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第1章 夫婦の仲は交換日記から

第一章 夫婦の仲は交換日記から


 フィリアは自室で本棚を眺めていた。

 そこには祖国から持ち込んだフィリアの愛読書が並んでおり、もう何回も読んでしまったものがほとんどだ。読み飽きたとまではいかないものの、そろそろ違う本も読みたくなってきた。

「図書館に行こうかしら?」

  一冊の本を取出し背表紙を眺めながら呟いた言葉に、侍女のジゼルが反応した。

「よろしいんじゃありませんか? 姫様はお部屋にこもってばかりですから、少し環境を変えてみたほうがよろしいですよ」

「そうねぇ」

 頬に手を当てて悩むフィリア。

「でも、ここから図書館までが遠いのよ」

 憂鬱そうに黒髪を掻き上げるフィリアは、先日この国に嫁いできたばかり。まだまだ勝手のわからない城に苦労しているのだ。

「そんな。たいした距離ではありませんよ。そんなことを言っていたら、慣れるものもありません」

「そうは言っても……」

 弱気なフィリアを侍女が叱咤するがそれでも、彼女の気分は晴れなかった。いつもは美しく煌めいている碧い瞳も、今は不安気に曇っている。

「ああも周りに気を遣われるとかえって疲れるのよ。腫れ物を触るように接せられて、どうしたらいいかわからないわ」

 フィリアの憂鬱は、この国でのフィリアの立ち位置にあった。

 彼女は秋に婚約し、冬を越えてその年の春に結婚した。

 今年で十五になったばかりで余りに早い結婚であるが、政略結婚であるため仕方ない。

 そして、その政略結婚こそが、フィリアの立場を微妙なものとしていた。

「仕方ありません。事実、姫様は同情されて当然の立場にいらっしゃいますから。姫様だって、怖いから絶対近づきたくないとおっしゃったではありませんか」

「そうだけど……」

 フィリアは言葉につまって俯いた。ジゼルに言われたからではなく、恐怖の対象について思い出してしまったからだ。

「アレスの耳に入らないか心配だわ」

 祖国に残してきた姉想いの弟の姿が浮かぶ。結婚話があがった時、彼は最後までフィリアのことを心配して結婚に反対していたのだ。

「フィリア様のこととなると途端に冷静さを失われてしまう方ですからね。激怒して乗り込んでくるかもしれませんね」

「笑えないわ」

 事実、フィリアの結婚を知った時、アレスはフィリアのもとに激怒して乗り込んできたからだ。

 

 数か月前、冬の寒さがやわらいできた暖かい日。祖国クルトネ王国の閑散とした自室でフィリアは本の整理をしていた。

「こうして見ると、思ったよりもたくさんあったのね」

 読書好きなフィリアの私物はそのほとんどが本であり、王女らしいものと言えば部屋にひとつだけ置かれたドレッサーに収納せれている品だけである。

 一国の王女としてあるまじき光景であるが、フィリアの祖国クルトネ王国は万年財政難に苦しむ貧乏国であるため、誰も咎めるものはいない。

 高価な宝石類を求めるよりも良いだろうと、もっぱら国の者はフィリアの本収集を止めはしなかった。

「全部は持っていけないかしら?」

 悩ましげに本棚を眺めるフィリアだが、聞こえてきた足音に視線を扉に向けた。

 次第に大きくなる足音は荒っぽく、相手の興奮具合がありありと伝わってくる。やがて足音の主はフィリアの部屋の前で止まった。

「姉上!!」

 盛大な音を立てて入ってきたのは焦げ茶の髪に翡翠色の髪をした少年。肩を怒らせて大股で部屋に入ってきた弟に、理由が分かっているフィリアは苦笑した。

「アレス、お行儀が悪いわよ。足音がずっと前から届いていたわ」

「そうさせているのは姉上です!!」

 五つ下の温厚である弟がここまで怒る姿は、フィリアも初めて見た。

「姉上、ラディエント王国の第一王子と結婚すると聞きました」

「そうよ。いい縁談を頂いたでしょう」

 フィリアは秋に隣の大国ラディエント王国の王子と婚約し、そして今月の末には結婚する。弟には隠していたのだが、どこからか聞きつけてしまったようだ。国同士の政略結婚など特に珍しいものではないが、このフィリアの結婚にはある事情があった。

 フィリアの自国クルトネ王国は、後方を険しい岩山に囲まれ、前方は大国ラディエント王国に塞がれている小さな国だ。もともとはラディエント王国の一地域であったのだが、のちに独立を許されて国となったものだ。特に特産もない国であるため、国全体が一丸となってどうにかやってきていたのだが、今年になってどうしようもない深刻な事態に陥っていた。

