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スペースセンチュリープライマリースクール  作者: 林 広正
第一章 四人の出会い
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母親

 地球人っていうのは、その本性を隠す癖がある。三十年前に初めてこの星にやって来た地球人もそうだった。

 僕はその話を、母親から聞いている。当時はまだ、地球人が政府軍に加入したばかりで、その存在自体が珍しかったようだ。

 母親は、この学校の元生徒だ。母親の同級生に地球人がいた。ちょうど今日のトゥーリのように、転校して来たそうなんだ。

 母親の二つ上の年齢に、父親がいた。僕の両親はこの学校で出会ったってわけだよ。

 母親の同級生は、この学校始まって以来の地球人だった。

 僕は当時を知らないから母親の言葉を信じるしかないんだけど、その地球人は、とても可愛い女の子だったそうだ。そのため、男子生徒からは人気があった。違う年齢の生徒が、休み時間になるとこぞって彼女の元に訪れるんだ。ただその姿を眺めるだけの奴もいれば、必死に口説く奴もいたそうだ。母親は、十五歳になっていたという。

 けれどそれは、いじめを誘発する原因にもなった。彼女は同性から疎まれ、口を聞いてもらえなくなり、次第に物理的な攻撃さえ受けることになったそうだ。

 僕の母親はそのいじめには直接参加はしていない。けれど、なにもしなかったことは罪だと反省していた。父親も同じだった。両親はすでに付き合いを始めていて、父親はその地球人に興味がなかった。異性としてだけでなく、同じ人間なんだから珍しい種族だからといって騒ぎ立てるのが嫌だったとも言っていたそうだ。

 地球人の彼女は、初めはおとなしくいじめられていた。なすがままにされていたんだ。僕はそれが正解だと思う。僕はいつだって、そうやって生きている。

 けれど、その彼女は違っていた。なすがままは最初のポーズでしかなく、次第に本性を見せ始めたんだ。まずは男子に牙を剥いた。いい加減に気がついたらどう? 見た目だけでチヤホヤするような男には興味ないのよ。そう言ったときの表情が、とても嫌らしかったらしい。

 彼女のその言葉は、男たちを熱狂させた。それが狙いではなかったようだけど、そのおかげでいじめはなくなった。

 彼女が受けていたいじめは、今とは違う。時代が変われば、いじめの内容も変わるんだよ。

 まずは近づき、仲良くしようねなんて言う。いい人を装って、いいように使い回す。そして金銭やら物品やらを取り上げ、怒りのはけ口として暴力を振るう。まぁ、昔でいうところの奴隷養成ってところだよ。宇宙開拓時代にはそんなことが当たり前に行われていたそうなんだ。当時はそれを真似たいじめが流行していたそうなんだ。


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