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下忍が異世界で初めて見つけた依頼主

 姫様達も神殿に用事があるとの事で同道を求められた。


「俺達には馬がないですから遅くなりますよ」


流石に姫様をおぶる訳にはいかない。


「ミナさんはソフィアの後ろに乗ればいいですし、ゴンゾには私から話がありますので馬車に乗って下さい。後始末が終わり次第出発します」


有無を言わせないとは、この事だろう。


「ゴンゾーさん、後始末って何の後始末なんですか?」


「俺が殺した山賊の遺体を森の中に放り込むんですよ。道から離れた場所に置けば山賊の仲間にも見つかりませんから」


捨てに行ったのは胸当てを着けていた男達。

騎士様達は姫様の護衛の名の元に微動だにしていない。


「ほへっ?殺したって冗談ですよね?」


「ミナ殿は山賊に話し合いや脅しが通用するとお思いですか?あいつ等は話し合いをしていたら隙をみて攻撃してきますし脅したら復讐を企てますよ」


「なんでゴンゾーさんは平然としていられるんですか?」


ミナは信じられないと言った感じで俺を見ている。


「それは、そういう人生を送ってきたからとしか言えませんね。言っておきますけど必要だからやったんですよ。好き好んでやった訳じゃありません」


俺の話を聞いたミナは怯える様にしてソフィアの後ろに隠れた。


「ミナさんに言っておきますけれども、ゴンゾが山賊を始末しなければ私やソフィア達も無事ではなかったんですよ。それに罪もない民が犠牲になったでしょう」


ショックなのかミナは姫様の言葉にも返事が出来ないでいる。


「メトレイオフロン姫、俺みたいな人殺しを馬車に乗せてもいいんですか?」


「ゴンゾ、メイと呼ぶ様に命じた筈です。それに人殺しを忌み嫌っていたら騎士を側におけませんよ。彼等は国の為に戦うのが仕事ですからね」


この姫様は俺が知っているどの国の若様達よりも良い度胸をしているじゃないだろうか。


馬車の中に入ると姫様の侍女2人が待機していた。

2人共、黒い服を着ておりは俺と似た匂いがする。


「この娘達は私のメイドよ。2人共挨拶をしなさい」


「マティと申します。ゴンゾ様に護衛をしてもらえれば安心です」


マティと名乗った女は銀色の長い髪を結っている、体は細く華奢だ。


「俺の名前はフィラカスだ。フィラと呼んでくれ。間違っても、さんとかちゃんとか着けんじゃねえぞ」


フィラカスと名乗った女はマティとは対照的に引き締まった体格をしている。

日焼けした肌に赤い短髪が似合っていた。


(2人共、騎士よりは強いが手こずる強さじゃないな)


「さあ、ゴンゾも座って」


メイはそう言ってマティの隣に座る。


「ゴンゾウ、俺の隣に来いよ」


フィラが自分の隣の席をポンポンと叩きながら権蔵を手招きする。


「それでメイ姫様は俺になんの話があるのでしょうか?護衛ならそちらのお二方がいれば問題はないと思いますが」


「あら?何でそう思ったのかしら?フィラはともかくマティみたいな細身な娘に護衛がつとまって?」


「ちょっ、姫ひどいっすよ」


フィラが豪快に笑う。


「匂いといいますか。何となく同業者の匂いは分かるんですよね。この座り方は、もし俺が動いたらマティさんが姫様をかばってフィラさんが俺を拘束するんですよね」


「流石ね、彼女達は私の護衛兼メイドよ。私が欲しいのは自由に動かせる手足、情報を集める為のね。それに女だと入れない場所もあるでしょ」



――――――――――


 それからマティ殿から詳しい説明がなされた。

姫様はアスブロと言うポリスの第一王女である事。

姫様は才覚もあり、人を差別しないので民にも人気が高いとの事。

姫様の他には上と下に王子が3人いるが、才覚に乏しく酒色に耽っているとの事。

その為、姫様を新しい王に推す家臣もいて、他の王子派がきな臭い動きをしているとの事。


「城の中はこの娘達がいるから安全なんだけど、攻められっぱなしは性に合わないのよ。ゴンゾにはあいつ等の弱みを掴んで欲しいの。うちの馬鹿兄弟に国政を任せるくらいなら穴の開いた船に乗る方がマシだし」


(どこの世界でも権力争いはあるんだな。ましてや姫は女で上に兄貴がいるとなれば国が割れる可能性が高いな)


「それで姫様、繋ぎは誰がやってくれるんですか?」


「ゴンゾ、繋ぎとはなんですか?」


「俺が毎回お城に行って王女様から依頼がありますか何て聞いてたら怪しまれるだけですよ。だから間に人をいれて依頼がある時に繋いでもらうんです。そうしたら指定した場所に行きますんで」


「確かに繋ぐ時に内容を漠然とさせておけば繋いでる人を尋問しても無駄ですもんね」


(本当にこの人は王女様かよ。あれだけの説明で繋ぎの使い方を理解しやがった)


「それと出来たら男性にしてもらえれば助かるんですけれども。どうも俺は女性は苦手でして」


「困りましたね。私個人の配下は女性だけなんですよ」


あの騎士は、国の騎士団から派遣されているそうだ。

もっとも、あんなのに繋ぎが出来る訳もないが。


「それと俺は姫様のポリスに住んだ方が良いんですか?」


まだ改造はしていないが、あの家から離れるのは惜しい。


「そうですね。何か頼みたい時には誰かをアーテナイに向かわせます。あの神殿には良く寄付をしておりますので怪しまれないでしょう」


なんでもミナが勤める神殿の神官長は、姫様に勉強を教えていたらしく定期的に寄付をしているそうだ。 今日はその神官長に挨拶に行く所だったとの事。

俺は嫌でも薄汚い権力に関わらなきゃいけない運命らしい。


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