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下忍が異世界で初めて受けた盗み依頼

 ゴンちゃんを訪ねてきたエレオスって黒い服の男、あれはヤバい。

僕のソウルサーチも無効化されてるし。

分かるのは深い深い闇の匂い、まるで冥府から来たかの様な闇の匂いがする。


「それでエレオス殿、俺は何を盗ってくればいいんですか?」


「イスヒシは最近紅い牛の角を手に入れたらしいんですよ。あれは私とちょっとした因縁がありましてね。謝礼はお金でも武具でもゴンゾーさんが欲しい物を差し上げますよ」


ゴンちゃんを止めなきゃ、そう思って声を出そうとした瞬間エレオスと目があった。

それは人でもエルフでもない獣の目。


「貴方はエルフですか?ゴンゾーさんを宜しくお願いしますよ。彼は私の大切な客人なんですから」

優しげに微笑むエレオスだけれど僕は恐怖の余り黙って頷くしかなかった。


「報酬ですか。…魔術の気配や放つ瞬間を知りたいんですが可能でしょうか?」

無理だ、ゴンちゃんは生活魔術すら使えないのに。


「相変わらず慎重なんですね。それならピッタリのマジックアイテムを持ってますよ」

嘘だ、そんな便利なマジックアイテムなんて人間の王族は疎かエルフの宝物庫にもないと思う。


「依頼の期限は何時までですか?」


「急がなくても良いですよ。そうですね、1ヶ月後に進み具合を確認しに来ます」

そう言うとエレオスは家から去り、雑踏に消えて行った。


「ゴンちゃん、あの人とどんな関係なの?お姉ちゃんあの人が怖くて仕方ないよ」


「俺はあの人に連れられてここに来たんです。言い方を変えればあの人は俺を簡単に殺せるんですよ」


多分あれは人じゃない、私の考えが正しければ…でもあのお方はゴンちゃんに何をさせるつもりなんだろうか。



――――――――――


 「ゴンゾー、イスヒシ兄さんのイロアスに行くんですってね。その所為でフィラが朝からご機嫌斜めなのよ」

権蔵はメイに依頼の為にイスヒシが治めるポリスイロアスに行く事を報告に来ていた。


「ちょっ、姫様、何を言ってるんですか?俺はゴンがどこで何をしようが関係ないですからね」

日焼けした顔を赤くしながらフィラが否定する。


「俺がにイロアスに行くとなんでフィラが不機嫌になるんですか?」


「ゴンゾー様、イロアスの主産業は奴隷なんですよ。ティグリもイロアスに良く奴隷を売ってましたから」


「奴隷?そんな者の買ってどうするんですか?俺はただでさえ他人に恨まれ過ぎてますからね。余計な恨みは買いたくないんですよ。姫様、イスヒシ様に御用はありますか?」


「ええ、イスヒシ兄様は最近お気に入りの物があるみたいなの。ついでにそれを調べて来てちょうだい。イロアスにはゴンゾが1人で行くのかしら」


「ええ、ギルドで運搬依頼を受けてから行くつもりです。そうだ、姫様に俺が作った飴を献上します」

権蔵は懐から取り出した竹筒をメイに手渡した。


「これは食べ物かしら…ゴンゾ、これはどれ位の量を作れるの?」

メイは一瞬だけ顔を緩めたが、すぐさま何かを思案し始める。


「材料さえあればいくらでも作れますが」


「そう、マティ陶器職人に小物入れの手配をしてちょうだい。フィラ貴女達も食べてみなさい」

(流石は姫様だ。アメを陶器の小物入れにいれて貴族への下賜に使うつもりだな)


「うわっ、あまっ!!おい、ゴン何で今まで出さなかったんだよ」

フィラはにやけながら怒ると言うなんとも器用な表情をしながら権蔵に詰め寄って来た。


「作ったのが最近だったからな。姉さ…プリムラさんから売るよりも姫様に献上した方が得策だと言われたんだよ」

最も彼の義姉プリムラが水飴をとても気に入り家庭内消費量はうなぎ登りになっている。


――――――――――


 「姉さん、俺は明日からイロアスに行ってくるので…」

「ゴンちゃん、お姉ちゃんは留守番なんてしないわよ。あーゴンちゃんも男の子だもんね、奴隷が欲しくなったのかー。お姉ちゃんに奴隷を買うのを見られるのが恥ずかしいんだね」

分かった、分かったと言わんばかりにプリムラが目をつむりながら頷く。


「俺は奴隷商人が大嫌いなんですよ。それに俺は金を払ってまで恨みを買うつもりはないですよ」


「恨み?奴隷を買うと何で恨まれるの?」


「奴隷にも家族や幼馴染みがいるでしょ。そいつ等がもし奴隷になった人と再会したら主人になっている俺を逆恨みするでしょうからね」

最も権蔵達の様に物心がつかないうちに親から引き離されたのなら別であるが。

「じゃ、ゴンちゃんは奴隷さんを買わないんだ」


「よっぽどの事がない限り買う事はないでしょうね。本音を言えば奴隷商なんざ顔も見たくない」


「それじゃお姉ちゃんも一緒に行っていいじゃない。ゴンちゃんはこっちの常識にまだうといからお姉ちゃんは心配なの」


「しかし俺は城に忍び込むんですよ。何かあったら同行者にも害が及びます。俺1人なら殺されてお終いですし」


「ゴンちゃんはもうシノビさんじゃないんだよ。今は冒険者のゴンゾウなんだから、そんな哀しい考え方は止めなさい」

最初はエルフのしがらみから逃れる為に権蔵に近づいたプリムラであったが、今は戦いはやたら強い癖に普段は寂しがり屋の権蔵を本当の弟の様に感じていたのだ。

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