 季節はずれの長雨のせいで農作物のほとんどがやられてしまい、クルトネ王国は前代未聞の大飢饉に見舞われたのだ。

 このままでは国民の半数以上が餓死してしまうと、絶望していた国王にラディエント王国の現王は言ったのだ。

『クルトネ王国に対し、全面的に食料援助をする。そのかわり、クルトネ王国の第一王女を我が息子の妻として自国に迎えたい。』

 それは援助のかわりに娘をよこせ、という明確な取引だった。

 ラディエント王国以外の国とクルトネ王国は隣接しておらず、一番近い国でもラディエント王国の広大な領地を挟むため大変な労力と時間を要してしまう。

 断るということは餓死することと同義であった。

 無論、国王はそれを承諾し、フィリアにも異論はなかった。

 例えそれが訳ありの王子であったとしても。

「ラディエントの第一王子と言えば、あの首なし王子ですよ!!」

 アレスの悲痛な叫びが室内に響いた。不吉な響きにフィリアの肩がほんの少し揺れる。

 フィリアの夫となるラディエント王国の第一王子、クロドベルトス・ド・ラディエントは、三年前までは亜麻色の髪に紫の瞳で彫刻のように美しいと有名だった。

 あちこちの国から縁談が絶えず、本来なら弱小国の王女であるフィリアなどに声がかかるはずのない相手であった。

 しかし、今やそれは過去形であり、縁談を望むものなど一人もいない。

「首がないんですよ!! 比喩などではなく、本当に」

「そうらしいわね」

 そう、クロドベルトスには首がなかった。正確には首から上が。

 王位争いの一環で、呪いをかけられてしまったとかなんとか。

 どれほど優秀であっても首のない後継者など前代未聞。クロドベルトスは、王位継承者から外され、今や国内でも敬遠されていると噂されている。

 そんな相手に嫁ぐのだ。姉想いのアレスが反対するのはもっともなことだった。

「考え直してください。首がないなんて。どうやって生きているのか、人間なのかもわからないような者ではないですか。だいたい、相手のことをなしにしたとしても、姉上はまだ十五なんですよ。結婚なんて早すぎです」

「無理よ」

 フィリアは即答した。

 クルトネ王国の法律では成人は十六からとなっており、確かにフィリアは十五歳と、まだ成人していない。王室会議では花嫁が幼すぎるとの声も上がっていたのだが、事情が事情なだけに、ラディエント王国側から急かされる形でフィリアは結婚することとなったのだ。もちろん、このことはアレスには内緒である。

