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俺は研究がしたいんだ!  作者: N・T
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5話 調合と助けた少年

 採集の翌日は生憎の雨模様だった。

 天気に関してはどうしようもないので今日は昨日取ってきた素材の選別や下処理を行うことにした。


 たらいを準備しその中にルコの実を入れ全ての実が浸かるように水を入れていく。家の外にある井戸からポンプで水をくみ上げるが子供の身体になっているためかなりの重労働になっていた。ただ、金に任せて最新技術のポンプを取り付けているので釣る瓶を使っている所と比べれば雲泥の差である。


 10分が計れる砂時計を近くに置き放置する。そうすることで水面に実が浮いてくる。この浮いてきた実は取り除く、実が軽くスカスカだと言うことで使い道が無いのだ。

 実を取り除いたりしていると10分などあっという間だ。ザルでよく水気を切り干し台の上にザーと流して均す。

 ここでさらに皮が痛んでいるもの実が熟しておらず青いもの等々基準に満たないものを手作業で選別していく。いい品質という物はすべからずこう言う下処理から手間隙を惜しまないものである。

 下っ端の見習いがするのは主にこんな事からなので理想と現実の違いからすぐに根を上げるものが出てくる。

 魔法学も錬金術も完成させるまでのプロセスが楽しいと思わないと長くは続かない。そして良い物、新しい物が出来てももっともっとと貪欲なまでの向上心を持ち続けられる者が一握りの本物になるのだ。


 ルコの実が終われば次はキノコ類だ。

 カエンダケとバクレツダケをそれぞれすり鉢に入れてすりつぶす。

グルグルグル……

 ある程度つぶれたらそこに油を入れ、塊になるまでさらに混ぜる。

グルグルグル……


 大人でも結構体力がいる作業で額の汗を拭いながら混ぜ棒を動かしていく。そしてカエンダケは固形燃料へと変わり、バクレツダケは対魔獣用の炸裂玉になった。


「今日の作業終了!」


 さすがに疲れた。

 後は何もしたくない。

 腕がダルイ。

 日は傾いてきているがまだ夕暮れまでは時間があったが。


「風呂入って飯食って寝る」


 自由気ままの一人暮らし、文句を言う者はいなかった。



 翌日は昨日と打って変わって雲一つ無い晴天だった。昨日処理をしたルコの実を天日に干し、夕方にはカラカラに乾いた実を石臼で引いて粉にして一日が終わった。


 そして採集から3日経ったこの日、家に来客があった。


「こ、こんにちは」


 ガチガチに緊張した状態で立っていたのは森で助けた少年だった。


 玄関に立たせたままなのも悪いので中に入ってもらうことにした。


「うわぁ~、うわぁ~」


 家の調度品を見るたびに驚嘆の声を上げ、それに比例するように顔色が悪くなっているように感じる。

なぜだ?

 居間に通し無難にアイスティーを振舞う。ここに人など来ないのでお茶請けが用意できなかったのが残念だ。

 だがなかなか手を付けようとはしなかった。


「毒なんか入ってないぞ?」


 そんな軽いジョークのつもりだったのだが相手はまじめに受け取りあわてて飲むが途中でむせた。


「…すまん」


 ここまで反応するとはこちらとしても予想外で焦ったが向こうもようやく落ち着いて話が出来るようになった。


 で、目の前に座っている少年だが名前はロイ、木工職人の父と針子の母を持つどこにでもいるような平民の子だった。

 話を聞いて彼の生活水準を考えると同じ平民の出だが類まれな才能で伸し上がり準貴族としての扱いになった自分とは雲泥の差があり、彼は怯えていたのだ。


 森で魔獣に襲われた所を助けてもらい貴重な魔法薬で傷を治してもらったにも拘らず本人は気を失ったまま、意識を取り戻して詳細を聞き青ざめるも出歩く許可に数日が必要でお詫びに訪れるのが遅くなったと頭を下げてきた。


 自分が貴族として扱われたのは事実だがそれは名誉貴族で一代限りのものだ今の自分は貴族ではない。この国は実力主義で才能があれば貴族と同等の待遇が約束されている。

 だがなによりも血を尊ぶ貴族からしたら面白くないわけで国としての妥協点が一代限りの名誉貴族なのだ。


 ロイに自分が貴族ではないことを説明し緊張していた空気が緩んだが魔法薬のお金をどうするかで再びロイに顔が歪んだ。


「中級魔法薬の相場は大銀貨2~3枚がいいところだろう」


 金額を聞いて泣くのを我慢するために血が滲むぐらい手を握り締めこちらの様子を窺ってきた。

 その様子からロイの家族にはその金額を払う余裕は無いのだろう。

 だがこちらとしても慈善事業で済ますわけにもいかない。ただでさえこの家は金がある家として見られているのだ。金の亡者に擦り寄られる餌を自分から撒く馬鹿な真似はしたくない。


 かと言ってこのまま金が払えないとなれば目の前のロイ君は奴隷落ちし、俺に従属契約で縛られる事になる訳だが金が払え終えても奴隷落ちの経歴は後々まで響いてくるのだ。

 就職に結婚、見知らぬ相手に後ろ指を指され、足元を見られてピン撥ねされる生活。そのせいで心が歪み犯罪を犯して再び奴隷落ちする者も少なくない。


 目の前の仕事も就いていない前途ある子供にそんな未来は悲しすぎる。なので俺は交換条件を突きつけた。


「魔法薬のお金が払えないのは分かった、なら代わりに中級魔法薬を作って俺に納品しろそうすれば奴隷落ちしないで済む」


 俺の出した条件が予想外だったのか目を大きく開けて口をパクパクさせている。


「無、無理です。僕は作り方を知りませんし第一材料も無い、魔法薬だから魔力もいるんです。不可能です」


「大丈夫、大丈夫。作り方は教えるし材料はあの森で大概が揃うから足りないのは家の備蓄から出すよ。魔法薬1本丸々の金額よりその材料の原価のほうが安いよ?銅貨数枚なら払えるだろ?」


「そ、それなら…確かに払えるけどぉ」


「魔力に関しても生き物なら誰でも持っているから心配はいらないよ。犯罪者の魔力を強制的に吸い出す魔術具が国にはあってね、ここにもそれに近い魔術具があるんだよ。効率は悪いが吸い出した魔力を魔石に貯めることで代用する事にしよう」


 元々前回の収集が中途半端に終わったので近い内に行く事は決まっていたのだ。

 そこに荷物持ちとしても使える子供が参加する事になっただけだ。


 そして収集の話を詰めていき3日後の朝、この家に集合ということで決まった。

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