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  作者: 卯月奏
1/3

モノクロ

消毒液の匂いが鼻についた。


私は目をあける。


白い天井。


果物が置かれたテーブル。


私の腕に繋がれている点滴。


首を傾け窓の方をみる。


満開の桜が咲いている。


そこでふと違和感を感じる。


「え…?嘘でしょ?」



私の世界はモノクロだ。


ていうか待って。


ここは…病院?


私はなんでここにいる?


私は…誰なの…?


コンコンとノックがなる。


「入るわよ」

と落ち着いた声がする。


歳は40から50といったところだろうか

少し髪には白髪がまじった優しそうな人だ。


私と彼女の目が合った。


葉月(はづき)

やっと目が覚めたのね?

もうどれだけ心配したか!

ほんとによかった…」


そういって私を抱きしめる。


葉月とは私の名前なのだろうか

何も反応がない私をみて彼女不思議に思ったのだろう。不思議そうな顔で


「葉月…?」


と私に向かって言う。



「えっと…。

葉月というのは私でいいんでしょうか?

あと…あなたは私の事を知っているのですか…?」


彼女は目を見開く。


「え…?…そうよ…

あなたの名前は水上葉月(みかみはづき)というの…

私は、あなたの母よ…

ち、ちょっと待ってね、先生呼んでくるから…」


彼女は泣きながら部屋をでた。

私の名前は水上葉月なのか…

あの人が私の母なのか…


白衣をきた先生らしき人と母がかえってきた。


「こんにちは、葉月さん。

僕は君の主治医の柿本というんだ。

目をさまして本当に良かった。

ところで、なにか変わったことはあるかな?」


「えっと…記憶がないのと…

あの、前のこと覚えてないんで生まれつきだったのかもしれないんですけど…色がみえません」


「お母さん、葉月さんは以前色はみえてました?」

と先生。


「はい…。見えてました。」

そうなんだ…私は前色がみえていたのか…


「そうですか…。

葉月さんはもうあとは目をさますだけといった状態だったので、きっと事故のショックですね…。記憶の方は予想はついていましたが色もでしたか…

あと何日か入院していただいてそれからはご自宅に帰れますよ。

なにか心が驚かされることがあると色はみえるようになるといいますし、

記憶の方は時間と見慣れたものをみることで思い出すかもしれませんし気長にまちましょう」


そう言って先生は病室をでた。


それから私は母と話した。

私は母と父と弟の4人家族だということ。

私は今大学2年生で一人暮らしだということ。

母は言ってくれた


「葉月、急いで思い出さなくてもいいの。

あなたがこうして目をさましてくれただけでも私はうれしいから。

大学は休学するなり、行くなり自分の好きなようにしなさい。でも、絶対無理はしないこと。」


「うん!」


私は母に笑いかける


自分の存在がわからなくて不安な気持ちが大きいし

まだ目の前の母に対して緊張もしてしまうし、気もつかってしまうけど、少しずつでもいい

私を心配してくれている人に感謝して

早いことに越したことはないがゆっくりでも

私の大切な人を思い出せたらいい。

そしていつかこのモノクロの世界も鮮やかな色になれば…



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