「この婚姻はクルトネ王国を救うためのもの。それに、もう両国で話はまとまっているわ。今更どうこう出来るものではないのよ」

 淡々と語るフィリアには一切の迷いはなく、何を言っても最早変わらないのだと、アレスに理解させた。

「……姉上は、それでいいんですか?」

「ええ」

 フィリアは弟に向けて、出来る限りの最高の笑みを浮かべた。

 実を言うと、フィリアはもの凄く不安だった。

 アレスの言う通り、首が無い王子が生きて動いているなど、想像するだけでも背筋が凍るものだ。不思議に思う以前に恐怖の対象でしかない。

 そして、フィリアは幽霊の類が大の苦手だった。

 昔から怖がりで、最近になるまで夜に城を出歩くことすらなかった彼女にとって、首無し王子との結婚は死刑台に立つような絶望を与えた。

 しかし、そんなフィリアの感情など、国の大事の前では気に留めるのも馬鹿らしい。

 フィリアは王族としての誇りを総動員して、なんとか気丈に微笑んでいた。

「田舎の貴族と結婚させられるより、刺激的じゃない?」

 内心ではびくびくと怯えていても、長年公務で培った作り笑いとはったりは完璧だ。

 清々しいまでの笑みで頷かれてしまえば、アレスはそれ以上何も言えない。それでも納得はしていないらしく、難しい顔で黙り込んだ弟に、フィリアは少し申しわけなくなった。

 婚約のことを意図的に黙っていたことには、多少なりとも罪悪感を持っているのだ。

「黙っていてごめんなさいね。アレスは絶対反対すると思ったから」

「当たり前です。」

 即答した真面目な弟に、フィリアは微笑んだ。

 幼い弟を残して国を離れることに不安はあるが、アレスならきっと良い為政者になるだろうとフィリアはさほど心配していなかった。

「そんな顔をしないでアレス。殿下の気性は穏やかだと聞くし、お首がなくても殿下の人間性そのものはきっとお変わりないと思うわ」

 心にもないことを言いながら弟を安心させようとするが、アレスは納得しない。

「そんなのわかりません。その噂が正しいという保証もない。会ってみて襲われたらどうするのですか」

「あんまり怖いことを言わないで。大丈夫よ」

 どこまでも姉のことを心配するアレスに、フィリアは苦笑した。

 手を伸ばしてアレスの柔らかな髪を撫でる。

「心配しないで。隣の国なのだし、殿下にお許しを頂けたら多少の里帰りも出来ると思うわ」

「…………はい」

 フィリアの言葉に間を開けて、それでも頷いてくれた。

 その弟の優しさに、フィリアは微笑んで別れを告げたのだ。


 弟のことを思い出したフィリアは、祖国を思い出し恋しくなってしまった。

 約束通り、ラディエント王国の国王は大量の食糧をほとんど無償でクルトネ王国によこしてくれた。冬越えを諦めていた者たちも皆、給付された食料により救われたのだ。

 フィリアはクルトネを救ってくれたこの国に感謝していた。だからこそ、現状での居心地が大変悪い。

「それで、いかがなさいますか?」

 物思いにふけっていたフィリアだが、再度確認をとられて目を向けた。

「そうね、行きましょう。たまには動かないと歩き方を忘れてしまいそうだし」

 肩をすくめながらフィリアは言うと、棚に本を戻した。




「フィリア姫」

 自室からほんの数分歩いたところで、聞き慣れた声にフィリアは呼び止められた。一瞬顔をゆがめたフィリアだったが、すぐに笑顔を浮かべて振り返る。

 丁度、ふっくらとしたお腹で丸い眼鏡をかけた金髪の男性が早足で歩いてくるところだった。

「まあ、ルペルト伯爵。ごきげんよう」

「ごきげんよう姫君、どちらにお出かけですか?」

 挨拶もそこそこに、いきなり聞いてきた不躾な伯爵に一瞬フィリアの瞳が曇ったが、すぐに大人しく答えた。

「図書館に、本を借りに行こうかと思いまして」

 答えながらも、フィリアには伯爵が次に言う言葉がわかっていた。

「では私もご一緒してよろしいですか? 姫もおひとりでは不安もあるでしょう」

 気を遣った笑みを浮かべる伯爵。さも自分の言っていることがフィリアのためになっていると信じて疑わない表情だ。

 フィリアはため息をつきたい気持ちを押しこめ、どうにか顔に笑みを張り付けていた。

 フィリアが自国のためにこの国に嫁いだことは、城内では周知の事実だった。

 そうでなければ、首のない王子に嫁ぐものなどいないと誰もがわかっていたからである。

 そのため、フィリアは呪われた自分の息子を不憫に思った国王が隣国の窮地に便乗してよこした花嫁として、城内で多くの同情を集めていた。

 特にこの伯爵は呪われた王子を嫌煙しているのか、やたらとフィリアに近づいてくるのだ。

 初めは親切だと思っていたフィリアだが、程なくして伯爵の視線に憐れみと同情、打算を感じとり、不快感を味わったのは苦い記憶だ。

 それ以来、フィリアはむしろこの伯爵にこそ会いたくないと思うようになったのだ。

 しかし、伯爵は気持ちの悪いくらいフィリアに付きまとった。

 偶然を装っているが、まるで見張っているかのようにフィリアが部屋を出るとすぐに近づき声をかけてくる。

 そのため、フィリアは極力部屋から出なくなっていったのである。

「それともお部屋にお持ちしましょうか? 廊下には何人か使用人が控えております。姫様が態々出向かなくとも、言っていただければ彼らが取ってまいりますよ。」

 人の良さそうな笑みの中に、気の毒そうに自分を見つめる瞳を見つけ、フィリアは喉がつかえるような息苦しさを感じた。

