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下忍異世界で初めてしったエルフの国

 良く晴れた日の昼。

権蔵とプリムラはイロアスに繋がる道を2人で歩いていた。


「ゴンちゃんは泥棒さんの真似も出来るの?」


「姉さん、周りに人がいますので言葉には気を付けてもらえませんか?忍びは城や人様の屋敷に忍び込むのが生業です。忍び仲間には盗みを生き甲斐としていた奴もいましたから。それこそ1銭の得にも…こっちの言い方だと1カルケス銅貨の得にならない事を命懸けでしてましたよ」

真っ昼間から泥棒扱いされた権蔵は苦笑いしながらも説明をする。


「1カルケスの特にもならない盗みなんてあるの?」

 

「こっちで言う貴族の屋敷や大商人の屋敷に忍び込み金蔵の鍵だけを盗む奴とか、高額な壺に自分の名前が書いた紙を張って帰ってくる奴とかがいましたね」


「なんでそんな危ない事をするのかな?…まさか!!ゴンちゃんもやってたの」

女の勘なのか、エルフの勘なのか、自称姉としての勘なのか、プリムラが権蔵に詰め寄る。


「忍びだって事は世間には言えないんですよ。だからたまに世間に"俺は忍びだ!!俺の技を見ろ"って主張したくなるんです。自分が忍びとして生きた証を残したくなるんです」

下忍の末路は惨めなものが殆どである。

天井裏に忍んでいる所を槍で突かれて死んだ者もいれば仲間の囮になり道端に打ち捨てられた者もいた。下忍は家族を持っている者が殆どおらず、死んでも誰にも弔われず誰にも思い返してもらう事がない。


「だから時々無性に自分が忍びとして生きてた証を刻みたくなるんですよ」

権蔵はそう言うと寂しそうに笑う。

その笑みの中には自分の悪癖がバレずにすんだ安堵も含まれているのであった。


――――――――――


 メトレイオフロン王家の次男イスヒシが治めるポリス・イロアスは独特な雰囲気を持った都市だ。

何しろ忍び時代は世間の裏で生きてきた権蔵が顔をしかめる程なのだから。


「姉さん、この街は何なんですか?人に値段をつけて店先で売るなんて。それに商人が明る過ぎやしませんか?」


イロアスでは、そかしこに鎖に繋がれた人が売られていた。

老若男女、種族も様々であるが皆一様に暗い顔をしている。

それとは対象的に奴隷商達は明るく爽やかな笑顔を浮かべて客に媚びをみせていた。

権蔵が知ってる人買い達は無意識のうちに己の業に苛まれ暗い顔をしてる者が殆どであったのと対象的である。


「奴隷になると人として認められないんだよ。ゴンちゃんもそうだったんでしょ?」


(俺があの奴隷達と一緒だと?いや俺は忍びであって奴隷じゃねえ)


「違いますよ、俺は忍びです。俺は忍びの腕で生き抜いてきたんです」

忍びの矜持は何者にも頼らず己の忍びの腕のみで生き抜く事なのだから。


「確かにゴンちゃんを鎖で繋いでおくのは無理だろうね。さて、これからどうするの?」


「イロアスにある冒険者ギルドに依頼の品を届けに行きます。それが終わったら観光をしながら飯でも食いましょう」

権蔵が受けた依頼は第10級と低いものではあるが、イロアスに入る為の身分証明となっていた。


「宿屋さんはどうするの?」


「適当な所を見つけて泊まる予定ですけども」

権蔵1人だけならその辺りの木の上でもイスヒシの屋敷でも寝れるので宿屋に拘りはなかった。


「それならお姉ちゃんが知ってる宿屋でも良いかな?イロアスに知り合いがやっている宿屋さんがあるんだ」


「それなら姉さんにお任せしますよ」


――――――――――


 宿屋の人間がプリムラに気付くと驚きの表情を浮かべた。


「お、お嬢様。なぜ、この様な街に来られたのですか!!」

よく見ると主人も女将も宿泊客さえもエルフである。


「依頼だよ、僕は冒険者をしてるんだ」


「お嬢様が冒険者なんて野蛮で下賤な仕事をするなんて!!それにその醜い人間は従者か奴隷ですか」

宿屋の主人らしきエルフは信じられないと言った感じで叫ぶ。


(そういや姉さんは族長の娘とか言ってたよな。確かに領主の姫様が冒険者なんてしてたら驚くか)


「可愛いでしょ、ゴンちゃんって言うんだ。私の命の恩人で可愛い可愛い弟なんだよ」

このとんでもない紹介による混乱を収めるには1時間ちかくの時間を要した。


――――――――――


「そうですか。レオの姫がそんな事を…レオの奴ら、領地が広いからって好きかってしやがって。今年に入ってからでも不当に奴隷にされたエルフが6人もいるんですよ」

そう言って憤慨する宿屋のエルフ達。


「お姉ちゃんによるゴンちゃんでも良く分かるエルフ講座―!!えっとねエルフは12部族に別れて各地を治めてるんだけど、レオの一族が一番領地が広くて権限を持ってるの。

ちなみにお姉ちゃんはサジタリウスの部族長の娘なんだよ」


「しかしそんな勝手をしてたら周りが許さないでしょ」


「それがレオの奴らは確たる証拠を残さないですよ。基本、エルフは奴隷に出来ない取り決めなんですけども非合法な所でなら高値で売れますし」

嘆くのは宿屋のエルフ主人。


「それでレオの奴らはますます力をつけて。私達はイロアスに泊まるエルフの安全の確保と非合法に奴隷にされたエルフの救出の為に宿屋をやってるんですよ」

説明をしてくれたのは宿屋の女将だと言う女性エルフ。


「それならこの宿屋が狙われたりしませんか?」


奴隷商にしたらこの宿屋は宝の山である。


「ここは冒険者ギルドに保護されていますし、領主のイスヒシは英雄に憧れてるらしく表向きはエルフの保護を約束してくれていますから」

(その割にはイスヒシの事は呼び捨てか)


「ちなみにイロアスは英雄って意味でイスヒシは腕力って意味。イスヒシは腕力って名前なんだよ」

(英雄の街の領主になって英雄熱に拍車が掛かったって所だな)


「男が英雄に憧れるのはよくある事ですよ。姉さん、いい機会ですから領地に戻ると言うのは」

「駄目!!ぶっちゃけ領地よりゴンちゃんの側の方が安全なんだよね。立場上、レオのお姫様に呼ばれたら断れないし」

屋外に誘い盗賊に襲わせて形だけの討伐隊を出せばサジタリウスの部族も文句は言えない。


「そのゴンゾウ様はそんなにお強いんですか?」


「ゴンちゃんは強いだけじゃなく不思議な技も使えるし、あのメイトルフォン姫の知遇も得てるんだよ」

何故か威張ってみせるプリムラ。


「それじゃ俺はイスヒシの顔を見に行ってきます」

隣の親父の顔を見に行く様な気軽さで権蔵は闇に消えていった。


――――――――――


(あれがイスヒシね、しっかし本当にあの姫様の兄貴かね)


何故か室内でもあるのにイスヒシは派手な鎧を着込んでいた。

確かにガタイはでかいが怖さはメイの半分どころか1割にも満たない、それがイスヒシをみた権蔵の感想である。


権蔵は片仮名を使えないから難しいです

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