アピナ
それが四日間は続いた。モネーは隣に座っているっていうのに、一向に話しかけてはこない。時折僕に顔を向けるだけだ。
おいマッティ! こんな奴と一緒にいるとろくな目に遭わないぜ。こいつの姿を見てみろよ。お前もこういう風にされちまうぞ。
そんな風に話しかけてきたのは、野次馬の中心にいたアピナだった。全身が毛むくじゃらの種族で、身体が学校一に大きい奴だ。
そこのアラストン人がやったんだよ。力任せに押し倒したんだ。
アピナの陰に身を隠しながら、カッカがそう言った。
カッカはいつもアピナの背後をついてまわる。僕はカッカのまともな全身の姿を見たことがない。いつだってアピナの陰に隠れているんだ。背後からの姿も、見せないよ。アピナの取り巻きはもう一人いて、セイナって名前だよ。セイナはアピナほどは大きくないが、カッカよりは大きく、幅が広いのが特徴だよ。幅の広さなら、アピナをも上回るしね。そんなセイナがいつもアピナの後ろにいて、カッカは二人に挟まれて学校生活を送っている。
それは災難だったなと、僕は言った。正直言って、その三人はあまり好きじゃない。怪我をしたのなら、よかったじゃないかと言いたいぐらいだった。
けれどまぁ、最後の言葉を、実際の声に出したりはしなかったけれどね。
アピナは革命軍に所属しているノウン人だ。あの星の人間は、みんな大きくて、その見た目のままにガサツで野蛮なんだよ。モネーが奴らに手を出したとしたら、アピナが黙っているとは思えない。しかも、側で見ていたのならなおさらだよ。
なにをバカなことを言ってるんだよ。俺がこんな奴ら相手にすると思ってるのか? なんだかんだとちょっかいを出してきてたけどさ、俺はなにもしていないぜ。
モネーはなぜか、奴らにではなく、僕に向かってそう言った。僕はなぜか、無意識にモネーの言葉に頷いてしまった。
おいマッティ! アラストン人の味方をするのか?
カッカがそう叫んだ。と言ってもその声は、アピナの背中にそのほとんどを吸収されていて、とても小さかったんだけれどね。




