仁藤新菜の写真撮影
校庭に出て真っ先に感じたのは、暑いな、ということだった。ハンカチを取り出すほどではないけれど、今日は朝から暑いと思ってばかりだ。
クラスの集合写真を撮るというのは、昨日から予告されていた。だから私は、中学生になって初めての写真なんだからと、鏡の前で長いこと髪を整えていた。ああでもないこうでもないとヘアゴムを弄り回した挙げ句、結局はいつも通りの髪型に落ち着いた。結び目はない、セミロングのストレート。考えてみれば入学式の日からこれなのだから、今日だけ結んでいったら気合いが入っていると思われそうで恥ずかしい。……まあ、気合いが入っていないわけでは、ないのだけど。
そんなことをしていたら時間ギリギリになってしまい、学校までの道のりを途中まで走ってきたのだ。
「男子が右、女子が左で、出席番号が後ろの方の人は台に乗ってください」
カメラマンさんの指示を受けて、私たちは列を作る。私は最後列になったので、台に昇る。視界が高くなって、なんとなく気分が良い。
皆が並び終わるのを待ってクラスメイトたちの頭を見下ろしていると、不意に私の右手に誰かが触れた。
「あ、悪い」
その誰かが謝った。顔を揚げると……森山くんだった。
「あ、うん……」
気恥ずかしくて、前に向き直る。男子も女子も、中心から外側へ、出席番号順になるように並んでいる。一番後ろの真ん中にいる私の右側には、同じように一番後ろになった森山くんがいる。
「はい撮りますよー、3、2、1──」
カメラマンさんが合図を出して、シャッターを切る。
──やった、森山くんの隣で撮れる。
私は心の中で小躍りしながら、自然と笑顔で撮影を終えることができた。