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プロローグ

以前短編で投稿したものを、連載で投稿しなおしました。

短編にあるものと内容は同じです。

プロローグ

「それでは、誓いの口づけを」

 厳かな雰囲気の中、牧師様の声が教会に響き渡り、繊細な絹のベールを被った少女は息を呑んだ。

 純白のドレスに身を包み、十字架の前で皆の視線を一身に受けているのはクルトネ王国第一皇女フィリア・クルトネ。

 今日は彼女が隣国へと嫁ぐ大切な日であった。

 式は滞りなく進み、後は両者の口づけのみとなったのだが、そこで予想外の問題がおこっていた。

 いや、わかっていながら誰も考えようとしなかったということがただしいだろう。

 その一人である少女は、当事者でありながらどこか他人事のように現状をみていた。 

(……どこにすればいいのかしら?)

 フィリアは視界の隅で慌てている侍女が見た。しかし、離れた場所に立っている彼女に何かできるわけでもなく、ただ不自然な沈黙が教会内に広がった。

 横に立つ牧師様から無言の催促がされ取りあえず向き合いはしたものの、結局は同じ。彼女には口づけをする場所を確定できなかった。

「ごほんっ」

 早くしろと言わんばかりのわざとらしい咳まで聞こえてきたが、わからないものはわからない。

 少しの間悩んだフィリアだったが、実際のところ彼女に非はないのだ。

 フィリアは自身から動くことを放棄した。

 すると、おずおずといった手つきで伸びてきた手が、フィリアの被っていたべールをそっとあげた。そのまま優しく頬を挟まれ引き寄せられる。

 顔を微かに傾けられる感覚に、フィリアは一応瞳を閉じた。

 少しの間そのままの態勢を維持していたフィリアだが、頬に置かれていた手が離れるとともに瞳を開けた。

「ここに、新たな夫婦の誕生を宣言します」

 牧師様の言葉に、周囲から拍手が響く。

 唇の感覚は、やはりなかった。

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