森山清磁の帰り
帰りの新幹線、車両の一番後ろで新菜と隣り合って座ったおれは、列車が動き出してから窓側の新菜に訊いた。
「どうだった? 修学旅行」
「楽しかった。清磁くんと同じ班になれてよかったな」
「そうだね。おれも新菜と一緒に回れてよかった。楽しそうな新菜は可愛いって、理玖も言ってたし」
「雨野君が言ってたの? ……清磁くんは?」
「もちろんおれもそう思ってたよ」
「……えへ」
新菜ははにかむように笑う。この笑顔を独占できるこの席、最高だね。
「佐藤はどうだった? 女の子2人だけだったけど、ちゃんと楽しめてたかな」
「……クラス行動の時は、心ここにあらずってことが多かったかな。まあ、いつものことなんだけど」
「そうなの? どうして?」
「それは秘密。……清磁くん、日和のことが気になるんだ」
「そういうわけじゃなくて。おれ一応、班長だから」
「ふーん。……まあ、本当にいつものことだから心配しなくていいよ」
「佐藤ってそんな集中力ないの?」
「集中力ないっていうか……いつもクラスで見てて気付かない?」
「いつも見てるのは新菜だけだしなあ」
「……」
新菜は鞄に隠していたお菓子を取り出す手を止めた。
「新菜?」
「……何でもない。よし、寝る! 清磁くん、おやすみ」
「あ、うん、おやすみ」
別に眠そうには見えなかったけど、やっぱり疲れが溜まっているのだろうか。新菜は目を閉じ……おれの腕をギュッと抱くようにして、眠った。
「………………」
……そういえば、この間私服姿を見た時に思ったことだけど。
2年前と比べて、新菜の胸、少し大きくなってたな。