「……結構です。自分で見て探したいので、私自身が向かいます。付き添いも結構。ジゼルがいますので」

「しかし……」

「お気になさらないでください。この国の図書館は素晴らしいとお聞きしています。是非この目で拝見したいのです」

 王女として培った有無を言わせない笑みを向け、フィリアは伯爵の言葉を封殺した。

「無駄に長居は致しません。昼食の時間までには戻ります」

 なおも何か言いたげな伯爵を無視して、フィリアは出来るだけ早くその場を後にした。

 胸の辺りがむかむかして、なかなか収まらない。

 フィリアは胸の鬱憤を晴らすかのように更に速度を上げて歩いた。

「姫様、どこまで行くおつもりですか?」

 ジゼルの淡々とした声が止めなければきっとどこまでも進んで行っただろう。

「図書館はとうに過ぎてしまいましたよ」

「えっ」

 はっとして辺りに目を向けると、図書館の扉が五十歩ほど後ろにあった。無心になりすぎて気づかなかったようだ。

「えっと……ごめんなさい。少し考え事をしていたみたい」

 フィリアは疲れたように微笑んだ。

 なんだか最近疲れが溜まっているように思える。急激に環境が変わり、周りの空気にすら重さを感じるようになっている。

「姫様、ひとまず深呼吸でもなさってください」

 ジゼルに促されて、フィリアは大人しく大きく息を吸った。

 空気とともに溜まった黒い気持ちを吐き出し、なんとか落ち着く。

「ありがとう。少し楽になったわ」

 急いで歩いたせいで、フィリアの髪は乱れていた。ジゼルは素早くフィリアの身だしなみを整えた。

 フィリアは、てきぱきと動くジゼルを横目に見るが、その間も先ほども、ジゼルの表情は動かない。

 フィリアが幼少の頃から仕えてくれているジゼルだが、フィリアは彼女の表情が変わるところを見たことがなかった。

 ジゼルは常に無表情で作業をこなし、淡々とした口調で言葉を紡ぐ。

 それを不気味と怯える者も過去にはいたが、フィリア自身は気にしてはいなかった。

 昔、一度訳を尋ねたことがあったのだが、ジゼル自身もわからないとの答えが返ってきたので、そういうものなのかと完結していた。

 自分の中に不安や悩みをため込みやすいフィリアにとって、ジゼルの冷静さは心強いものだ。

 なにより、無表情であってもジゼルに感情がない訳ではないことを、フィリアは知っている。

「これで大丈夫かと思います。あと、よろしければこちらを」

 ジゼルはフィリアの支度を整えると、袖口から何かを取り出した。

「……これは?」

「私が作りました。姫様のお守りになればと思いまして」

 フィリアは取り敢えずそれを受け取った。

「……いい香りね」

「はい。中に香を染みこませた綿を詰めてあります。気分を和らげる香です」

「そう……ありがとう」

「はい」

 掌にちょこんと乗ったそれは、小さな小さな首のない王子様だった。

「凄く細かく作ったのね。殿下の爪までちゃんと見えるわ」

「本人に近づけるべく努力いたしました」

「…………お首もないのね」

「現状を模倣しましたので」

「首から伸びているこの紐はなんなのかしら?」

「これを手首に巻きつけると、いつでも持ち歩いていただけます」

「…………」

 フィリアは、自身の手首にしっかりと固定された人形を揺らした。

 ふわりと、とても良い香りが漂ってくる。主に首から。

「ジゼルはとても器用ね」

「ありがとうございます。ちなみに等身大人形が間もなく完成いたしますので、そちらは寝室の枕元に置いておきます。寝つきを良くする香を入れていますので、姫様もよくお眠りになられると思います」

「……そ、そう」

 恐らく、そっちも首が無いのだろう。怖がりのフィリアをわかっていてやっているのか。

 なんとも言えない脱力感に、フィリアにかかっていた重力は綺麗に消えていた。

「姫様。私は、姫様が望まない限り、無理に王子殿下に近づこうとする必要はないと思っております。しかし、もし現状を打破したいと考えるならば、少しだけ交流を持とうとするのも手です。城での噂以外で、姫様は殿下のことを何もご存知ありません。知らないからこそ逆に恐ろしい想像をしてしまうこともあります。一度相手のことを知れば、少しは恐怖を感じなくなるかもしれません」

 もっともなジゼルの言葉は、フィリアの中に簡単に入ってきた。

 手の中の人形を揺らしてみる。

 優しい香りが漂い、ゆらゆら揺れる人形自体に恐怖は感じない。

 王子と会えば、彼のことも怖くはなくなるのだろうか?

「そうかもしれないわね」

 フィリアの中に少しだけ明るい気持ちが広がってきた。

「私、殿下に会ってみるわ」

 少しの期待と希望を抱いて、フィリアは宣言した。




 結果から言うと駄目だった。

 人間、そう簡単にはいかないというのがお決まりだろう。

 フィリアは自室で意気消沈し、長椅子に沈んでいた。

「姫様。お茶が入りましたよ」

 ジゼルが淹れたお茶を飲む。花の香りが漂い甘さが口に広がったが、それらは今のフィリアの心を癒してはくれなかった。

「あまり思いつめないほうがいいですよ」

「でも、絶対傷つけたわ」

 フィリアは暗い面持ちで呟いた。

 昨日、思い立ったが吉日とフィリアとジゼルはすぐに王子へ面会を申し出た。彼の側近である青年、ティーダに伝えるととても驚いた表情をし、何度も間違いはないかと確認までされた。

