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休憩?

 彼らはエルドへと戻っていた。エルドの宿へと彼らは休んでいた。破滅の騒動がありながらも、ルビィの力によって容姿を変えられた彼らの姿は誰にも見つかることはなく彼らは宿に泊まっていた。ルビィにより髪の色から目の色まで人と違和感ないようにしている。もしも元の姿だったら破滅でなくとも亜人などと勘違いされていたかもしれない。それほどまでに、元の彼女の姿は人と似て違う雰囲気を持つ。

 魔女が居るため2つベッドがある部屋を取った。部屋に入るなりすぐにベッドに飛び込み休むローク。魔女も真似して彼のベッドに入ろうとしていたがロークは焦りながら「お前はそっちのベッドで!」と、指さしながら誘導して彼女は隣のベッドで横になった。

 疲れていたのかすぐに寝息を立てるローク。隣のベッドでは目を開けたままの魔女が彼をじっと見ていた。眠るということが出来ないのか、それとも彼のことが気になっているのか、どちらかは分からないがずっと彼を見ているだけ。

 彼女の視線に答えたかのように急に上体を起こしたローク。ベッドを降り、彼女の傍に立った。

 

「イエロア、教えてもらうぜ。ハネはどこだ」


 彼女の両手を掴み、脅すように問いかける。どうやらカウラに交代しているようだ。だが、彼女は全く驚く様子はない。


「私はイエロアではない」

「関係ない、無理にでも出てきてもらうぜ」

「吸い取られている? あっ?!」


 突然の発光。爆発。

 

 部屋は煙に覆われた。被害はこの部屋だけでは収まらず壁が壊れ、他の部屋も大きく散らかっている。隣室の人は目を覚まして驚いてはいるが何をしていいかわからないのか立ち往生していた。

 カウラは魔女にいたベッドから少し離れた所で倒れている。彼の身体はグレイの鎧に覆われていた。

 

「カウラ様、一体何を」

「目覚めたぜ、イエロアだ」

 

 ベッドには目に手を当てて泣きじゃくるっている魔女がいる。

 

「来ないでぇ!」 

 

 甲高い子供の叫び声と共に魔女から無数の伸びる何かが飛び交い始める。それは守るように彼女の周りを動いていた。

 

「カウラ様、さすがにまだ彼女と戦うのは危険なのでは」

「何のためのお目付け役か分かっているのか、グレイ」

「それは……ですが確実に勝てるかどうか」

「溜め込んだ力を送るぞ、いいからやれ」


 鎧姿のカウラが彼女に突撃、鎧から無数の刃が飛び出し守る腕を切り裂いていく。同時に腕が襲いかかるが止まること無く腕の密林を突き抜けようとする。

 だが、更にその奥で堅い膜のようなものが、魔女の姿は見えないが泣き声はそこから聞こえた。グレイの刃で斬りつけるが表面に少し傷が付く程度で破れる様子はない。

 彼は鎧の右腕が先細り、針のように変えて突き立てていく。一度では敗れる気配はない、何度もそれをぶつけていき膜を少しずつ破っていく。

 膜に穴が開いた。同時に腕が消え、膜も消える。そこには下に空いた穴があるだけ。まだ、魔女の泣き声は聞こえる。


「中にいません下に落ちています!」

「チッ、追いかけ――」


 急な風切り音、床から何かが飛び出した。

 現れたのは巨大な手のひら、その上にカウラは乗っており、天井を突き抜けてぐんぐん上へと押し上げられていく。


「何だ?! 攻撃か!」

「分かりません! 何かされたようですが」


 まだ理解が追いついていないのか立っているだけ。彼の乗る手の形は握リ拳へと変わる。しかし、その指は切り裂かれ鎧は姿を現す。

 

「滅茶苦茶やりがって。こんなことしてどうする気だ」

「カウラ様、無茶です。私とイエロア様では力の量が。このまま持久戦になれば私の力が無くなって――」

「そうならないために先手を打ったんだよ、なっ、消えた?」

「うるさいよー、うわっ、何でグレイの鎧が!? うえっ?! なにこの音、風?! 何この変な感じ」


 腕の存在が消えて落ちていく。会話の合間に入ってきたルビィ、カウラの胸ポケットに入ったままのために鎧の中で声を出している。速度を上げて落ちていき、宿から少し離れた別の建物に落ちた。ダメージはなにもないのかすぐに立ち上がる。

