下忍が異世界で初めて仕込んだ事
久しぶりの権蔵さん
「とりあえずプリムラさ…姉さんにもギルドに登録してもらいます。それとミナ殿とパーティーを組む手続きをしますので」
「ゴンちゃん今プリムラさんって言おうとしたでしょ!!それになんであのチビっ娘神官と組むの?」
「俺が姫様に頼まれたのは情報収集、それには神官のミナをリーダーにして動くと便利なんですよ」
「そうか!!神官をリーダーにしておけば怪しまれずに貴族の領地に行けるもんね」
神官は布教や救護の為に貴族の領地に自由に出入りする事が許されている。
貴族としても炊き出しをしたり無償で領民を治癒してくれる神官はありがたい存在であった。
「それに神官が受けたがる依頼なんてのは面倒な物になると思います。誰も見向きしない様な領主さえも手をつけない依頼。言い方を変えれば統治に難がある領主や貴族ですね」
領地の問題を解決するのは本来は領主たる貴族の役割。
神官に依頼が来るのは領主の統治能力に難があるか、領主や周囲の人間に問題がある可能性が高い。
「なるほどね。でも神官さんの依頼なんて無償に近いんだよ。生活費はどうするの?」
「依頼のついでに高く売れる魔物を狩ります。後は遊芸や飴売りで稼いでも良いですし」
むしろ忍び時代は遊芸や飴売りに変装して忍び込んでいた権蔵としては、その方が手っ取り早いのだが。
「お姉ちゃん遊芸はお薦めしないな。遊芸とかにお金を払う余裕があるのは貴族や商人しかいないよ、ゴンちゃん顔を覚えられたくないでしょ。それでアメって何?」
「そう言えばこっちではあまり見ませんね。前から仕込んであるのがありますので食べてみて下さい」
権蔵が作ったのは麦芽糖を利用した水飴。
遊芸で客を集めて自作の水飴を売るのが権蔵のやり方であった。
「ゴンちゃんこれ蜂蜜みたいに甘くて美味しいよ!!…でもこれも厳しいかもね。地の商人に目を着けられる可能性が高いわよ。甘い物は蜂蜜とか果物があるけど、どっちもビックリする位に高いんだよ」
果物は旬を外れると保存方法がないので高くなるし、蜂蜜を採るのには命懸けになるので自然と高くなる。
「それなら王女様に買い取ってもらうのが一番ですかね。あのお方なら値段以上に役立てる事が出来るでしょう」
人の妬みの怖さを知り抜いている権蔵としては余計な軋轢を避けたいのであった。
――――――――――
「ゴンゾーさん、お待ちしておりました。依頼はもう決めてあります、これです」
待ち合わせを場所のギルドに着くや否や挨拶もそこそこにミナスが話し始めた。
「これは討伐依頼ですか?しかしこれはエヴゾモウス(第7)クラスですよ。俺達では受けれないのでは」
「大丈夫です。神官特権で受け付けて貰いました、それに民衆が困っているのは見過ごせません。でも悲しいですね、誰もこの声に耳を傾けないなんて」
ミナは悔しそうに呟くが
「そりゃそうでしょ。素材にも食材にもならないパノプリアサリガリなんて誰も相手にしたくないわよ。お姉ちゃんの良く分かる魔物さん講座ー!!はいっ、ゴンちゃん拍手をする!!パノプリアザリガリは普通は鎧カタツムリって呼ばれる魔物なんだよ。大きさは大人と同じぐらいかな。これが攻撃をするとすぐに硬い殻に引っ込むし強力な酸も吐く厄介な魔物。傷を着けると体から酸を出して殻がボロボロになるから素材にもならない旨味の少ない魔物なのよ」
(つまりミナが依頼を受けれたのは神官特権じゃなく厄介事を押し付けられたらだけと。もしミナが失敗したら神殿が尻拭いをしなきゃいけないしな)
「それで依頼料は3,000カルケス銅貨?これは安過ぎませんか?」
他の素材を確保しなければ消耗品や3人分の飯代で赤字になりかねない金額だ。
「ゴンちゃん仕方ないよ、鎧カタツムリの被害は農作物が主だからね。農家はデリウス銀貨なんて出せないよ」
「それでどこの領地なんですか?…ってまたティグリ子爵の所かよ。それだと姉さんは留守番をしますか?」
プリムラはついこの間までティグリ子爵の城に監禁されていた。
「領主と言えども神官の連れには中々手は出せないよ。それにお姉ちゃん思いの優しいゴンちゃんが守ってくれると思うしね」
「分かりましたよ、ところでミナ殿の武器は何ですか?」
「僕は回復専門なので直接戦闘はゴンゾーさんにお任せします」
(姉さんは弓矢だろ、それでミナ殿は戦えないとなったら実質俺1人で戦う事になるのか。出来たら身を傷つけにずに倒したいんだが)
「それじゃ俺はこれから縄をなってきます。わざわざ買うよりましでしょ、姉さんは身の回りの物を揃えて下さい。ミナ殿には準備が出来次第連絡を入れます」
(後、一応竹を探してみるか。なければ代用で木でもいいし)
感謝お待ちしております




