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森の中

「なんだよこれ」


 空はまだ明るい青空。周りは木々に覆われた森。彼が呟いた先には拓けていた。正確には地面がえぐれてアリ地獄の様になっている。

 

 彼は兵士ローク。

 

 城周辺の森の警備をしていたが、突如響いた轟音。ソレを頼りに彼はここへきた。彼は彼なりの仕事を果たすためにそのアリ地獄をのぞく。

 アリ地獄の中央に何かが見えた。ハッキリとは見えない、黒い何か。

 黒い何かは動きだす。坂になっているのに物ともせず上ってきた。

 

「やばっ、こっちに!」

 

 怯えた声を漏らし、逃げた。

 だが遅い。

 坂を登り切ったソレが足を掴み、彼は引きづられるように倒れた。必死に掴まれた手を除けようと蹴るがビクともしない。

 ソレがアリ地獄から姿を現した。人の姿をした何かが。

 足を掴んだまま、ソレは喋り始めた。

 

「お前は3魔女がどこにいるか分かるか」

「し、知らない! 何も知らない!」

「まあいい、別に殺すわけじゃないぜ、安心しろ」 

 

 掴まれた足の方から光りが灯り始めた。まばゆい光は二人を包み込み始める。二人が見えなくなるほど光りが強くなったが、徐々にそれは収束していく。

 光は消えた、その跡には彼一人だけが倒れていた。

 

 〇


「お目覚めですかな、ローク」

「所長? と言うことはここは――」


 ここは城の診療所。

 彼はベッドに横になり、隣にこの診療所の所長がいる。所長を見ると周りを確認する様に見回す。周囲には白いカーテンと棚に詰められた瓶詰めの薬品。カーテンの向こうでは話声が聞こえる。恐らく他の患者だろう。

 彼はここが診療所だと言うことを理解したのか「なるほど」と、小さく呟いた。


「詳しくは知りませんが森の中で倒れていたそうですよ。それとあなたが倒れていた場所の近くで大きな穴が出来ていたとか」


 話を聞きながら、倒れる直前のことを思い出したのか、ハッとした表情で自分の体を触っている。何も無かったのか、安堵の息を漏らしていた。


「足首に何かに掴まれたような痣がありますが他にはなにもありませんが、他に痛い所とかはありますか?」

「いえ、どこも」


 そう言いながら言われた足首の痣の所を見る。足かせの様に赤いあざが手首を一周している。触ってみると痛かったのか、表情を少し歪めた。


「そこは痛むようですね。とは言っても病み上がりですので養生してください」そう言いながら立ち上がり、他の患者の方を見に行くのか、二,三歩ほど歩いていたが「あっ」と、思い出したかのように声を上げて振り返った。


「忘れていました、王がお呼びですので謁見をお願いいたします。恐らく森の穴とそこで見つかったイスのような物のことでしょう」

「イス?」

「ええ、穴の中央でイスのような物が見つかったとか。噂によると破滅の者関連になるかもと、何事も無ければ良いのですが」 


 つぶやく様な、嘆く様な声で言いながら他の患者の方へと所長は歩いて行く。


「まさかあの時の化け物が?」


(化け物か、誰のことだろうな)


「誰だ!」


 彼の独り言に答えるように誰かの声がして、布団を払い見回すが誰もいなかった。

 

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