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下忍が異世界で知ったホリスモスの意味

「スパルータに行って、何をすればよろしいのですか」

(さて、今度は何をさせられるのやら…まっ、何を言われても逆らうのはなしだな)

 

「ポセイドンのオジキが馬人に産ませた娘がいるんだが、その娘がスパルータで奴隷にされているらしいんだよ。産まれてから今まで放置されていたが娘だがオジキにバレりゃスパルータを全滅させかねない。でも、今はまだその時期でないんでな」 


「分かりました。逃がすのは、その娘一人でよろしいんですか?」

 

「そこには他に三人の獣人の娘が奴隷にされているらしい。どうせならそいつら全員を助けろ」

 権蔵は三人を助けろと言われた瞬間に、何をどうすれば良いのか考え始めた。


「分かりました。作りたい物があるので、時間は掛かるとは思いますが受けさせてもらいます」


「作りたい物?手伝ってやるから図面をひいてこい。アルケロプス、準備をしてやれ」

  

「そんな俺は図面なんてひけませんよ。その代わりと言ってはなんですが、小さくした物なら直ぐに作れますのでそれをご覧になって頂けたいた上でご指示を仰ぎたいと思います」

 それから四半刻後、権蔵はヘパイストスに一見すると何の変哲もない板を手渡した。

 しかし、ヘパイストスはその板を手に取るとニヤリと笑いながらこう言った。



「面白い事を考えるもんだな、でも素人だから作りが甘ぇんだよな。これならここある物を改良すれば大丈夫だから、俺達が作ってやるよ。詳しい話は紙に書いとくから旅すがら読めば良い」

 ヘパイストスはそう言うと、手を振りながら奥へと消えていった。

 翌日、権蔵達が泊まっている宿に一台の馬車が届く。

 その馬車はキルケの馬車と違い豪奢ではないが、堅牢さと大きさは段違いであった。


――――――――――――――


 その日、ヘパイストスの馬車の前で震える犬人の娘がいた。


「あのーゴンゾー様、やっぱり僕が牽かなきゃいけないんですか?十二神様の馬車なんて見るだけでも畏れ多いのに」

 緊張のあまりクオレの顔は青白くなり、耳と尻尾はしなだれていた。


「仕方ねえだろ?俺はこんなでかい馬車は牽けねえし。第一、お前はスパルータに詳しいだろ」


「うー、うー、わふー…僕もアミナ様みたいに宿に残りたいですー。スパルータは獣人差別が酷いんですよー」

 権蔵はアミナに鏃が完成するまで宿屋で待機してもらう事にした。

 三人の奴隷を助けると言えば聞こえが良いが、要は拐かしである。

 アミナは邪魔にこそなれ戦力として期待が出来ない。


「それなら安心しろ。キルケ様だけじゃなくヘパイストス様からも身分を証明するって手紙を預かっている」


「ゴンちゃんお手紙に他には何が書いてるの?」


「えーとですね。奴隷の首輪は馬車にある短剣で切れるそうです。それで獣人の娘を奴隷にしているのはポロニス子爵、ポセイドン様の娘の名前がキューマ、他に猫人のミータ、犬人のエルバ。それと姉さんにアストライアー様って女神様の事を聞けって書いてますが…どうした?クオレ」

 手紙を聞いていたクオレの目から大粒の涙を溢し始めた。


「エルバ、生きてたんだ…良かったー、良かった!!エルバは僕の妹なんです」


「ゴンちゃん、これは絶対に助けないとね。アストライアー様は正義と天文の女神様だよ。アストライアー様の神話か…もしかしてホリスモスってあの話と関係があるのかな?ホリスモスは古い言葉で閉じたって意味なんだよ」


 昔、猿人の行いや争いを嘆いた神はエルフ、ドワーフ、獣人、精霊、動物、魔物、そして正しい猿人と悪しき猿人に選り分ける事にした。

 アストライアーは正義を量る天秤にて猿人の罪の重さを量り、正しき猿人をガイアの地に残して、悪しき猿人を違う地へと移動させた。

 それから悪しき猿人が残された地を閉じられた世界と呼ぶ様になった。


「悪しき猿人ですか…確かに、俺のいた所にはエルフどころか獣人や魔物もいませんでしたね」


「でもこの話は禁忌に近い話で許可なく話ちゃいけないんだ。それにゴンちゃんより悪い人は沢山いるよ」

  

「あの俺のいた所って、ゴンゾー様はどこの産まれなんですか?」

 この後、権蔵がガイアに渡った経緯や自分の反省を伝えると犬人の娘は力なく笑うしかなかったと言う。



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