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処遇

『おい、出てこい!』


 彼が入ってから二時間ほど。番人とは別の亜人が来たと思ったら牢屋を開けながら叫びだす。ロークも戸惑いながらも意味は理解してるようで、亜人に槍で突かれながら階段を上って行った。

 上りきると建物の奥へと連れて行かれる。歩き出して三分ほど、通路の様なところから急に広い空間に出た。

 人が住むには少し大きい長方形の部屋。部屋の壁には赤褐色の装飾が施されており、亜人たちの繁栄を描いているのか、彼らの姿を模した模様が付けられている。天井には薄暗い火の照明があり、部屋を薄暗く照らしている。

 入口からまっすぐ三十メートルほどの所に王が床に座っている。その王との間には槍を持った兵士たちが矛先を真上に構えたまま立ち連なっている。その間をロークは連れて行かれ、王の元へと連れて行かれた。


『今からそれの処遇を決める』


 王の声に周りに歓声が響く。理解できない叫び声にロークは不安げに見ていることしかできない。そんな彼の様子は一切問わず、王は演説を始めた。


『この者には洞窟送りとする。皆も分かっているようにあの洞窟では近頃帰ってこない者が多い。実際、わが精鋭たちを送ったが未だ帰ってはいない。探索は先送りにしていたがちょうどよく迷い込んだ者がここに来た。今回、この者を洞窟に送ることにする。皆もそれでいいか』


 王が言い終えるとさらに歓声が湧く。ロークは何一つ言っている意味が分からず顔をしかめているだけ、長いこと話していたのが気になり周りに聞こえないように小声でカウラに聞き始めた。


「おい、えっとカウラ様。なんて言ったんだ?」


 すると亜人達の歓声と同じように笑いながらカウラは話しだす。


(お前に勇者にでもなってもらうそうだぜ)

「勇者?」


 言っている意味が分からず、オウム返しに聞き返す。その様子に変わらず笑いを含みながら喋り続ける。

 

(今すぐ死ぬことはなさそうだ。周りも嬉しそうだろ)

「あ、ああ確かに」


 不思議そうに声を漏らすロークの言葉にカウラは吹き出している。明らかにカウラが嘘を付いていることを理解したのか、眉間にしわを寄せながら「なんだんだよ」と、不満の声を漏らしていると再び亜人の王が声を上げた。


『それでは、今すぐそれを連れて行け』


 王の言葉に合わせて彼の後ろから籠を持った亜人が現れた。目の前に置かれるとそこに入れと言うように槍で突いてくる。


「そんなにしなくても入るって! 痛い、痛いって!」


 言われるがままにロークは籠に入る。六人ほど亜人が集まり、神輿のように担ぎ始めた。状況の読めないロークは抗議の声を上げるが、そんなことはお構いなしに走り始める。

 

「なんなんだよコレ!」

(いいじゃないか、歩いていくより楽だし早いぜ)

「そんな問題じゃない、どこへ行くっていうんだよー!」

 

 〇

 

 暗く先が見えない洞窟。中からは風が通っているのか、たまに叫び声のような風音が聞こえる。その洞窟の前に降ろされると逃げ出さない様に一人は槍を構えていた。もう一人は布が巻き付けられた棒を出して火を付けて松明を作っている。


『さあ、行け!』

「分かったって、だから突くな!」


 槍で突かれながら奥へと進まされる。すぐに彼は立ち止まった。すぐに崖になっていたからだ。


「お、おい。ちょっとまて、ここから落ちたら」

『さあ、行け!』


 崖の高さを見ようと屈んでいたら背中を押されてそのまま落とされる。そこに向かって向かって火の付いた松明を投げた。


『さて、終わりだな。王も人が悪い。誰も入れない様にハシゴを撤去したのにここへ行かすなどとは』

『ああ、元々死刑みたいなものだったから良いだろ。下は泉になっているから落ちたくらいじゃ死ぬことはないだろうが――』

 

 激しい水音。続いてもがくような暴れる水音が響いている。どうやら下には深い水たまりになっているようだ。その音が止むと亜人達は再び話し始める。

 

『まあ、問題はそこからだよな。あの化け物を殺してくれたら食料問題がだいぶ落ち着くしな』

『でもよ、仮に化物殺したとしてもどうやって確認するんだろうな』

『知らねえよ。別に関係無いだろ』

『それもそうだな』


 亜人たちは笑い声を上げながら空になった籠を担ぎながら洞窟から姿を消した。聞こえるのは鳴き声のような風音だけ。

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