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単騎強襲

「何だ貴様は――」


 塔の入口から少し離れた所にいた警備兵が彼に近づいたが邪魔と言わんばかりに腹に向けて腕を振った。その場をうずくまり泡を吹いてうずくまる警備兵。その異変に気づいた他の警備兵が「何事だ!」と、怒鳴りながら走ってくる。


(悪夢だ)

「夢じゃないぜ」

(そういう意味でいったんじゃない)


 しゃべっている間に1人の警備兵が襲い掛かった。

 

「お前らの攻撃など、見てなくても避けれる」


 軽く避けると蹴り飛ばす。蹴られた人は玉のように弾み飛び、他の兵士たちにぶつかる。警備兵は残り2人、1人は顧みず剣で襲いかかってきたがを振る剣を掴み、無理やり剣を奪い斬りつけて殺した。その光景を見たもう一人の警備兵は逃げ、残るは門番。剣を楽しげにブンブンと振り回し近づいていく。衛兵もまた、恐怖して逃げていく。

 こうして何も残っていない門を開けていく。周りには市民も当然居て、その光景を見ていながら何もすることは出来ない。傷ついた兵士を助ける人、何をしていいか分からず騒いでいる人はいるが誰も彼を止めようと思う人は居なかった。

 門を抜けると塔がそびえ立つ。

 防衛は入口の兵士たちに任せているのか、誰も待ち構えていない。だが、外の光景は中に伝わって居るのか、次々と人が現れ始めた

 

「チッ、テメエらじゃないんだよ。燃やしてみるか」


 カウラは炎を飛ばした。その対象は現れた兵士ではなく塔に向けて放たれる。

 

(一体何を考えているんだ)

「あの剣がまた出てくるのを待ってるんだよ。ここに同じ物があるならこの炎なんて簡単に消えるはずだからな」

「その炎を止めろー!」


 剣を構え、炎を出すのを止めようと襲いかかる兵士達。その中には誰ひとりとしてあの黒意見を持っている物はおらず、炎を出しながら軽く避け、一人ずつ倒していく。

 炎が覆う塔、赤く燃える炎は街を照らす。誰もがその建物を見続け、その現況であるカウラの姿を見た。建物は燃える材質ではないのか、建物自体に燃え広がる様子は見えないが所々で何かがわれている音が響いていて確実に炎が建物を蝕んでいる。

 

(なあ、全然消えてないんだが)

「……おい、あの女はここの奴だったんだろ」

(そうだったはずだけど。このままいくとあの建物が壊れたりしないか? 危なくないか?)

「チッ」


 カウラは炎を止める。炎はどうやら建物の中にも侵入しているらしく、下の方だけだが赤い灯りが広がっている。カウラの周りには彼を倒そうと兵士たちが囲んでいた。しかし、後ろの建物が燃えているのが気にかかるのか集中しきれていない。

 

「放っておいていいのか? 早くしないと全部燃えちまうかもしれないぜ」

「……貴様らは消火活動へいけ!」


 囲んでいる兵士の中の隊長と思わしき人が命令、言われるがままに兵士たちは塔へと入っていく。残っているのはその隊長1人。

 

「てめえもいけよ。今はかまってる余裕は無いぜ」

「通すわけにはいかん。また炎を出すかもしれんからな」

「ハハッ、こんな炎ぐらい簡単に消せる物があるだろうが、早くそいつ持ってこい」


 笑いながらも不機嫌そうな声で言い放つ。しかし兵士は理解していないのか「知らんな」斬りかかった。だが、彼の身体から刃が飛び出て貫いていく。血を吐き、力なく倒れる兵士。それを見る後ろの市民の声は叫喚していた。

 開けっ放しの門、その向こうの光景に明らかにおかしな人。普通ではない彼の様子を見て人々は口々に「破滅」という単語を漏らしていく。輪唱のようにその言葉は続けられ、人々の顔つきは恐怖に変わっていく。

 

(おい、完全に破滅ってバレてるぞ。どうするんだよ!)

