外村亮介の決意
仁藤さんと別れた後、オレはいつも自分の言動を省みる。
──何か変なこと言わなかったかな。仁藤さん、オレとの会話どう思ったかな。
だいたいそんな感じである。
はっきり言って、変に思われていると思う。そりゃそうだ。オレは全く……というほどでもないが、そんなに女子と喋ることは多くない。まして、仁藤さんとは前まで話す機会なんて全然なかったのだ。緊張して、しどろもどろになってしまうことはよくある。
だけど、それでもオレは、仁藤さんと一緒にいられる時間ができたことを嬉しく思う。他の男もいないし、うまく会話を繋げることができないとはいえ、以前よりは距離が縮まっているはず。単純に、そのことがオレは嬉しかった。
最初は、殆ど一目惚れのようなものだった。寒い中一人佇む彼女の横顔が、とても可憐に見えた。
それから授業が始まり、休み時間などに聞こえてくる彼女の声が、魅力的だった。そしてその声を今は、少しの間だけだが、独り占めできる時間がある。
──それも、あと2ヶ月。
夏休み前に、高校講座は終わる。そのタイミングでオレはこの塾を辞めるし、仁藤さんもそうだろう。だから、それまでに……。
それまでに。