 フィリアは結婚式に一度王子と会っただけで、それ以外では視界にも入れたことがなかったのだ。そんな彼女が突然会いたいと言い出せば驚くのも通りであろう。

 しかし、彼の表情はフィリアが王子に会いたいと言ったことを喜んでいるようで、フィリアも意気込んだのを覚えている。

 首無し王子となってしまってからの王子は皆に敬遠され、肉親である王ですらあまり会おうとしないらしい。故に王子はとても孤独になってしまったのだ。

 これらの事情をティーダから聞いたフィリアは、首無しといえど怖くはないのではないかと思った。

 この時のフィリアの心の中には、孤独に傷つく優しい青年の像が出来上がっていたのだ。

 だから、と言うのは言い訳にはならないだろう。

 フィリアは通された王子の部屋で彼と対面したとき

『きゃああああああっ』

 心の底から恐怖した悲鳴を上げてしまったのだ。

 首が無いということは想定して心構えをしていたが、その首の断面については全く考えていなかったのだ。

 首が無いということはどこかで切れているということで、そこには確かに断面が存在するのだ。

 本来首が存在するはずのそこには中央にまとめられた血管や骨が見え、その周りを埋めるように赤い血肉が詰まっていた。成人男性として引き締まった体は完璧に整えられ、美しい衣類をまとっているため上半身の異常さが際立った。それにより一層の気持ちの悪さフィリアにを与えたのだ。

『あ、あ、あ……』

 貧乏とはいえ一国の王女である。大事に育てられた、しかも常人よりも怖がりな少女にとってそれは受け止めきれないほどの恐怖と衝撃であり、フィリアに耐えられるものではなかった。


 ばたんっ。


 そしてフィリアは王子本人と一言も言葉を交わさないまま、気を失ったのだった。

「凄く失礼だったわ」

 フィリアの口から呻くような声が漏れた。

 目を覚ましたとき傍にはジゼルしかおらず、フィリアは王子との対面が失敗したことを理解した。

 そして、自分がいかに楽天的であったかを思い知ったのだ。

「姫様をたきつけて無理やり会わせたのは私です。非は私にあります」

 ジゼルはそう言って慰めてくれたが、フィリアはそうは思わなかった。

 確かにジゼルの言葉に動かされたが、自分の考えが甘かったのは事実だ。

 昨夜は殿下の姿を夢に見て恐怖した。魘されたのだ。

 自分が怖がりだとしっかり自覚していたはずなのに、首無し王子でも受け入れられると安易に考えてしまったのだ。

『無理をする必要はない。君の楽な生活をしていい。と殿下からの伝言です』

 フィリアの意識が回復して程なく、ティーダだけが現れて困ったような表情で告げた。

 王子からどんなお叱りを受けても可笑しくはなかったのだが、誰もフィリアを責めなかった。むしろ、フィリアにはそちらの方が堪えた。

「殿下を知りたいと思ったのは本当なのですから。姫様がそんなにご自身を責める必要はないのですよ。人間だれしも苦手なものや受け入れられないものはあります」

 ジゼルはそれが価値観の違いと言うものだという。

 フィリアは俯いていた顔を上げ、ジゼルを見上げた。

「ジゼルにも苦手なものがあるの?」

「ええ。ありますよ」

 あっさりと肯定されたフィリアは思わず食いついた。

「そ、それは何?」

「秘密です」

「…………」

「そう簡単に、自分の弱みを教えるわけにはまいりませんでしょう?」

「ずるいわ」

 簡単に教えてくれるとは思っていないが、しれっとした顔で話すジゼルにフィリアは膨れた。

 フィリアにとって、お目付け役であり保護者のようでもあるジゼルだが、たまには彼女に頼られるような状態になってみたいものである。

 結局一昨日までと同じく、特にすることもなく一日を過ごしていると戸を叩く音が聞こえた。

 ジゼルが対応すると、女官から報告があった。

「他国の商人がいらっしゃっています。姫様に是非ご覧にいれたいものがあると」

 こういうことは良くあることだ。

 他国の商人が遠くの国から輸入した珍しい商品を、貴族や王族に売りに来る。

 一応出向いたフィリアは、見たこともない品々に興味を引かれた。

「素敵ね。宝石ではないのに光っているようだわ」

 クルトネ王国は、岩山とラディエント王国に挟まれた位置にあるため、国土に海が存在しない。

 そのため、特に貝殻で出来た首飾りはフィリアの目を引いた。大きめの桜色の貝殻を中央にし、左右には小さい貝を連ねたものだ。

「いかかでしょうか? こちらは南の国から仕入れた逸品ものでございます」

 笑顔を浮かべえた商人が視線を定めて売りに来るが、フィリアは悩み首を振った。

「……そうね。また今度にするわ。あれは何?」

 軽く流して躱そうとしたフィリアだったが、そんな彼女の視線を首飾り以上に引いたものがあった。

 フィリアの視線の先には一冊の本。緑色の表紙でいくつか小さな石で細かな細工がしてあった。

 一見なんの変哲もない本がフィリアの目を惹きつけたのは、本についた小さな金具と穴だった。

「あれは鍵穴かしら? なんで本に鍵がついているの?」

 小さな穴は鍵穴で、鍵を閉めると本が開けないようになるものだ。

 フィリアにはその用途がわからなかった。

「これは日記帳です。中は白紙となっているのでその日一日あったことや、その感想を書き込んで後日読み返すことが出来ます。今、東の国の貴族の間で流行っているんです。こちらは鍵も付いていますので、誤って他人に読まれてしまう心配がありません」

