森山清磁の疑問
おれと新菜の交際が明るみに出てから数週間が経った。
もともとおれも新菜も付き合っていたことを隠していたわけではなく、わざわざ公表するのが照れ臭かっただけなので、周囲にバレても特に問題はなかった。むしろ、赤羽麻里奈や鈴木玖美子や吉澤千春、男子だと伊吹や中山や田中なんかが強引におれと新菜が話す場面を設けたりしたお陰で、微妙に距離のあった3組の男女が仲良くなったから、結果的にはプラスになった。
それに、5日後に迫った中間テストの影響で部活が停止となったこともあり、ここ数日、おれは新菜と一緒に下校している。部活がある間はそうそうできないし、休日も都合が合わないと2人の時間を確保できないので、おれとしては願ったりかなったりだ。でもまあ、流石に人の目があるところで手を繋いだりはできなかったけど。
そんなこんなで、今日もおれは新菜と一緒に帰っているのだが……。
「新菜、またいるよな」
「うん、私もそう思う」
最近、2人で帰っていると、たまに誰かがついてきている気配がする。おれたちは別に探偵でもなんでもないので、そういう勘が鋭いわけでもない。なのに気づいたということは、それなりに頻繁に尾けられているんじゃないだろうか。で、何度か振り返ってみると、学ラン姿の人影がある。……というか多分、伊吹だ。
そのうち理由を訊いてみようかと思ってはいるのだが、「尾行」という響きが不気味で訊けないでいる。家までついてくるわけじゃないから、危険だとは思わないけど……なんなんだろう。
「清磁くん、やっぱり訊いてみてくれない? こう何日も続くと、ちょっとこわい」
「うーん、そうだね、明日学校行ったら話してみるよ」
「ありがとう、お願い」
というわけで明日、伊吹を問い質すことにした。