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外村亮介の受験準備
「では来月、お待ちしています」
オレは新規入塾者用の資料を抱えて、エレベーターに乗った。
まだ中学2年の2月だが、オレは既に受験する高校を決めていた。この頭翼鳴学院の校舎からも自転車で行ける距離にある、王帝高校だ。偏差値でいえば県でもトップクラスの共学校。今のオレの学力では遠く及ばないが、達成できない夢ではない。そう思っているからこそ、電車の定期代も含めてこの塾・この校舎に通うことを親と交渉したのだ。因みに「王帝」は何故か「おうてい」でも「おうみかど」でもなく「おおみかど」と読むらしい。
──絶対に合格する。
その決意とともにエレベーターを降り、建物のエントランスを出る。するとそこには、綺麗な髪をセミロングにした女の子が、手に息を当てながら立っていた。どうやら、誰かを待っているらしい。そういえば、さっきオレが受けたのと同じ体験授業にいた気がする。
──可愛い子だな。
殆ど好みど真ん中のその子を盗み見ながら、通り過ぎる。
この塾での勉強に、一層気合いが入る気がした。




