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森山清磁のテスト後


 中間テストが終わって10日ほどが過ぎた。


 返却された答案を見ると、まあ悪くないんじゃかいかなという点数だ。中学で初めてのテストなのでどれくらいとれればいいのかわからないけど、新菜に訊いた点数とだいたい同じだったので、多分悪くはないのだろう。あとは、順位表が配られるのを待つだけだ。


 中間テストに関してはそれで終わり。特筆すべきことはない。


 しかし、おれの周りの友人関係には、そこそこ大きな変化が生まれていた。端的に言うと、伊吹が仲間外れにされているのだ。


 新菜が伊吹に告白された翌日、テストが終わってからおれは、消沈しているように見える伊吹に話しかけた。


「あのさ、伊吹」

「……なんだよ」

「その……話は新菜から聞いた。でも、昨日のことはできるだけ気にしないで、仲良くしてくれると、嬉しい」


 伊吹とは去年からよくつるんでいたし、後腐れのないように、おれは正直に話をした。


 しかしそれを聞くや否や、伊吹は激昂した。


「なんだよ……俺が振られたからって調子乗ってんじゃねぇよ!」

「え、いや、別にそういうわけじゃ……」

「うるせえ、もういい!」


 そう吐き捨てて、伊吹は教室を出て行った。テストの答え合わせをしていた級友たちの面前で、だ。


 そしてその後、中山や田中が「あれは伊吹が悪い」「森山は気にすんな」とおれに味方するように言ってきて、伊吹には話しかけなくなった。それはおれと新菜がクラス公認のカップルになってから交流の深くなっていた女子にも波及し、伊吹は伊吹で誰とも仲良くしないので、今彼は、休み時間も孤独に本を読んでいる。


 ちらっと見えた挿絵の感じだと、多分伊吹が読んでいるのは何かのライトノベルだと思う。あいつとラノベの話をしたことはなかったので意外だったけど、おれも稀にラノベを読むので、一度くらいオススメを訊いておきたかった。けれど今、話しかけられるような雰囲気じゃない。


 一方で、孤立化していく伊吹とは反対に、テストの成績をダシにして、クラス内の友情はより強くなっていった。集合写真の時にバカみたいなポーズを提案していた中山が意外に高得点を取っていたことなんかで、おれの周辺でも盛り上がっていた。


 そんなある日、新菜に不自然な動きがあった。


 最後に返却された理科のテストの点数を聞こうと思い、おれは新菜に声をかけようとした。その時新菜は赤羽や鈴木、早野、吉澤といったいつものメンバーと話していた。何故か声を小さめにしている。


「新菜、理科のテスト──」


 とそこまで言いかけたところで、吉澤が振り返って、



「森山、聞いちゃダメ!」


 などと、両手でバツ印を作った。


「え、そんなに点数低かったの?」

「そうじゃなくて、ああもう、新菜、トイレ行くよっ」

「あ、おい──」

「ごめん、清磁くんの話は後で聞くから……!」


 そして5人はそのままどこかへ行ってしまった。


 その後で理科の点数は聞けたのだけど、どうにもあの時の新菜が気になる。できれば、隠し事とかではないといいけど。

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