 

「な、なんだあんたは!」

「見なかったことにしろ、じゃないと殺す」

「そんなことが出来るか!」

 

 部屋の男性が怒鳴りつけていると刃が頭の前に飛んだ。辺りはしなかったがへたり込み、怯えたままで何も喋らなくなった。

 

「それでいい」


 カウラは鎧を外して胸ポケットにグレイを入れて建物に出る。宿はすぐ近くにある。

 

「何なのよー、一体。寝てたはずなのに何で外出てるの」


 鎧の隙間から顔を出したルビィが嫌そうな顔をしながら苦い声。

 

「イエロア様が動き出しました」

「イエロア様が?! 何で! あっ、もしかしてクリアスがなにかやったの? いないし」

「クリアスがいない? ホントですか!」

「うん、起きた時からいないよ」


 状況を理解していないルビィは抜けた言葉をもらし、カウラが「グレイ」と、怒りを抑えた声で話しかけた。


「分かっています。もうやってはいますが急いでください」


 ○

 

 宿の1階、そこに泣きじゃくる魔女。その女性の近くに子供姿のクリアスが居る。魔女の周りには絶えずうねる腕の大群、彼を襲うが離れて刺激しないようにしながら彼女に向けて光る文字を、彼女をどこかへ飛ばそうとしているようだ。

 しかし、彼は急に倒れた。 


「グレイめ。もう気づきましたか


 宿にいた人達は化物と驚き逃げる者も居れば、気になるのかやじうまのように彼らを見ている人もいる。騒ぎを駆けつけて徐々に人が宿の周りを覆っていたが、人混みをかき分けてカウラが現れた。

 

「クリアス、お前一体何を考えてやがった」

「さ、さあ」


 グレイの攻撃は止まらないのか倒れこんだまま悪態をつくクリアス。そんな彼を咎めるように蹴り飛ばし「後で覚えておけ」と、見下しながら魔女の方へと向かっていった。

 

「一気に仕留めるぞ」

「はい」 


 一気に巻くのところへ、勢いのままに膜に刃を突き立てて日々を。即座に次の攻撃を咥え膜が破けた。その勢いのまま魔女に刃が襲いかかる。

 

「来るなー!」


 魔女の叫び声と同時に巨獣が現れ彼に襲いかかる。魔女を襲いかかろうとしていた剣は獣の足に埋まっており、獣は体ごと向かったせいで彼は吹き飛ばされ、のしかかられた。

 

「邪魔だ! クソッ」

「来るなっ、来るなッ、来るなぁ!」

 

 魔女の叫び声と共に彼は踏み潰されていく。発狂している魔女は怯えた表情で周りに集まる野次馬を見ると大量の獣を飛ばして野次馬を追い払っていく。更に巨大な獣を召喚していき宿を獣で囲んでいく。宿にいた人達は逃げ、入口近くでは人はいるが獣を怖れて近づけていない。外では兵士を呼ばれたようで剣を持って追い払おうとするが逆に襲いかかってくるのを怖れてか近づけていない。

 カウラが乗っていた獣が前のめりに倒れた。その獣は前足が消え失せているようで、そのせいで倒れている。さらにその体から刃が飛び出て獣を切り裂いた。

 

「イエロアぁ!」

「ダメです! これでは勝ち目が」

 

 さらに増えた巨大な獣が襲いかかっていく。攻撃をしようにも身体ごと襲いかかる獣達には攻撃をしても殺しきれず、そのまま押し戻されてしまう。

  

「うっ、うぅ何でいじめようとしてくるの。嫌い、嫌い嫌い。大っ嫌い!」


 更に獣を呼び出し囲んでいく。数十匹の獣、押しのけようにもさらに、またさらにカウラへと襲いかかる。鎧を着ているおかげでかみついてもダメージはないが、動くこともままならない。

 

「カウラ様、これはダメです。殺しきれません」

「やばい、やばいよー! 潰されちゃうー!」

「うるせえ、勝つ方法を考えろ」

(お、おい。なんだよこれ)

「チッ、目を覚まし――」


 ロークが目を覚まし、置いてけぼりの声を漏らす。

 

「うわぁっ?! なんだこの黒いの!」

(あー! クソッ、何で目を覚ましやがったんだ。無意識に身体を戻しやがって、良いか。アイツを倒せ、殺す覚悟で行かないとお前が死ぬぞ)

