下忍と異世界の酒
権蔵は小屋から戻るとプリムラの部屋を訪ねていた。
「姉さん、ちょっと買い物に付き合ってもらえませんか?」
「良いよ。でも何を買うの?」
「酒ですよ。俺は酒を飲まないんで教えて欲しいんですよ」
権蔵は何故か顔をしかめながら話をしている。
「ゴンちゃんはお酒が嫌いなの?まさかお酒が弱いとか?」
権蔵は弱い面をプリムラ以外に見られたくないらしく、だからわざわざプリムラが1人でいる時を選んで部屋を訪ねていた。
プリムラとしてはそんな義弟が可愛いくて仕方がない。
「弱いかどうかなんて分かりませんよ。何しろ餓鬼の頃、無理矢理飲まされて死にかけましたから」
忍び が酒に溺れては仕事が勤まらない、しかし酒を知らなければ敵に盛られても気付かない可能性がある。
だから権蔵 の里 では修行中の子供に酒をたらふく飲ませた後に手練れの忍びに襲わせて酒の苦しみを体に覚え込ませている。
「自分で飲まないんならどうするの?まさかクレオちゃんに無理矢理のませて」
「なんでそんな発想になるんですか。今回の仕事で使うんですよ」
権蔵は顔を更にしかめてしまう、プリムラとしては義弟の反応が可愛くて堪らずついついからかってしまうのだ。
「分かってるって。この町は湧水が豊富だからお酒の種類も豊富なんだよ。それでどんなお酒が欲しいの?」
「出来るだけ強いのが良いですね。直ぐに酔っぱらう様な酒はありますかね?」
「ゴンちゃん、まさかクレオちゃんじゃなくソフィアちゃん狙い?お姉ちゃん、お酒の力に頼るのは関心しないな」
「何でそっちに話がいくんですか?もう1人で行きます」
「ゴンちゃん怒った?お勧めはバッガスのウゾだよ。酒の神様バッガスが好きなぐらいに強いお酒なんだってさ。さっ、行こ」
ふてくされていた権蔵だが無愛想な態度で酒屋の娘を怯えさせてしまいプリムラにフォローされてようやくバッガスのウゾを手にいれたのであった。
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次の日の早朝、1人の商人が酒樽を背負いながら山道を登っていた。
何度も休みながら登る様はすれ違う旅人から失笑をかっている。
時間を掛けながらも例の広場に商人が辿り着くと、人相の悪い男達が話し掛けてきた。
20人近い男達が商人を取り囲む。
「おい、商人。薬か水は持ってねえか?」
何故か男達は顔色が悪く、中には脂汗を浮かべている者もいる。
「申し訳ありません。私が持っているのはバッガスのウゾと言う酒だけですので」
商人に扮装している権蔵が申し訳なさそうに頭を下げた。
「くっ、俺達は腹が痛くて仕方ないんだ。商品じゃなくて良いから薬はないのか」
「それはそれはお辛いでしょう。しかし薬どころか水もありませんので」
痛ましそうな顔をして見せる権蔵であるが男達の飲み水に下剤を仕込んだのは他ならぬ権蔵である。
「それならその酒を寄越せ。寄越さなければ斬るぞ」
下痢になれば当然脱水になる、男達は下剤入りの水を一晩で飲み干してしまい喉がカラカラになっている。
(そんな状態で強い酒を飲んだらどうなるんだろうね)
泣きながら酒樽を渡した権蔵は心なかでほくそ笑んでいた。
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