表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/94

下忍が異世界で初めて見た魔女

いつの間にか日刊ランキングに再登場していました

 アイアイエ島に向かう馬車の中、権蔵はプリムラに問い詰められていた。


「ゴンちゃん、何をしたいのかお姉ちゃんにきちんと説明しなさい。なんでちゃんとご飯を食べないの!!」

権蔵はアスブロを立ってからクルミや山野草しか口にしていない。


「俺はしばらく五穀断ちをするんですよ。ですから、これで良いんです」


「ゴンゾウ君、五穀断ちとはなんだね?」

アニュレは権蔵の知ってる薬草等の知識に興味を持ったらしく話をする事が多くなっていた。


「やっぱり、こっちにはありませんか。俺の国の坊主がやる修行なんですけど五穀と呼ばれる米、麦、豆、稗、粟それと肉、魚とかを食べない事で体を清めるって話です。確か食べて良いのは木の実と栽培をしていない草木です」


「なんでゴンちゃんがお坊さんの真似をしなきゃいけないの。そんな事をして何か意味があるの?」


「俺は坊主じゃないから意味なんて分かりませんし、苦行を積んだから他人が救えるなんて考えも持っていません。ただ、五穀断ちは神仏に誓って行う修行なんですよ」


「つまり、太陽神ヘリオス様の娘でもあるキルケ様の食事を断る口実にするのか?」

キルケは太陽神ヘリオスと海洋神オケアノスの娘ペルセの間に生まれた尊い存在であり、権蔵の後ろ楯であるメイトレフォン姫の牽制も無意味である。


「ええ、摩利支天様はこっちの神様の順位と関係ありませんから」

摩利支天はカゲロウを神格化した仏で、忍びや武士から信仰を集めている。

権蔵自身は仏の存在を信じていないが、修行で真言を覚えたから諳じる事が出来るしお館様一族が摩利支天を信仰していた手前御札も持っていた。


「それならアイアイエの近くに行ってからでも良いじゃない」

プリムラは自分が作った料理を権蔵が美味しそうに食べる姿を見るのを楽しみにしているのだけに不満なのだ。


「それじゃ意味がありませんよ。大丈夫です、俺は即身成仏する気なんてありませんし」

この後、即身成仏の意味を教えた下忍は馬車の中で義姉からこってりと説教をくらったのは言うまでもない。


_________________


 アスブロを出て10日目、権蔵達はチェルチュオ岬にあるチェルチュオの町に到着した。

アイアイエ島にはチェルチュオの町の港から船で1時間程行った所にある。


「しかし、連絡をしていないのに本当に迎えが来るんですか?」

アニュレの話ではチェルチュオの港に迎えの船が来るとの事。


「前も言ったでしょ。キルケ様は神の血をひくお方だから私達がチェルチュオに着いた事ぐらいお見通しだよ。それよりお姉ちゃんはゴンちゃんの方が心配なんだからね」

プリムラの言う通り権蔵の五穀断ちをした為、頬が痩けていた。


「クルミを食ってますから大丈夫ですよ…まさか、あの船ですか?でけぇ、まるで大安宅じゃないですか」

安宅船は和船の一種で大安宅ともなると

長さ50m、幅10mの物もあったと言う。

権蔵達の前に現れた船は大安宅と比べても遜色がない大きさがあった。


「アニュレ様、プリムラ様お久しぶりですね。それとゴンゾウ様とクオレ様お初にお目にかかります、私はジェミニに属していたボリティスと言う者です」

ボリティスと名乗った男性ののエルフは権蔵達に恭しく頭を下げた。


「ジェミニに属していたか…今はキルケ様に仕えるボリティスと言う事で良いんだな」


「ええ、アニュレ様これからよろしくお願いします。それでは皆様、船に乗って下さい」

アニュレの荷物を積み込むと船はゆっくりと動き出した。


_________________


 船が動いて1時間程経った頃、アイアイエ島が見えて来た。


「アイアイエ島が見えてから、なんか空気が変わりましたね。冬の朝みたいにシャンとなりますよ」

アイアイエ島は高い塔が立っている以外はこれと言って特徴がない島である。

しかし、下忍を警戒させる独特な何かを放っていた。


「アイアイエ島にはキルケ様が住んでるからだよ。ゴンちゃんが感じたのは神気じゃないかな…ゴンちゃん、あそこにいるのがキルケ様です」

港にいたのたは陽光を受けて金色に輝く髪の女性。

年の頃は20代前半。

清純さの中にも匂い立つ様な色気を放っていた。

男なら一目見ただけで心を鷲掴みにされるであろう。

しかし、下忍は


(あれはヤベェ。本物の化生だ)

キルケの美しさに隠された異様なまでの迫力に恐れ(おのの)いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