下忍が異世界ですり替えたモノ
奴隷の首輪、はめる事で強制的に従わせる事が出来るマジックアイテム。
「しかし何でリリー様は奴隷の首輪をはめていたんでしょうか?」
宿屋の主人が不思議そうに話す。
「強引に着けられたからじゃないですか?」
「ゴンちゃん、奴隷の首輪は自分の意志で着けなきゃ意味がないんだよ。じゃなきゃ効果が発動しないの。そうじゃなきゃ誰でも寝てる時に着けられる危険性があるでしょ」
(自分で着けさせる事で心を折るんだな。いやらしい道具だ。って事は)
「それなら簡単です。あの牢屋にはもう1人女性がいたでしょ?多分、首輪を着けないと相手を殺すって脅したんですよ。リリー様は自分の所為で女性が巻き込まれたから、もう1人の娘は王女様を守る為に着けたんですよ」
お互いの絆を利用した卑怯だが確実な方法。
「ちくしょう!!奴隷の首輪を着けられたら奪還が出来ませんよ。前に奪還の途中で自殺させられた事があったんです」
「こういう時の奴隷はどこで売られるんですか?」
エルフの族長の娘を堂々と売れば大問題になるのは確実である。
「クラニオの屋敷で月に1回非公式で奴隷を売っているんですよ。エルフの奴隷2人だとタラント金貨が20枚は必要だと思います」
(確か金貨1枚で銀貨1000枚と同価値って話だよな。エルフ2人で銀貨2万枚かよ。…でも、どうすっかな)
「そんなお金ヴァルゴでも出せないよ。何か良い方法はないかな」
心配のあまりプリムラの目に涙が浮かぶ
「奴隷として買えば首輪を外せるんですね。それなら俺が何とかしますよ」
「ゴンちゃん、すぐ隣にいる美少女エルフには手を出さない癖に奴隷を買っちゃうの?お姉ちゃん二重の意味でショックだよ」
わざとらしくテーブルにのの字を書いていじけてみせるプリムラ。
「姉さん、奴隷の首輪を外す方法はあるんですよね?全く、姉さんの為に動くってのに」
権蔵は一度見ただけのエルフが奴隷に墜ちても痛くも痒くもないのだが、自称姉が落ち込む姿はあまり見たくはない。
それだけがリリー主従を助ける理由であった。
「分かってるって。身内が奴隷を買い戻す時もあるし、奥さんにするにしても奴隷じゃ無理だからね。ちゃんと解除が出来る筈だよ」
「それじゃリリー様主従の事を教えて下さい」
「リリーちゃんは大人しくて臆病な娘。一緒にいたのは騎士のスノウちゃん、スノウちゃんは堅物で頑固で人間嫌いなんだよ」
「それじゃ今は人間嫌いに磨きがかかってるでしょうね…それを利用させてもらいましょう」
―――――――――
ます権蔵はクラニオの金庫からタラント金貨を1枚盗みだした。
「本当にあっさり盗んできちゃうんだもんね…ゴ、ゴンちゃん何をするの!!」
慌てるプリムラを無視して権蔵はタラント金貨に木槌を振り下ろした。
何度も何度も振り下ろす。
「うわっ!!金貨がペラッペラッになっちゃったよ」
「ペラッペラッにしたんですよ。こっちにあるか分かりませんが、それは金箔って言うんですよ。こいつを銅貨に張れば、ちょっと見ただけなら金貨に見えるでしょ」
―――――――――
確かにゴンちゃんが作った偽金貨はパッと見は本物の金貨に見えるけど
「それでリリーちゃんを買うの?ちょっと調べたらすぐにバレちゃうよ?」
「ちゃんと考えてますよ、任せて下さい」
そう言い終えると、ゴンちゃんは何時もの様に闇に消えていった。
それから2時間ぐらいしてゴンちゃんが帰って来た。
「クラニオの金庫には金貨が沢山あったんです。多分、非公式の奴隷だと買い取りも高いと思うんですよ、つまり出入りが激しい…すり替えても気付きませんよ」
ゴンちゃんが持ってきた金貨は全部で25枚。
値段が20枚を超えた時の用心らしい。
でもゴンちゃんには金貨を持ち逃げするって、発想はないんだろうか。
「ゴンちゃん、金貨を持ち逃げしようとは思わなかったの?これだけあれば一生遊んで暮らせるんだよ」
「そんな事をしたら目立つだけですよ。残った金貨は次のエルフの時に使えばいいじゃないですか」
(欲がないと言うか、警戒心が強いと言うか…ゴンちゃんは僕が着いていてあげないと幸せを平気で放棄しちゃいそうだよ…それじゃ可愛いゴンちゃんの為に僕も頑張ろうかな)
リリーちゃんもスノウちゃんもゴンちゃんを嫌いこそすれ感謝はしないと思うんだよね。
スノウちゃんには間違ってもゴンちゃんにケンカを売らない様に言い聞かせておかなきゃ。
―――――――――
次の日、権蔵は宿屋にいるエルフ達に集まってもらっていた。
「クラニオが身なりの貧しい者を相手に商売をしないと思うんですよ。それで服や靴を買い揃えたいと思うんですが、誰か詳しい人はいませんか?」
「もう仕様がないなー。ゴンちゃん、お姉ちゃんに任せておきなさい。お姉ちゃんがゴンちゃんに会う服をばっちり選んであげる」
そう言いながらも、他のエルフを睨みつけて牽制するプリムラ。
(エルフは服装にうるさいんだよね、ゴンちゃんが着替えた姿を見たらあからさまに落胆しかねないよ。そんな事をしたら、ゴンちゃんはエルフに心を閉ざしかねないもん)
「ゴンちゃん、次はこれを着てみて…うーん、やっぱりゴンちゃんには青が似合う…次は靴と宝石だね」
その日、1日下忍は姉と慕うエルフの着せ替え人形にされていた。
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