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早野結衣の悩み


 それなりに、充実した生活を送っているつもりだった。小学校時代から仲の良い友達と同じクラス、同じ部活で、人間関係には困っていない。授業にも、まあ普通についていける。


 そして、密かに抱いていた恋心もある。


 小4の時に同じクラスになってから、少しずつ、好きになっていった相手だ。野球をやっているからか短髪で、柔らかい笑顔を持つ男の子。彼自身はそれほど活発というわけでもないけれど、自然と周りに人が集まってきて、目立たないながらもクラスの中心にいる、そんな人だった。


 5年生、6年生でも同じクラスになった。会話することはそんなになかったけれど、遠くから眺めているだけで楽しかった。


 そんな彼と、中学最初のクラス編成でまた同じクラスになれた。新生活が始まって最初の1ヶ月は、心から充実していたと思えた。


 でも、いつの間にか、森山君は、新菜の恋人になっていた。


 玖美子ちゃんが駅で2人を見たと言った時、嘘であって欲しいと思った。でも、すぐに新菜本人が認めてしまった。知らない間に、私は失恋していた。


 思えば新菜も、森山君と同じように、自己主張の強くない割にはみんなの中心にいるような子だった。彼女は、6年生の時に胸の成長が始まったと言って、私を含め既にブラジャーを毎日着用していた何人かの友達に相談していた。そういうことについて訊いてくる新菜はどこか怯えたように控えめに話すものだから、なんだか可愛らしく思えて、みんなで世話をしてあげたものだ。


 別に、誰も悪くない。だから私は今も、新菜と友達でいるし、森山君にアプローチしたりはしていない。


 それでも……。


 不完全燃焼の恋は、まだ私の中で燻っている。

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