五月のキャンバス
初夏のファスナーを下ろすと
白い光は甲高く笑った
直視なんて出来やしない
慣れない眼は閉じてしまいなさい
とても危険だわ
偽りの香りが騒ぐ
虚ろげな褐色の影は惑う
湖水に浮かぶ白鳥は罪深いシロ
戯けた波紋が描くのは純粋なクロ
旅人はどこ吹く風の絵画に憩う
五月のキャンバス
輪郭のない雨粒を掴んで
君は心をつなげてゆく
優しさは単色ではつくれないと
喜びも怒りも哀しみも楽しみも
君は幾たびも重ね続けてゆく
夕空のときめきは儚くて
恋色は刹那に奪われる
黒鳥の翼が視界を染めて
冷んやりした光が生まれたなら
瞳を開ければいい 閉じたらいい
そこには何もないかもしれない
あるかもしれない
五月のキャンバス
君の感性を誰も否定しない