「はい?! 一体なんなんだ! ぶつかってくる黒いのは?!」

「それは獣の足です。いいですか、生き残りたければ逃げてください」

(グレイ! 何を言っている)

「カウラ様、今の状態でイエロア様を倒そうなんて無理な話です。カウラ様ならイエロア様の力を吸い取れば無力化出来たかもしれませんが、数押しで攻めてくる彼女を私一人では戦うことは出来ませんし、逃げることしか今は」

(チッ、だが逃げきれるとは思えんがな)


 悪態をついてしょうがなく認めると獣の足を切り裂いていった。

 

「破滅だな! 行けー! 獣を追い払えー! おそらく逃げた魔女も居るぞー!」

 

 いきなりの叫び声。同時に宿の入口にあった獣達が消え去っていく。兵士たちの持っているのは黒い剣。

 

「来ないで! いじめないでー!」

 

 他の獣達もロークを無視して兵士たちの方へ走って行く。小さい獣はあっさりと追い払えているが、大きい獣は倒せるとは言っても恐怖が勝っているのか時間がかかっている。

 

「助かったのか?」

「このままではイエロア様が危ないですね。私達はやり過ごすことは出来そうですが」

「あの剣ってホント怖いよねぇ、消えちゃうとか」


 じわじわと兵士たちが攻める様子を見ているローク、そんな彼に(ちょうどいい、合間に捕まえろ)と、嬉しげに語りかけた。


「捕まえろって、言われてもなぁ」


 あきらめ気味な声を漏らしつつ倒れたままやり過ごしているローク。獣はみるみるうちに減っていき、少しずつだが兵士たちが彼女の方へと近づいている。

 

「そういやクリアスが倒れてるけど、アレは? もしかしてまたグレイにやられてるのか」


 腹を抱えたまま倒れているクリアス。獣たちの攻撃対象にはなっていなかったようで、部屋の真ん中の方で倒れている。


「ええ、そういえば放置していましたね。ですが今の彼の姿なら捕まらないでしょう。ローク様、なぜ彼に近づいているのですか」

「ちょっとね」

 

 歩伏前進で近づいていく。そして、彼のそばへとついた。

 

「おいっ、クリアス。生きてるか」

「痛いままです。グレイ、いい加減やめろ」

(それは駄目だ、お前にはそんなことは許されんぞ)

「なにかやったのか? まあそんなことはいいや。あの子を助けたいんだが、前に飛ばした技出来ないか?」

「無理です。アレは時間がかかりますし、彼女もおとなしくしてないでしょう」

「じゃあ、この場を逃れる方法は」

「……それならグレイの攻撃を外してくだされば」

「グレ――」


 ロークの言葉を遮るように(ダメだ、グレイ)と、言葉を挟む。それでも珍しくロークはカウラに反論を始めた。


「ハネを知っているからこの子が居るんだろ? 俺1人じゃ無理だろ、だから――」

「一応私も居るんだけどねー」

「なら、どうにかできない?」

「無理無理、こんな状況で私に何かできると思う?」


 合意するかのようにだれも何も言わない。少しの沈黙の後に「誰か何か言ってよ?!」と、声を反論するが誰も反応しなかった。


「カウラ、俺だけじゃ無理なんだ」


 ロークの言葉に舌打ちを漏らし(クリアス、逃げたら殺すぞ、良いな)と、釘を刺す。


「ええ、逃げませんよ」

「じゃあ頼む」


 クリアスは解放されたのか、表情が安らかになる。ロークは宿の入り口をみた。兵士たちは獣の恐怖が無くなったせいか次々と倒されていくのが見える。それでも獣の数には圧倒されているせいで宿の中に入り込むには至っていない。

 

「来ないでよぉ! なんで逃げないの。何で倒されるの、いじめないでよ! もうしないから、もう悪いことしないからいじめないでよ!」

 

 獣を作り出しながら逃げるイエロア。ジリジリと近づいてくる兵士たち。逃げる彼女の前にクリアスとローク。


「じゃあ行きますよ」 


 クリアスは彼らに向けて光る何かを飛ばした。夜中に眩い光、予想だにしなかった兵士たちは目がくらみ動けないでいる。

 その光は数秒光り続け、消えた。

 後には誰も居ない。兵士たちは無意味に叫び、探し続けているが彼らがどこへいったのかは判断できなかった。。

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