 商人は、話しながら鍵を取り出した。

「まあ、綺麗ね」

 鍵は銀で出来ていて日記帳の表紙同様細かな細工がなされており、それだけで首飾りとしてフィリアを飾ることのできるものだった。

「いかかでしょうか?」

 商人が手もみしながら伺うなか、ふとフィリアの頭に一つの考えが浮かんできた。

 この方法なら、どうにかなるかもしれない。

 フィリアは一回の失敗で諦めたくはなかった。

「この鍵、もう一つ用意できるかしら?」

「できますが……それでは鍵の意味はなくなってしまいますよ」

 不思議そうにする商人に、フィリアは二本の鍵を注文した。当然、日記帳本体も。

 二本目の鍵は後日届けることになり、フィリアは部屋に戻った。

「殿下にお手紙を書くわ。ジゼル、届けてくれる?」

「かしこまりました」

 ジゼルには、フィリアが何をしようとしているのかわかった。

「上手くいくかしら?」

「それは、姫様次第かと思いますよ」

 ジゼルの言葉に頷いたフィリアは、本の表紙にしっかりとした字でタイトルを書いた。

 『交換日記帳』と




 彼は、たった今届けられたものをどうするべきか悩んでいた。

 ラディエント王国第一王子の側近となってもう大分たつティーダだが、ここ数年で彼の心労は激増していた。

 理由は言わずもなが、その第一王子が王位争いに敗北し、致命的な欠陥を抱えてしまったためである。

 それまでの王子は、透きとおるような真珠の肌、宝石のような瞳、絹のような亜麻色の髪を持つ美少年を体現したような存在であった。王子自身はそんな容姿を利用しようとも考えない外見に疎い人間だったが、周囲の人間はそうではない。美しい容姿を妬んだのか、王子を失脚させるための攻撃はそのほとんどが顔などの外見を狙ったものばかりだった。

 そして、その集大成と言わんばかりに凶悪な攻撃を王子は喰らってしまい、彼は今までの人生をひっくり返した生活をおくることとなってしまったのだ。

 王子は首から上を失った。

 それは王子の重要な財産を失うものと等しいのだと、彼は知っていた。

 王子に群がる人間はそのほとんどが美しい外見に引き寄せられた者たちだ。そして、彼はそれを悪いこととは思っていなかった。

 美しさは武器になる。王子の微笑みは相手の気を緩め、人知れず言葉を漏らす。それは政治的思惑を持って集まった者たちを捌くために大変有効だった。

 しかし、今ではそれも難しい。

 なくすはずのない財産を、王子は失ってしまったのだ。

 しばし逡巡したティーダだったが、やがて王子のもとに足を向けた。

 足音に顔を上げた王子の視線が、何事だと問うてくる。

「来ていたのはフィリア姫の侍女でした」

 王子の肩が動揺に揺れた。

 無理もない。つい先日、王子は姫に会った瞬間悲鳴とともに拒絶を受けたのだから。

 もう関わることはないと思ったのはティーダも同じだった。

「手紙と……何か小包を王子にとのことです。いかがなさいますか?」

 ティーダの言葉に、王子はゆっくりと手を伸ばした。

 まず手紙を開くと、丁寧な字である提案が書かれていた。

『先日は大変失礼をいたしました。交換日記なるものをいたしませんか? とある国で、一日あった出来事を本に記しておく習慣があるそうです。私たちはまだお互いのことを良く知りません。これを機に、お互いその日あったこと、思ったことを書いて交換してみませんか? 大変図々しい提案ではありますが、私は、殿下との交流をあれで終わりにしたくはありません。いかがでしょうか? どうかご検討ください』

