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下忍が異世界で初めて組んだパーティー

 プリムラが買い物を終えて戻って来ると、テーブルの上に今回の依頼で使うと思われる縄等の様々な道具が置かれていた。


「ねえ、ゴンちゃんこのナイフには何で縄が結んであるの?」

プリムラが指差した苦内には太く編みこまれた縄が結ばれてある。


「あっ、姉さんお帰りなさい。それは苦内ですよ。今回の依頼で使う可能性があるんで」


「ふーん、この竹で出来た剣も使うの?」


「それは竹光です。苦内も竹光も用心の為ですよ。時間があれば他にも作りたい物があるんですけどね」

権蔵は大概の道具は自分で作る事にしている。


「へー、ゴンちゃんって器用なんだねー。それじゃ弓も作れるの?」


「こっちではどんな弓が主流なのか分かりませんけども弓矢は忍びにとって大切な武器ですからね。良く作りましたよ」

権蔵が仕事で忍び時代に貰える金はたかが知れており弓矢は自作するのが常であった。


「ゴーンちゃん、お姉ちゃんも弓を作って欲しいな。お店にビビっとくる弓がなかったんだよねー」


「良いですよ。後から姉さんの腕の長さを計らせて下さい。使い易い大きさにしますので。流石に時間がないので弦は買って来ますが」


「うんうん、持つべきは器用な弟だよね」


「姉さん、ティグリの所にいる破剣のタナトスはどんな魔術を使ってるか分かりますか?」

権蔵は破剣は破壊力のある剣からついた異名だと推測した。


「おーゴンちゃん人族なのに良く気付いたね。あれは万物切断ってレアな魔術なんだよ。人族はおろかエルフでも使える人は少ないんだよ」


「この世界にある剣で人を剣ごと両断出来るとは思えませんでしたから。俺の国の剣でも太い枝を斬るぐらいが精一杯でしたし」


「魔術を使わないで太い枝を斬れるんだ。…もしかしてゴンちゃんタナトスと戦うつもり?駄目です、そんな危険な事はお姉ちゃんが許しません!!万物切断は何でも斬っちゃう危ない魔術なんだから」

権蔵は真剣な表情で怒り出すプリムラに呆気にとられていた。

自分なんかの身の危険を真剣に考えてくれる人に初めて出会ったからである。


「大丈夫ですよ、タナトスは剣術自体は大した腕じゃない。それにあいつは万物切断とか言う魔術に酔いしれています。忍びには持って来いの相手ですよ」

何よりもティグリの領地でよその冒険者が魔物を倒したらタナトスが嗅ぎつけてくる筈だ。


―――――――――


 権蔵とプリムラが待ち合わせ場所に着くとミナが手を振ってきた。


「さあ、ゴンゾーさん、レッツゴーなのです。僕達の手で農民を苦しめる鎧カタツムリことパノプリアザリガリを倒して農民の皆様の笑顔を取り戻すんです」

権蔵達に小走りで近づくなり空を指さ指しながら吠えるミナ。


「ゴンちゃん今からパーティーメンバー変えない?お姉ちゃんこの娘苦手だな。神官よりもゴンちゃんに相応しい娘をお姉ちゃんが選んであげるからさ」


「ぬっ、貴女も他種族婚を禁止されてるエルフじゃないですか。しかもお姉ちゃんって家族ごっこのつもりなんですか?」

顔を見せるなりケンカをしだすプリムラとミナ、そして権蔵はあまりの賑やかに頭を抱えるのであった。



――――――――――


 「この間通った村よりさらにひでえな。畑も草だらけじゃねえか」


「税が重いうえに作物を作れば鎧カタツムリに食べられちゃうからねー。作る気が起きないんじゃないの」

近いが少し違うと権蔵は思った、なぜならこんな風景は忍び時代に良く見たからだ。


「作る気ってより飯が食えなくて体力がないんだろうな。…ワラビとかの山菜が生えてるけどこっちじゃ食わないのか」


「ゴンゾーさん、それは毒草ですよ。いくらなんでもそれを食べろって言うのは酷いです」


「ワラビは生で食えば毒だけど灰汁につければ食えるんだよ、うまいんだぜ。それより鎧カタツムリの話を聞きに行くか。姉さんとミナお願い出来ますか?俺なんかが行ったら山賊と間違えられますから」

下手をしたら悪人面の為に税を徴収に来た兵士に間違われかねない。


――――――――――


 プリムラとミナが聞いて来てくれた鎧カタツムリが住処にしていると言う畑に着くと、そこはより酷い風景になっていた。

パノプリアザリガリの吐いた酸の所為で土から悪臭がして荒れ果ていたのだ。


「ゴンちゃん、この土なんとかならないのかな」


「臭いがしている土を取り除くしかないよ。…あいつがパノプリアザリガリか」


「ゴンゾーさん、あれは無理です、気持ち悪る過ぎます。ヌメヌメがユラユラしてます」

ミナが騒ぐのも無理はない、人と変わらないカタツムリが軟体の体をユラユラと揺らしながら現れたのだから。


「姉さんとミナは下がっていて下さい。こいつは俺が片付けます」


権蔵は言い終えると同時にパノプリアザリガリに向かって石を投げつけ始めた。


「ゴンちゃん、そんな事をしたら殻に隠れちゃうよ。ほらー、パノプリアザリガリは1回殻に入ると中々出てこないんだよ」


「これで良いんですよ」

次に権蔵はパノプリアザリガリの殻の入り口に土をぎゅうぎゅうに詰め込み縄で縛っていく。

縛り終えると縄を木にかけてパノプリアザリガリを宙吊りにした。


「さてと後はカタツムリの下で焚き火をすれカタツムリの蒸し焼きの出来上がりです。それとも天日干しにして殻を売りますか?なに、2日も吊しておけばカタツムリの干物が出来ますよ」


権蔵はパノプリアザリガリの殻を餌にしてタナトスも釣り合るつもりなのである。

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