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下忍と獅子姫

 権蔵はプリムラを背中に乗せたまま素早く木々を移っていく。

「速いし揺れないしゴンちゃんの背中に慣れたら馬車には乗れないよ」


「でもエルフの国に入ったら馬車で移動しなきゃ不味いんじゃないですか?」

族長の娘が見知らぬ人間におぶさっていては要らぬ誤解を生みかねない。


「今回はヴァルゴにしか行かないから大丈夫だよ。先ずは麓の町に行ってヴァルゴにお手紙を出さないとね」


「手紙ですか?何の為にです?」


「入国する為に必要なんだ。全員の名前と種族、入国の目的、どこの部族の里に何日ぐらい泊まるのかとか色々と書かないとエルフの国には入れないんだよ」


「随分と厳重なんですね。俺は残った方が良いんじゃないですか?」

いくらアスブロの姫様からの親書があるとは言え、違う世界から来た裏稼業の人間に許可がすんなりと出る可能性は低い。


「何言ってるの、僕やリリーちゃんを助けてくれたのはゴンちゃんなんだよ。何のお礼もしてないのに、ゴンちゃんが来なかったらヴァルゴの面子が丸潰れになるんだよ」

仮にも族長の娘が奴隷になる寸前で救われたのに、救った本人に何のお礼もしなかったら部下の意欲が減少しかねない。



「姉さんからは充分にお礼をもらっていますし、俺としては注目は浴びたたくないんですけどね」

権蔵を忍びとしてではなく、まともに1人の人間として扱ってくれたのはプリムラが初めてなのだから。


「ゴンちゃんったら、可愛い事を言っちゃって―!!」

この後、プリムラと真逆に権蔵の忍びの技術に執着する者が現れる事を2人はまだ知らない。


__________________


 エルフの国から戻って来た許可証には意外な人物の署名が記されてあった。

ザンナ・クリエニーラ、レオの族長の娘でプリムラやリリーを奴隷として売り飛ばしたと思われる人物。


「あの女はどれだけ厚かましいのだ!!リリー様を売り飛ばした癖に迎えに来るだと!?私の前に現れたら斬り捨ててやる」

許可証を見たスノウは破り捨てんばかりの激昂を見せる。

スノウ自身も誘拐された身、誰もが怒るのは当たり前と思っていた。

しかし、怒るスノウに感情の籠っていない冷たい声を掛けた者がいた。


「何の証拠もないのに族長の娘を責めるおつもりですか?そりゃ随分と豪気な話だ」

権蔵の言う通りザンナは現段階ではあくまで怪しいだけであり、決定的な証拠は残していない。


「ゴンゾウ殿、それはどういう意味だ?」


「ヴァルゴはレオと戦をする覚悟はあるのかと言ってるんですよ。いや、スノウ殿は自分の腹いせの為に多くの同胞を戦地に追いやるおつもりなんですか?」

権蔵はオントの1件以来、スノウやリリーに良い感情を持っていなかった。


「くっ!!ゴンゾウ殿はザンナの味方をするのか?」


「俺はプリムラ様に頼まれたから動いてるんです、レオもヴァルゴも関係ありません。ただ、自分の悪事を悪事として認識しているザンナ様の方がまだ好感が持てますけどね。…プリムラ様やリリー様の親御さんが何故耐えているかお分かりにならないのですか?戦にならない為ですよ」

権蔵は戦国時代の生まれである、仕事とあらば流言も流すし暗殺もした。

自分でも悪事にまみれた外道だと思っている。

しかし、武士や騎士の様に名誉や欲の為に動いた事は1度もない。

むしろ欲や名誉の為に決闘や戦を起こす人種を嫌っていた。



_________________


 数日後、権蔵達の前に1人の少女が現れた。

切れ長の目に夕焼けの様に真っ赤の髪の毛を持つエルフの少女。

レオの族長の娘、ザンナである。


「リリーもプリムラも無事な姿を見て安堵した。これからもよろしく頼む」

ザンナは見事に涙を浮かべながらそう告げた。


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