驚きだったんだ。

 上半身裸で両手を上げた瞬間に、なぜそんなポーズをとったのかは不思議だけど、ズボンがストンッと落ちた。アピナは下着をつけていなかった。それでみんながドン引いた。

 アピナはいじめこそされなかったが、全生徒から好奇の目を向けられていたのは確かだった。いじめをする側になったきっかけがそこにあるとは思えないけれど、アピナにとって恥ずかしい過去であることに違いはない。

 しかもアピナは、ミカに助けられてもいたんだよ。僕は知らなかったけれど、カッカとセイナのおしゃべりを盗み聞いたことがある。

 アピナはバカだから、大失敗をした後でも平気で偉そうな態度で過ごしていた。クラスではまるで自分が人気者であるかのように、色んな奴に近づいては口を開く。僕も犠牲者の一人だった。中身のない会話は、気心知れた相手だと楽しいが、それ以外とだと、退屈というより苦痛さえ感じてしまうんだよ。

 アピナは当然のように変な奴扱いをされ、下手をすれば静かないじめの対象になっていたかも知れない。それをミカに助けられたんだ。

 どんな風な言葉を使ったのかは分からない。カッカとセイナの会話からは読み取れなかったし、ミカに聞いても教えてくれない。アピナに直接尋ねたことがあるが、顔を真っ赤にさせ、余計なお世話だと言われたよ。全く、意味の分からない奴だよな。

 アピナが急に態度を変え、カッカとセイナを引き連れるようになった日がきっと、ミカがアピナに対してなにかを言った日なんだろうな。アピナは急にクラスに溶け込むように自然な態度を取るようになったんだ。まぁ、アピナの場合、自然にしているつもりでも僕たちの中では浮いてしまうんだけど、無理に自我を出さなくなったってことだよ。

 すると当然のように、アピナへの冷たい視線はなくなった。まぁ、アピナが下半身を晒した事実は消えないし、それはこの学校の伝説になっているんだけどね。


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