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下忍が異世界で初めて手に入れた奴隷?

 レマルゴスの武器屋から出ると権蔵は思わず溜め息を漏らした。


(さてと、どうすっかな。宿屋の主人に頼んでみるか、まずは姉さんに相談だよな。でもうまく話さねえと面倒な事になるよな)


プリムラはレマルゴスの店で新しい弓矢を買って上機嫌である、この上機嫌がどんな風に変わるかと思うと権蔵は頭を抱えたくなるのであった。

幸いに何事もなく宿屋に到着、そして権蔵は意を決して話し始める。


「姉さん、お勧めの奴隷はありますか?実は…」「ゴンちゃん!!お尻をだしなさい、奴隷を欲しがる様な悪い子はお姉ちゃんがお尻を叩いてあげます」


「話を最後まで聞いて下さいよ。レマルゴスから紹介状をもらったんですけれども、クラニオの館で行われる非公式の奴隷会に出るにはクラニオの商館で1度奴隷を買わなきゃいけないらしいんですよ」

初めて非公式の奴隷会に参加する者は奴隷を買った時に紹介状を渡すのが参加条件だとの事。


「やっぱり簡単には参加させてくれないか。それでゴンちゃんはどんな奴隷が欲しいの?」


「俺は奴隷なんていりません。だから宿屋か姫様の城で雇ってもらえる奴がいいです。贅沢を言えば女ですね、女好きが大金をだしてエルフを買いに来たって方が説得力がありますからね」


「あの宿屋はエルフしか雇わないから無理だし、お城も正体が分からない元奴隷なんて雇わないよ」


(そりゃそうだよな。間者と思われるのがオチか)


「故郷に帰すのは駄目ですかね?」


「売られた理由によるかな?泣く泣く売られた娘ならともかく故郷も本人も喜ばないんじゃないかな?」

家族や身内としては売った後ろめたさがあり、本人には売られた恨みがある。


「流石に他の奴隷商に売るのは気がひけますしね」

権蔵としてはクラニオの商館で見た醜い男達と同族にはなりたくなかった。


「うーんなら獣人とかはどう?身体能力が高いから冒険者で自活が出来ると思うんだ。それに獣人は仲間意識が強いからゴンちゃんの好きな情報を手に入れ易くなると思うよ」

獣人しか知らない情報や噂話を定期的に報告してもらえば少しは役にたつ。


「それで獣人にはどんな奴らがいるんですか?」


「ゴンちゃんの世界には獣人がいないんだもんね。一番数が多いのはゴンちゃん達猿人族。他に犬、猫、狼、狐、虎、兎とかだよ。性格は犬人族は忠義心が強いし、狼人族はなかなか主と認めないけど一度認めた相手には絶対の忠誠を誓うし、狐人族は賢くて猫人族は気まぐれ、兎人は臆病で虎人族は仲間意識が高いんだよ。でも個人差があるからあくまで一般論だけどね」


「それなら犬人族か狼人族が妥当ですね」

情報提供者になってもらうには同族よりも主を重要視してもらう必要があるからだ。


「そうだよね、中でも虎人族の奴隷はお勧めしないな。彼らは同族を大切にするから街で見られたら終わりだし」

虎が猿の奴隷になっている光景は彼等のプライドを傷つけるらしく、虎人を奴隷にするなら刃傷沙汰を覚悟しなければならないらしい。


「犬か狼で家事が出来る娘ですね。しばらく家事を任せた後に奴隷から解放して冒険者兼情報提供者になってもらえば良いでしょう、買う金は元々クラニオの金なんですし」


――――――――――


クラニオの商館は細部まで贅が凝らしており伯爵家や公爵家の屋敷と比べても遜色がないだろう。


(どうも、こんな場所に来ると場違いで調子が狂うな…でも今の俺は放蕩息子)


 次の瞬間には権蔵から戸惑いが消えていた。


「いらっしゃいませ、本日はどの様なご用件でしょうか」


「ここは奴隷を売る所だろ?それなら用事は一つしかないじゃん」

商館の従業員は権蔵の返事に苦笑いで答える。


(心の中では俺の事を馬鹿な金蔓と毒づいているだろうが、その金蔓の蔓がお前らの金庫まで届いてるとは思わねえだろうな)