 手紙を読み終わった王子が包装を剥がすと、中から出てきたのは一冊の本と小さな銀の鍵。

 そして、初めのページには手紙と同じ文字が書かれていた。

『殿下のことは、なんとお呼びしたらよろしいでしょうか?』

 女性らしい、大人しい字だった。

「いかがなさいますか? お断りするのでしたら、返してまいります」

 ティーダは祈る気持ちで王子を見ていた。

 王子がフィリアに会ったとき、彼は王子がフィリアを試していることがすぐに分かった。

 王子は、普段人と面会するときに被るベールを、そのだけは外していたからだ。

 そのため、首の断面の鮮血のような赤身が露わになり、わずかに脈を打っていることも確認できた。

 王女様が目にしたらどうなるかなど、考えるまでもなかったのだ。

 案の定、姫は気を失いティーダが隣の部屋へ運ぶはめになった。その際、侍女である女性から殺気とも取れる怒気を感じ、ティーダは肝を冷やした。

 王子が筆をとったのを見て、ティーダは無言で新たな包装の用意をした。

 姫は王子の姿を受け入れられなかった。しかし、ただ離れようともしなかった。これは、王子が呪いを受けてから初めてのことだ。

 姫に会う前から、王子はすでに心に傷を負っていた。

 そして、これ以上負わないための警戒として、あのような行動をとったのである。

 中途半端な優しさや同情は、ときに悪意よりも達の悪い棘となる。

 あれを見ても離れていかない人間を、王子は探していた。

『これを届けろ』

 一枚の紙切れをともに差し出された日記帳をティーダはしっかりと受け取った。

「かしこまりました」

 王子の意に反して、また一歩近づいてきた王女。

 もしかしたら。

 湧き上がる予感をティーダはそっと胸にしまった。




「姫様、届きました」

「ありがとう。こっちに持ってきて」

 数日後、自室で本を読んでいたフィリアは、本に栞を挟んで机に置いた。

 日記帳の効果は、なかなかのものだった。

 紙に書くということも、フィリアと王子には相性が良かったのだろう。

 王子は言葉を話せなかったため、言葉を交わすにはどうしたってものに書く必要があった。対して、フィリアは王子の外見に恐怖を抱いていたため、顔を合わせずに言葉を交わせるということは大変役立った。

 数日たつ頃には、フィリアは鍵である首飾りを常に身に付けるようになり、だいぶ王子と意見を交わせるようになった。

 唯一不満があるとすると、それは王子からの返答が短いということだった。

『今日はいい天気だが、職務が多くて大変だ』

『本を借りた。面白い』

『ティーダがいいお茶をもらってきた』

『いい菓子もあった』

 ほとんどが一文で済む長さだった。

「クロド様は、今日もお忙しいのね」

 日記を読みながらフィリアはため息をついた。本日届けられた日記にも、書かれているのはたった四文字。

『おはよう』

 フィリアはがっくりと肩を落とした。

「……挨拶だけなんて」

 日記の割合は八割がフィリア、残りの二割が王子となっていた。

「それでも、たいした進歩だと思いますよ」

「そうらしいわね」

 ティーダから聞いたことだが、現在城内で一番王子と言葉を交わしているのはティーダを除けばフィリアらしい。

 呼び名も、変わった。最初の王子からの返答でクロドと呼ぶように書かれていたため、フィリアは王子のことをクロド様と呼んでいる。

 たったそれだけで彼に近づけた気分になるのだから不思議なものだ。

「でも、もうちょっとどうにかならないのかしら? これじゃ、交流と言っても私が一方的に知らせているみたいだわ」

 フィリアはその日あった出来事をそのまま赤裸々に綴っていたため、クロドに行動がつつぬけである。対して、クロドの仕事は公務が多いため、他国から来たばかりのフィリアには教えられないことのほうが多い。

「もしかしたら、書けることがないのかもしれませんね。一日中お部屋の中にいるとか」

「それはないわね」

 フィリアはジゼルの言葉を否定した。

「あの方、たまに部屋を抜け出しているみたい。前に図書館の窓から見えたわ」

 フィリアはもう、クロドをただ可哀相な王子とは見ていなかった。

 見られなくなったというのが正しいが、フィリアが探してみるとクロドは城のあちこちにいた。城の抜け道を熟知しているらしく、ベールを被っていたがティーダが目を離した隙に部屋から出ては庭を散歩したり、日向ぼっこをしたりしているようだった。

 彼は思ったより自分の時間で生きている人間だったのだ。

「あれで衛兵などに見つかったら大騒ぎになるでしょうね」

 生まれ育った城だけあってそこらへんは上手くやっているようだが、呪いをかけられた身で無防備に一人で歩いてる王子など、他にはいまい。

 本人と関わったことで、フィリアの中のクロドベルトス殿下の印象は大きく変化した。

 そして、同時に興味も湧いていた。

 周囲は首無し王子である彼を憐れみ敬遠しているが、彼自身はどう思っているのだろうか?

 少なくとも文面上では、彼が現状にただ絶望してるようには思えなかった。

 ただ、まだ壁を感じる。

「どうしたら殿下のことをもっと知ることが出来るかしら?」

「そうですねぇ。ティーダ様にお聞きしてはいかがです?」

 ジゼルの提案に、フィリアはため息をついた。

「もう聞いたわ。殿下に日記をもっと書くよう話してくれると言っていたけど、この様子ではあまり効果はなかったみたいね」

 フィリアは、今までのやり取りを振り返った。

『クロド、と呼んでくれて構いません』

 そんな一文から始まり、フィリアの問いにクロドが答えたり、フィリアが答えたり。

「そういえば……」

 フィリアはある日付で手を止めた。

『殿下の好きな食べ物はなんですか?』

 この問いをした時だけは答えは書かれていなかった。作れるものであればクロドに作ってあげようと考えていたのだが、彼はフィリアに適当な質問を書いただけでその日を終わらせてしまった。

