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下忍が異世界で初めて受けた魔術

大概の男なら美人や美少女に囲まれれば鼻の下を伸ばして喜ぶだろう。

しかし、その大概の中に含まれない者もいたりする訳で。


「この後の話をするとは言いましたけど、何もこんな小さな部屋に集まらなくても良いんじゃないですか?」

権蔵が宿屋で選んだ部屋は貴族の従者が泊まる時に使われるベッドとテーブルしか置かれていない小さな部屋。

今その小さな部屋にはプリムラ、クレオ、リリー、スノウ、ソフィアの5人が集まっていた。


「ゴンちゃんが話があるって言うからみんな来たんだよ。ほらっ、そんな端っこに居ないで真ん中に来なさい」

プリムラの言う通り、部屋の主である権蔵は窓際で顔を赤くしながら大きな体を小さくしている。

ちなみベッドにはスノウ、リリー、プリムラが腰を掛けソフィアは入り口の側で立ち膝をしクレオを床で体育座りをしている。


「ここでも話は出来ます。それに壁際にいれば外の気配が分かりますからね」

そう言いつつも権蔵はプリムラ以外の女性の方を向こうともしない。


「それで明日は何時頃に出発するの?」


「明日は動きませんよ。旅の疲れをとらなきゃ戦いの最中にどんなヘマをしでかすか分かりません。2、3日はゆっくりしましょう」

長旅では知らず知らずの内に疲れが溜まってしまう。


「しかし、それでは敵に準備をする時間を与えてしまうのではないか?」

ソフィアは入り口への警戒をしたまま権蔵に話し掛けてきた、この間の夜襲で全く活躍出来なかったソフィアは必要以上に警戒をしている様だ。


「相手は何日も前から、この町に逗留してる筈ですよ。俺達が来てから集合を掛けても間に合いませんからね。今頃はピリピリしてるでしょうな」


「そうか!!相手を焦らして疲れさせるんだね。ゴンちゃんえらい!!お姉ちゃんが膝枕してあげる」

基本的には待ち伏せする方が有利ではあるが、敵を待ち伏せしている時の緊張や疲れはかなりのものとなる。


「何よりこの宿屋を見張っている奴がいましたからね。明日は疲れをとる事と道具の手入れをして下さい…姉さんなんで側に来るんですか?」

プリムラは権蔵の隣に腰をおろすと自分の太ももをポンポンと叩いてみせた。


「膝枕してあげるって言ったでしょ?旅で一番疲れてるのはゴンちゃんなんだから」

プリムラの言う通り、この旅で権蔵は殆どを自分の足で移動している。


「あれぐらいは慣れっこですよ。飯を食って寝れば疲れはとれます」

何よりも人に目身の良い少女達に見られながら膝枕をされる恥ずかしさは耐えられるものではない。

それに対して無言で自分の太ももを叩くいてみせるプリムラ。


「分かりましたよ、分かりました。本の少しですよ」

プリムラは自分の太ももに権蔵が頭をつけた瞬間に優しい口調で魔術を唱えだした。


「我が魔力により深き眠りにをもたらせん、スリープ」

権蔵がつけている手甲は魔術の発動が分かるもので魔術を防ぐ物ではない。


「姉さん、何を…」

権蔵はそのまま深い深い眠りにおちる。


「見て見て!!ゴンちゃんの寝顔可愛いでしょ?この子は何時も神経を尖らせてるから、たまにはグッスリと寝せてあげないとね」

そう言ってプリムラは権蔵の頭を優しく撫で始めた。


――――――――――


次の日、深い眠りから目覚めた権蔵は驚きを隠せないでいた。

何しろ気づいたら1人寝台で寝ていたのだから。


(あれが魔術か、何とも恐ろしいものだな。…姉さんは魔術の怖さを俺に教えてくれたのかもな)

それにグッスリと眠れたお陰で体が快調である。

見るも聞くも初めての別世界に来たと言う緊張感は知らず知らずのうちに権蔵の体を疲れさせていたのだろう。

そっと木で作られた窓を開けると町を朝靄が包んでいる。


(姉さんのお陰で疲れもとれたし。一仕事するか)

権蔵は手製の草鞋を掃くと音もなく窓から飛び出した、向かう先は宿屋を監視してい見張り役の所。


(見張り役は変わらずか。流石に疲れが溜まってるみたいだな)

変化のないものを屋外で見張る辛さを権蔵も知っている。

だから大事な見張りの時は交代制にするのが常識なのだが、1人で監視してきた男は朝が来て気が緩んだのかうつらうつらと船を漕ぎ始めている。

それを確かめると権蔵は宿屋に戻って行った。


「クレオ、馬車を出す準備をしてくれ」


「今からですか?確か今日は出掛けないんじゃないですか?」


「出掛ける振りだけで良いんだよ。俺が合図したらお前はゆっくりと休んでろ」


朝靄を馬のいななきと馬車の車輪の音が切り裂く、それはうたた寝をしていた男をの耳に届き、彼を目覚めさせた。

目覚めた男は慌てふためいて朝靄の中を走り出す、背後から追跡してくる異世界から来た下忍に気づきもせずに仲間の所へと走って行く。



―――――――――


男は途中で馬に乗り換えると、山に向かっていった。

男の着いた先は山に建てられた山小屋、程なく20人近い男達が小屋からワラワラと出て来くる。

小屋の中に誰もいないのを確認すると権蔵は小屋の中に忍び込み水瓶にある物を流し込んだ。


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