「この際それぐらいどうでもいい。ここが終わればもう3魔女を手がかりはないからな。知れ渡って向こうから現れるほうがマシだぜ。めんどくせえ、このまま中にはいっていくぞ。グレイ、イエロアの感じがしたら直ぐに伝えろ」

「はい、そのことなのですがココらへんから薄っすらとですが感じがします」

「おい、何故言わなかった」

「……すいません、聞かれなかったので」

「まあいい、それだけ分かっているなら多少の危険も受け入れるか。それじゃあ一応これを持って行っておくか」


 倒れた兵士から剣を奪い取る。あの黒い剣が打ち消すのはカウラたちの力だけ、他のものであれば打ち消されることもないだろう。

 

(はあ、何でこんなことに)

「お前、そういえばアレだけ殺すことに愚痴愚痴言ってたくせに目の前で殺したときは何も言わなかったな」

(ん? あぁ、なんだろう。まだ実感が無いだけかもしれない。このカウラを通して見るという感覚が現実味っていうのが感じなくて)

「クククッ、意外と何殺しても何も感じないんじゃないのか。じゃあこれからは好きに殺しても文句なしだぜ」

(それは、ちょっと)

「まあいい、今は黒い奴とイエロア探しだ」


 ロークのはっきりしない発言に呆れ声で話を切り、塔の中へと入っていった。

 中はきりきり舞いと言った状態。中にあった小物や絨毯、カーテンなど様々なものに炎は広がっていてそれらを必死に布で叩いたり、運んで来た水を掛けて消していっている。

 

「建物は燃えないくせに中は燃えるものでいっぱいか。全く意味が無いな」


 部外者であるカウラが通って行くがそれよりも目の前の消化に必死で構っていられない様子。忙しい彼らを楽しげに眺めながらカウラは上へと登っていく。

 

「グレイ、どこに居るか分かるか?」

「この場所のどこかと言う感じですが、弱っているのでしょうか。移動しても何も変わりませんね」

「弱っている、か。なら早く見つけ出さないとな。弱っているなら簡単に情報が引き出せそうだぜ」


 2階は火の勢いが強く、絨毯が全域に広がっていた。火の通路になっている通路を少しずつ広げて道を作っている兵士たち。その間を何事もないように通って行く。

 

「おい、この先は炎が――」


 止める兵士の言葉を聞かず通って行くカウラ、兵士の口は止まった。実際には炎が彼を避けている。炎の通り道を歩いていた。

 

(炎が避けてる、これも力か?)

「もともとこの炎は俺が出しているんだぜ? これくらい出来なくてどうする」


 彼の通り抜けた跡は再び炎が囲まれる。兵士たちは追いかけることも出来ず必死に消火活動をしているばかり。出口にも消火活動中の兵士がいたが、カウラは気にも止めず歩いていく。兵士たちも予想外の事態に気にしていられず作業を続けていった。

 

 3階もまだ炎は続く。同じように通り過ぎ、4階に来たところで炎は消え、あわら出しい兵士の姿が彼の横を通り抜けていく。ここら辺にくると兵士の心にも余裕が有るのかカウラを見て「何だ貴様は」と、つっかかりだした。そんな言葉を無視して奥へと通って行くが、彼を肩を掴み行くのを邪魔する。

 

「邪魔だ、触れるな」

「そんな訳にはいかない、好き勝手に暴れては、あっぁぁぁあ!」


 身体からグレイの刃が飛び出し触れた腕を切り落とした。引っ付いた腕を退け「邪魔するなら、全員殺すぜ!」と、キレ気味に吠える。兵士達は不気味な彼の様子に怯え逃げていった。

 

(おい、カウラ)

「うるせえ」

(少しは隠れるとか)

