洞窟の外で
ガルム洞窟の入口。そこに逃げてきた作業員達が集まっている。これからどうするのかを考えているのか、洞窟の奥を見ながら話し合っている。
その洞窟から少し離れた所、お留守番の魔女たちは向こうから見えないようにしゃがみ隠れていた。
「あそこに居たら、アイツが出れないのではないか?」
魔女は唐突に問いかけた。その言葉に対してグレイが「それは、そうかもしれませんが」と、やや濁した言い方。下手に言うと彼女が言ってしまうかもしれないと恐れているからだろう。
「おやおや、もしかして気になるのですか?」
嬉しそうに問いかけたのはクリアス。明らかに何かを企むその声にグレイが「クリアス!」と、叱咤する。それでもクリアスはしゃべり続けた。
「気になるのでしょう。彼のことが。イエロア様の容器さん」
「……助けてもらったから」
「ならば助ければいいじゃないですか」
「クリアス! 何を考えて――」
魔女は「わかった」と、呟き答えると立ち上がった。彼女の身体の周りには黒い何かがうねり始め、何かが起きようとしている。
「ダメです! 彼らを殺したりしたら余計にローク様が」
「分かった、殺さない」
「そういうことではなく!」
黒いうねりは獣へと姿を変えていく。4足を地に足を着けた獣。姿は急激に巨大化、彼女たちはその獣の頭の上に乗っていた。
「すごっ、これ私と同じのだよね。しかもあっさり作っちゃうなんて」
「容器でもイエロア様とは変わりない力をお持ちですか。さすがです」
「クリアス! あなたは何考えているのですか! 彼女はどういう考えの持ち主か分からないのですよ!」
それぞれ感想を述べる間にも「いけ」と、魔女の命令を皮切りに獣は走りだす。重さを感じさせないほど軽やかに、静かに地面を蹴る獣、だがその大きさにその存在にはすぐに気づいてゆく。
「な、なんだあいつは!」
「化物、破滅か?!」
怯えた声、誰もがその獣を見て立ちすくんでいる。そんな彼らの目の前に立つ魔女の生み出した獣。
獣は吠えた。
周りが振動するほど轟音。声だけで転ぶ人もいるほどの衝撃。恐怖で固まり、一人残らず気を失った。
「どう? 問題ない」
自慢しているようにもいえる言葉で小さな破滅たちに言い放つ魔女。グレイはため息をもらし、ルビィもつられるように疲れたため息を。クリアスは一人拍手を送っていた。
「何が起きてるんだ」
洞窟から出てきたローク。彼は真っ先に眼の前に立つ巨獣を見た。
「殺しちゃだめだ!」
「分かってる」
声に感情は感じられないが、どことなく残念そうな言い方。獣は消え、魔女は彼の前に降り立った。すぐにグレイが「すみません、ですが彼らは殺してはいません。気を失っているだけなので」と、ロークに弁解する。
「そ、そうか。ならいいけど」
「助けたかった」
「え?」
いつもの無感情な声で喋る魔女、だがその様子は少し不満気にも見えた。そう言ってロークにピッタリひっつく。
「力を使いすぎた、しばらくこのまま」
彼にひっついてる魔女を見て「またやってるー!」と、茶化し気味にルビィが声を上げる。それに便乗して「なら私がして上げますよ?」と、嬉しそうにクリアスが彼女に問いかける。
「いやっ、それは、お断りするよー!」
人形姿の二人は追いかけっこ始め出す。その様子を呆れたように眺めるローク、そんな彼に今の状況をグレイが説明し始める。
「入口にそこの人達が集まっていまして、イエロア様が助けるためにあの巨獣を出したわけなのです。それで力を使いすぎてそのようなことに」
「ああ、そういうことなのか。えっと、この場合は……ありがとう?」
ロークの言葉にチラリと彼の顔を見るだけで何も答えはせずもたれかかったまま。そんな彼らにカウラが提案を始めた。
(少しは休んだらどうだ。あれからずっと動きっぱなしだ、そろそろ疲れてきただろう)
「お前が心配をしてくれるなんて。気持ち悪いな」
(倒れられる方が迷惑だからな。ルビィ! いつまでも遊ぶな、こいつらの姿を変えろ)
「えー、私のせいじゃないのに……」
「残念、もう終わりですか」
「もういい加減にしてよ! それじゃあ行くよー」
カウラの一言で彼女らの追いかけっこは終わり、ルビィは魔女とロークの姿を全く別の姿へと変化させた。
「もう歩けるか?」
「大丈夫」
二人は手をつないで歩き出す。子供のような姿の魔女とローク、その姿は兄妹のように見えるものだった。