「この質問は失敗だったわね」

 あとから気付いたのだが、首から上のないクロドが食事はどうしているのか失念していたのだ。

「お食事が出来るわけがないのに、私ったら本当に無神経だわ」

 他にも、無意識に殿下を傷つけているのではなかと不安になる。

 顔を見ずに言葉を交わしていると、時々王子の状態を忘れてしまうのだ。

 フィリアは斜線を引いてその一文を消した。

「姫様のご趣味を使ってみてはいかかでしょう? 殿下の気に入りそうな本をお薦めしてみては?」

「……そうね」

 本に関してならフィリアの知識の範囲は広く、話の種もそうそう尽きない。同じ本を読めば、お互いに長く話す話題として最適かもしれない。

「どんな本をお読みになるのかも聞いてみるわ。私の持っている本の中でお好きなものがあるといいけど」

「なかったら、姫様が殿下のお好きな本を読めばいいのですよ」

「それもそうね。ふふっ。なんだか楽しみになってきたわ。すぐ返事を書くから殿下に届けてくれる?」

 フィリアは嬉々として筆をとった。

 だんだんと日記帳が手紙として機能しており一日に何度も行き来するようになっていたが、それを問題とは思わなかった。むしろ今までのやり取りを振り返ることが出来、フィリアは日に一度は日記を読み返していた。

「そういえば、最近寝苦しいの。なにかいいものはないかしら?」

 フィリアはジゼルに問いかけた。

 フィリアが暗に示したのは、以前ジゼルが作った人形のことだった。

 フィリアが王子と対面する直前に完成間近と言っていたが、それ以来人形が枕元に現れることはなかった。

 ジゼルはフィリアに気をつかったのだ。

 王子の姿を見て気を失ったフィリアには、王子の姿が受け入れられないと思ったのだろう。

「出来れば抱き枕になるものがいいのだけど、なかなか私の好みに合うものがなくて。クロド様に迷惑をかけないためにも、手ごろなもので済むと嬉しいのだけど」

 少々態とらしく困った声を出すフィリアは、ちらりとジゼルを見た。

「姫様、最近読む本の種類に偏りがあるようですね」

 ジゼルは突然、全く関係のないことを口にした。

「そ、そうかしら?」

「そうです。ここのところ、今までお読みにならなかった種類の本に偏っています」

 ジゼルに無表情で言い迫られ、フィリアは冷や汗が出た。

「幽霊屋敷の惨殺」

 ぴくりっ。

「吸血鬼の晩餐会」

 ぴくりっ。

「恐怖大全集」

 ジゼルが上げる題名に、フィリアはもの凄く動揺した。

 それらは、ここ数日でフィリアが読破した本たちだ。

 ジゼルには秘密裏に集めて読んでいたのだが、彼女に隠し事は出来ないものだ。とっくに知られていたようだ。

 それでもフィリアは、往生際悪く抵抗してみた。

「なんのことかしら?」

 だが、それは本当にただの悪あがきだった。

「本を寝台のしたに隠すのは、本の保存法としては不適切と思いますよ」

 隠し場所まで言い当てられては諦めるよりほかない。

 フィリアは降参した。

「無理に慣れないことをしては疲れてしまいます。寝つきが悪いのも、そのせいなのでしょう?」

「これでもだいぶ慣れてきたのよ」

 確かに、読み始めたころは恐怖のあまり途中で投げ出したりしたものだが、根気よく何度も繰り返すうちになんとか最後まで読み切ることが出来るようになった。

 その副作用として、毎夜毎夜悪夢と呼べるものに魘されるようになったのだが、それにこそ耐えうるようになれば、フィリアの目的は達成されるのだ。

「殿下のためですか?」

「私自身のためよ」

 フィリアはジゼルの目を真っ直ぐ見て言った。

「私が、もっと彼に近づきたいの。せめてこの怖がりが治れば、クロド様の近くに居られるかもしれないでしょう?」

 フィリアは現状で満足してはいなかった。

 人間は一つの欲求が満たされると、次の欲求が生まれる。

 穏やかに王子と文通を続けることも楽しかったが、フィリアにはその先も求める感情が生まれていた。

 少しの間見つめ合っていた二人は、やがてジゼルが折れる形で終結した。

「ご無理はなさらないで下さい。寝不足でお肌場荒れると、別の意味で殿下に愛想を尽かされてしまうかもしれませんよ」

「失礼ねっ!!」

 その日から、フィリアの寝所にはいい香りのする一体の等身大人形が置かれるようになった。

 もちろんその人形には首がなかったが、フィリアが魘されることはなかった。


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