攻撃
連合軍側の攻撃が激しくなった頃、父親が戦闘機に乗り込み、準備を始めた。艦隊には弱点がある。そこへの道筋を作るのが父親の役目だったはずなんだ。詳しくは分からないし、誰も正式な記録なんて残していないから、作戦の内容さえ正式には誰も覚えていない。それ以前にもその後にも多くの戦いを経験しているから、作戦を考案した母親でさえ、その記憶は曖昧なんだよ。僕の記憶も当然曖昧だけど、はっきりと覚えていることもある。
パニック状態になり始めていた保育学校に、父親が現れた。家にいるときとは違う、戦闘服姿だった。空母内でも、僕たち家族が暮らす空間では、父親も母親も、戦闘服なんて着たことがない。家庭内には戦争は持ち込まない主義なんだ。って言ってもそれは、戦争が生活に染みついているからこそ敢えて意識をしているっていう意味がその態度の裏側に存在している結果なんだけどね。
日常に戦争が溶け込んでいた時代だからこそ、家庭内では戦争を意識しない。それが息子である僕を守るために必要なことだって両親は信じていたようだ。だから僕は、戦争の冷たさと、家庭の暖かさの両方を感じながら生きてこられたんだ。
あの日父親は、これからはマッティが母さんを守るんだぞ。そう言いながら、僕を抱き寄せた。そして、お前たちはいずれこの宇宙を救うことになる。そう言った。それまではなにがなんでも生きるんだぞと。
その後すぐに父親は敵艦隊の攻撃により宇宙に散った。そして、敵艦隊が殲滅した。




