堕ちた魔法少女のライフハック
「親友にそんなひどいことはできません!どうして、そんなひどい提案をするんですか」
「これはひどいことなんかじゃないです。あなたの幸せを、お友達にわけてあげるだけですよ」
「で、でも、それは相手の意思を無視した押し付けで・・・」
「最終的にあなたのお友達は幸せになるのです。その途中で多少の強引さも必要です」
「そんなの、虫のいい言葉じゃないですか。結局は親友を都合のいいように利用する行為でしょう」
「あなたも幸せ、お友達も幸せ。何の問題もないじゃないですか」
「そんなの間違ってます」
「間違ってなんかいません」
その少女は反論できなくなり、口を閉じる。
その少女は魔法少女だった。今は変身前の姿で、相手には正体がばれていないと思っている。
「あなたは真面目過ぎるんです。もちろん、真面目は美徳です。ですが、たまには肩の力を抜いてリラックスしましょう。あなたはまるで自分一人で世界を救おうとしているみたいですよ。ああっ、ごめんなさい。勝手なことを言いましたね。でも、もしあなたが大いなる力を持っていたとしても、それに対して責任を持つなんて考えは傲慢だと思いませんか?」
「・・・お姉さん」
その魔法少女にとっては、知り合いの男の子の姉であるほぼ関係のない人間のはずだった。
だけど、何故か懐かしいような大事な相棒だったはずだったかのような感覚になる。
その魔法少女は知らない。
この世界は改変された世界だと。
目の前にいる女性が、かつて正義を愛した魔法少女だと。
そして、今はもうその正義など放り捨てていることを。
その堕ちた魔法少女の後ろに、姿を消した悪魔がひかえていることを。
「これはちょっとしたアドバイスです」
一般人の猫を被った堕ちた魔法少女は、もう一度繰り返す。
「あなたは国民的推理マンガにはまってしまった。何十年も連載されているマンガに今更はまってしまったので、これから百を超える巻を買わなければならない。加えて、毎年の映画も揃えたい。学生のあなたにはとてもグッズを買うお金はない。幸い所有欲はないのでグッズ自体を買うつもりはない。でも、たまにはグッズを眺めたい。それが、あなたの悩みです。その悩みを解決する方法が、先程も言いましたが、あなたのお友達にあなたの好きなマンガをすすめるのです。そして、そのマンガのグッズの魅力をアピールするのです。そうすればあなたのお友達はそのマンガのグッズを集めるようになるでしょう。あなたはそのグッズをたまに見せてもらえばいいのです」
「そんなの友達を倉庫代わりに使うひどいことじゃないですか」
「そうではありません。これはあなたはグッズが見れて幸せ、友人はグッズの魅力を知ることができて幸せ。みんなが幸せになれる行為です。そう、言うなればライフハックです」
姿を消している悪魔は、自分では思いもつかない主人である堕ちた魔法少女の邪悪なライフハックに歓喜の声を上げる。
「なんてクソみたいなライフハックだ」
おわり




