帰り道の告白
朝からドジばかりしてしまう俺。
バイト先では、先輩にいつも助けてもらっている。
同じ高校だけど学科は違うし、家も帰る方向は一緒。
そんな日常の中で、俺の気持ちは少しずつ膨らんでいった――
俺は有馬。
バイトを始めてもう1年になるというのに、
どうも仕事を覚えきれない。
お客さんから注文を受けて、
材料はすぐ手元にあるのに、番号札を渡すタイミングを間違えたり、
トレーを逆に持ってしまったりする。
後ろで調理してくれている先輩が、小さくため息をつく。
「またか…」
そんな声は聞こえなくても、目で伝わってくる。
俺は申し訳なさで肩を落とす。
でも、不思議と怒られる気はしない。
むしろ、先輩がいると少し安心する。
この先輩にだけは、ちゃんと見てもらいたい――
そんな気持ちになるのだ。
バイトが終わると、俺と先輩は一緒に帰る。
学科は違うけど、家が同じ方向だから自然と並んで歩くことになる。
今日は、自転車を二人で押しながら帰る。
並んで歩くと、いつもより少しだけ近く感じる。
「こっちの道の方が安全だな」
先輩が前を歩きながら言う。
「はい…」
俺は少し緊張しながら答える。
もう少しで先輩はバイトを辞める。
あと何日一緒に帰れるだろうか。
俺と先輩は知り合って1年。
就職先も知らない。
でも、胸の奥の気持ちは隠せない。
今日、帰り道のこの時間に、思い切って告白しよう――
思わず口が動いた。
「俺、先輩のこと…好きです」
言った瞬間、頭が真っ白になる。
先輩の顔を見上げると、驚きと少しの戸惑いが混ざった表情があった。
先輩は、耳を少しこちらに傾けてくれた。
俺は小さな声で、震える声で言う。
「先輩…」
先輩は静かに微笑んで、落ち着いた声で返す。
「知ってたよ」
唇が触れそうな距離。
胸の奥で鼓動が早まるのがわかる。
でも、先輩はそっと首を振り、
「ごめんね」と言った。
頭では理解していても、心の中でつい
「キスをすればよかった」と、卑怯な考えがよぎる。
帰り道――どうやって帰ったのか、正直覚えていない。
ただ、胸の奥で高鳴る鼓動だけが、はっきりと残っていた。
それだけで、今日という日は、特別な一日になったのだ。
読んでくださってありがとうございました。
一瞬の恋心や胸の高鳴りを、少しでも感じてもらえたら嬉しいです。