「うるせえ! ああ、めんどくせえ! グレイ、真上だ! もうちゃちゃっと最上階に行くぞ。どうせそこに一番詳しい奴が居るはずだ、そいつに全部聞けばいい」

「分かりました」

 

 上に伸びた刃は天井を切り裂き、軽々とその穴に飛びつき登るカウラ。途中途中兵士にも見つかっているが気にすること無く上ること数回。10階が来る所で広間に出た。誰も居ない広間。だが、天井を切り裂いたがあるのは暗い空。ここが最上階となる。

 

「らしいところに来たじゃねえか。さて、あとはそれらしいやつを探すか」

(めちゃくちゃしやがって)

「お前はエルドの王様ってやつは見たことないのか」

(あるわけ無いだろ、ヴァルナの王様すらお前のことで初めて会ったってのに)

「使えねえな、さて、探すか」


 探そうとしてすぐ、ぞろぞろと大量の兵士たちが入り、距離をとって囲み始めた。逃がさないように剣が構えられその中から1人の男性が近づいてくる。

 

「お前がここで一番偉いやつか?」

「いいえ、違います」

「チッ、まあいい。魔女の場所を知っているか知らないか。それだけで十分だ。どこだ」 

「魔女、やはり関係者でしたか――クッ」

 

 いきなり斬りかかったが分かっていたかのように前に拾った剣をぶつけた。

 

「すでにコレが何かわかっているということですか」

「さっさと諦めるんだな。そしてイエロアの居場所を教えろ」

「イエロア、それが魔女の名前ですか。他にも色々と知っていそうですね、それにあの子よりも色々と話してくれそうです」


 兵士たちが囲み始める、ほとんどの兵士が持っているのが黒い剣。何人kはあ普通の剣も持っている。


「ちっ、完全に囲まれたということか」

「あきらめるのですね」

「そうだな、ここで勝つのは難しそうだ」


 彼の足元が抜けた。話している間にグレイが切り裂いたようできれいな円形で床を切り裂いていく。下へと落ちるカウラ。その彼に向けて男性は追いかけて落ちた。

 剣を下にしてカウラを意地でも斬ろうと落ちてくる男性。カウラは空中では制御が効かないのか、持っている剣でそれを受け止めようとする。

 地面につく、同時に2人の剣が重なった。すぐに変化は起きた、カウラの剣が折れる。避けることの出来ないカウラは反射的に黒い剣の先を掴んだ。

 

(痛っ!)

 

 掴んだ手は消えたりはしなかったがロークが痛みを叫んでいる。カウラはそんなことに構っている余裕はないのか、剣を掴んだ勢いで男性に近づき離すように蹴り飛ばした。

 

「クソッ、俺の力だけぶっ飛びやがった」


 掴んだ左腕は力なくだらりとしている。

 

(おいっ! すっごい痛いぞ!)

「うるせえ、分かってる。左手だけお前の感覚に戻ってるからな」

「フフッ、他の奴らと違い消えることはないみたいですが聞いてはいるみたいですね」


 よろよろとダメージはないのかすぐに立てなおしている男性。さらに上から他の兵士が徐々に降りてきて、さらに階段から降りてきたのか続々と彼の周りを囲みだす。

 

(おい、このままだと)

「一々言うな」


 カウラは諦めたのか、何をすることもなく下を向いている。

 

「諦めたのですか? 拘束しなさい」

「……えっ、カウラ? ちょっと待って、何で交代して――」


 すでに彼の周りいた兵士たちがロークを掴みかかった。床に突っ伏され、彼の体の周りには黒い剣が添えられる。

 

「さて、彼も送りますか研究所に」

「……どうする気だよ、カウラ」


 無理やり立ち上がらされ、一歩でも動いたら殺すと言わんばかりに彼の周りに剣が構えられている。抵抗のしようのないロークはとぼとぼと言われるがままにどこかへと連れて行かれた。

 


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