表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/81

仁藤新菜の友情


 清磁くんの目から見ても、特にわかったことはないらしい。何度か昼休みに来てもらったけど、その成果はない。……まあ、私は楽しいんだけど。


 でも、結衣と玖美子からの風当たりは日に日に強くなっている気がする。この間なんか、まだ私と仲良くしてくれている麻里奈にさえも、会話を露骨に終わらせるという方法で敵対していた。


 意味もわからず、友情が壊れていく。私はこれ以上、こんな状況が続いてほしくない。特に結衣とは長い付き合いだし、理解できないことで関係を終わらせたくない。


 だから私は、思い切って、結衣と玖美子と千春に、正面から訊いてみることにした。


          *


「ねえ、結衣」


 期末テストの理科と音楽(筆記)で新記録を出したのを吉兆と信じ、私は部活のない木曜日の放課後、まだぽつぽつと人の残っている2年4組の教室で、玖美子や千春と何やら話していた結衣に声をかけた。


 すると結衣は一瞬、間を空けてから私を振り返る。


「……なに」

「あの……ちょっと、話がしたくて」

「ごめん、今日は用事があるから」


 そう言って結衣は立ち去ろうとする──けれど、私に腕を掴まれて、立ち止まる。


「結衣、待って」

「……何なの」


 仕方ない、といった風に、結衣は私と相対する。


 私は単刀直入に訊くことにした。


「最近、私を……避けるのは、どうして? 私、結衣たちとは、仲良くしていたんだけど」


 勢いに任せて言い切った。心臓が騒いでいる。もしこれで明確に「嫌いだから」なんて言われたら、どうしよう。


 ところが結衣は、私の予想を上回る憤怒の表情を見せた。


「だったら……私の前でイチャついたりしないでよ!」


 教室を越えて廊下まで響きそうな声で、結衣は叫ぶ。私のみならず、玖美子と千春も驚いている。


 一方結衣はそんな私たちに構わず、怒声を浴びせ続ける。


「私の気持ちをわかってるんなら、あんなことしなくたっていいじゃない! 何で、あんな……私だって……」


 彼女の目の端に涙が浮かんでいるのを見て、私は動揺した。結衣は、何を──


「私だって、森山君の……」

「ちょっと結衣、どうしたの、落ち着いて──」

「うるさい! 新菜に、私の──」


 激昂する気持ちを抑えきれなくなったのか、結衣は開いた掌を掲げて──


「っ!?」

「早野、ごめん」


 ──清磁くんに、その手を掴まれた。


「気持ちは素直に嬉しいけど……。でも、これからも、新菜と友達でいてやってくれないか」


 結衣は半分振り返って清磁くんと目を合わせ、


「……ごめん」


 そう言い残し、教室を出て行った。


 私たちはそれを見送ることしかできない。けど清磁くんは冷静に、今度は玖美子と千春に言う。


「事情はだいたいわかったけど……2人も、新菜と仲良くしてくれると、嬉しいな。……新菜、行こう」


 清磁くんに手を引かれ、私は慌てて鞄を手に取る。


 帰り際、


「玖美子、千春、また明日」


 と言ったのは、彼女たちに届いただろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