狡知に長けた商館の従業員が騙される程に権蔵の演技は自然なものであった。


「お客様、この様な場所でそんな事を言われたら困ります。お話なら奥で聞きますので」権蔵に話し掛けてきたのは1人の男性。


(クラニオか…相変わらず骸骨みてえな男だな)

クラニオの体には無駄な脂肪どころか最低限必要な筋肉もないく、極端に痩せ細っている。


「それなら早く案内しろ。大丈夫だ、金なら父上から沢山貰っているから」


クラニオは無礼とも言える権蔵の態度に顔色一つ変えずに頷いた。


(あれだけ派手に動いたんだ。レマルゴス辺りから俺の事を聞いてるだろう。少し揺さぶってみるか)



「レマルゴスから聞いたぞ。ここには良い女が揃ってるらしいな」

そう言って権蔵は好色な顔をする。


「はい、我が商館はイロアス1の奴隷商館でこざいます。従って扱っている奴隷も一流です。お客様はどんな奴隷をお求めでしょうか?」


「今回は獣人が欲しい、種族は犬か狼にしてくれ。条件は家事が得意な娘だ」


「お客様は素晴らしい運をお持ちです。つい先日、最高の犬と狼を入荷したばかりです(値段も問わない馬鹿坊主め、エルフを高く売る為にもおだてておくか)」


「それはそうだろう。僕は庶民と違うからな(おいおい、毎回同じ口説き文句をかよ。随分と芸が荒いな)」


権蔵が連れて来られたのは応接室であった、普通の応接室と違うのはソファーが1つしかない事とソファーの正面に鉄格子がある事。


「これがお客様の望む奴隷でございます」

クラニオの言葉に合わせて登場したのは6人の少女達。

全員体の線が丸分かりの薄い服を着ていた。

権蔵はいかにも好色そうな表情を浮かべていたが…



(早く決めねえと体に毒だ…体は見ないで目をみりゃ良いか)

決め手は目に生き延び様とする力があるかどうか、泥水を啜っても生き延び様とする気迫があれば冒険者として暮らしていける。


「右から2番目の娘はいくらだ?(俺が睨んでも目を逸らさないのはこいつだけだな)」


「お目が高いあの娘は犬人族で処女です。値段は銀貨200枚となっております」


権蔵が選んだのは水色の髪をショートカットにしている娘。


「分かった、貰おう。これから200枚とってくれ」


権蔵は銀貨を詰めた袋をクラニオに渡す。


「それとこれを渡しておく。日にちは何時だ?」


「これはこれは招待状をお持ちでしたか。それなら明後日の夜私の屋敷に来て下さい。それでは隷属の儀式を始めます、この娘の名前はクレオです」


権蔵はクレオの首輪に手を掛けるとゆっくりと口を開いた。

「我が名はゴンゾウ、クレオの主たることを宣言する」



――――――――


 クラニオの商館から出ると権蔵は思わず溜め息を漏らした。


「ご、ご主人様ー、なんで溜め息を漏らすんですか?わ、私をいじめるんですかー?ふぇっ、ふぇーん!!」


「虐めねえから泣くなっ!!こりゃ姉さんに迎えに来てもらえば良かったな」

クレオは権蔵の顔が怖いと泣き、言葉が荒くて怖いと泣き、とにかく権蔵を困らせ続けている。



―――――――――


 ゴンちゃんが心配になったので迎えに行ってみると、ゴンちゃんは案の定困った顔をしていた。

原因は後ろにいる犬人族の娘だと思う。


「貴女が坊ちゃまの新しい奴隷ですね。着いて来なさい」

僕が話し掛けると2人が同時に安堵の溜め息をもらしたんだよね。

お姉ちゃんの確信、ゴンちゃんにご主人様は無理っ!!

ちょと情けないけど、何故だか堪らなく嬉しいんだよね。




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