仁藤新菜の入部
──おっきい。
2年生の先輩が今日の練習について説明している間、私はそんなことを考えていた。
野球部一筋だった森山くんと違って、私はいくつかの部で体験入部をしてみた。バスケットボールかバレーボールかで迷った私が結局バスケ部に入ったのは、今目の前にいるこの中川帆波先輩がいたからだ。別に以前からの知り合いというわけではないけれど、なんというか……カリスマ性のある人だった。
肩の辺りまで伸ばした、やや茶色っぽい綺麗な髪。相貌は中学生らしい可愛らしさも、大人っぽい美しさも兼ね備えており、女子バスケ部について説明する声はアナウンサーみたいに透き通っている。
そして極めつけに、とても胸が大きかった。まだ中2なのに、Eカップくらいあるんじゃないだろうか。私は身体の成長が始まったのは遅い方だったため、この先輩はフィジカル面だけで憧れの存在となった。しかも1年生相手にも優しいし、体験の時の教え方も上手だった。この先輩に教えてもらえるなら楽しめるかも、と思い、私はバスケ部への入部を決めたのだった。
「じゃ、分からないことあったら練習中でも構わないから、どんどん聞いてね。以上、解散!」
中川先輩はそう言うと、すぐに2年生の練習に参加した。走り回ってもあの胸がイメージほど揺れないのは、そういう下着を使っているからなのだろうか。……私には当分関係なさそうだけど。
「新菜、運んじゃおうよ」
「あ、うん」
チームメイトに急かされ、私は体育倉庫に向かった。
彼女は早野結衣。小学校も同じで、今もクラスメイトだ。結衣は私と違って、初めから女バスと決めていたらしい。普段からよく話す友達がチームメイトにいて、入部当初に安心したのを覚えている。
1年生の分のボールを運んできたところで、グラウンドの方から、キン、キンと規則正しいリズムで衝突音が聞こえてきた。
──森山くん、頑張ってるかな。
結衣とペアで基礎練習を始めながら、私は頭の中でそう呟いた。