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下忍が異世界で見せた涙

 フィラは権蔵と別れると直ぐに広場を見渡し、ある人物を探し始めた。


「いたっ!!親父、急ぎの用だ!!馬を貸してくれ、馬と代金は城に預けておく」

フィラの本職は護衛を兼ねたメイドである為、出入りの商人に顔が広い。


「フィラ様分かりました。お代はいりませんから自由にお使い下さい」


そして商人もフィラがメトレイオフロン姫の側近と知っているので無碍には扱わない。



――――――――――


 「ゴンゾーは私に知らせろと行ったのね…マティ、馬の準備して」


「はい、あのままじゃティグリとの関係がこじれてしまいます」

御用奴隷商人がメイから指示を受けている権蔵に怪我をさせられたらティグリ子爵は、ここぞとばかりに交渉材料にしてくるに違いない。


「そうね、ゴンゾがいくら頑丈でも耐えるには限界があるからね。…ウフッ、ウフフッ、良いわよゴンゾ楽しませてくれるわね」

メイの想像通りならティグリ子爵に一撃を加える事が出来るでだろう。



―――――――――


 急いで広場に戻ったフィラが見たのは予想外の光景であった。


「勘弁して下さい。あっしが悪かったです、もう殴らないで下さいよー」

それは権蔵が商人の手下達に散々殴られ涙を流している姿である。


「お前が格好つけて彼奴らを庇ったのが悪いんだよ。払う金がねえならストレス発散させてもらうぜ」

権蔵はフィラと別れた後に奴隷商の護衛達に親子を見逃して欲しいと懇願しに行ったのだ。


「だーから謝ってるじゃないですか。誰か助けて下さいー。あぁ姫様お助けください、彼奴等があっしをいじめるんですよ」

権蔵は這いつくばったままメイの背後まで逃げて行く。

その顔は涙や鼻水でグチャグチャになっているし、男達に殴れた体は痣だらけになっていた。


「ゴンゾ酷い怪我ね!!一体どうしたの?マティ、フィラ、ゴンゾを保護しなさい。それと私の部下を殴ったは誰かしら」


「こ、これはメトレイオフロン姫様。これはですね」


「フィラから話を聞いたわよ。貴方、子供がぶつかっただけで100デリウスを請求したんでしょ?それなら私は1,000デリウスを請求します。貴方達の理論で言ったらおかしくないはずよね。だってゴンゾの怪我の方が酷いし私は王女なのよ」

奴隷商人はティグリ子爵の比護を良い事に親子に法外な治療費を請求をした。


「いや、あれは冗談でして決して本気で請求しようとは…」


「あら貴方は冗談で人に怪我をさせるの?アスブロは法治国家よ。奴隷商の資格を剥奪されたいのかしら?だって貴方は私の部下を冗談で怪我をさせたんでしょ?そんな人なら奴隷商の免許は取り消しにしなきゃいけないわね」


「それはその…せめて500デリウスにまけてもらえませんか?」


「1,000デリウスかその親子と今連れている奴隷を渡すかを今直ぐに選びなさい。場合によっては軍を呼ぶわよ」


結局、奴隷商は親子と連れて行た奴隷達をメイに預けて去って行った。


「流石は姫様だ。おい、ゴンお前も姫にお礼を言いな。ってゴンがいない?」

フィラがいくら探してもさっきまで泣き喚いてた権蔵の姿を見つける事は出来ない。


「フィラ気付くのが遅いわね。ゴンなら奴隷商達の後を着いて行ったわよ。どうせ彼奴らはティグリの所へ報告に行くから丁度いいのよね」


「えっ、姫。ゴンの奴は怪我をしてたんじゃ?」


「マティが言ってたわよ。全部急所を外しているし治療が必要な怪我は1つもなかったって。奴隷商達も可哀想にね、命がなくなったら財産なんて意味がないのに」



――――――――――


 (しっかし忍び使いの荒い姫様だね。ティグリを探る所だけじゃなく奴隷商達の始末まで命じて)

そんな無茶ぶりをされた当人の権蔵は奴隷商の馬車を見下ろしながら愚痴っている。

権蔵は馬車の後を着いていく事で難なくティグリの屋敷に辿り着いく事が出来た。

その豪華過ぎる屋敷を見て権蔵は呆れかえっている。


(領民の生活は困窮しているのにテメエだけは贅沢三昧か。こりゃ姫様が怒るわけだ)

ティグリ領の民は一様にやせ細っており、権蔵に飢饉にあった村に忍び込んだ時の事を思い出せた。


(さて俺の得物を使ったんじゃ面白くねえな。屋敷の中で何か調達するか)


――――――――――


 忍び返しも盗賊除けも使われていないティグリの屋敷は権蔵にしてみれば無人の屋敷と何ら変わりがない。


「奴隷を小娘に取られただと?この馬鹿者め!!」


(あれがティグリが。よく肥えてるが筋肉じゃないな。おうおう怒る度に肉が揺れてら)


「申し訳ありません。近日中に新しい奴隷を手に入れ来ますので」


「当たり前だ!!うちの領内にはもうめぼしい女はいなくなったんだぞ」


(ったく、どうして権力者って奴は助平なんだろうな。英雄色を好むって柄でもないのによ。…へー随分と豪華な剣を持ってんだな。そういや貴族の屋敷は治外法権なんだよな)


―――――――――


 次の日、ティグリ子爵の屋敷は騒然としていた。

屋敷に泊まった奴隷商とその護衛が殺害されていたのだ。

そして奴隷商の腹にはティグリ子爵の剣が深々と刺さっていた。

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