乙女ゲームの世界に転生しました。ですが、ヒロインではありません。悪役令嬢でもありません。攻略対象の王子です
ちょっと拙いとこもありますが、優しく見ていただけたらうれしいです。
きゃああ、と可愛らしい声をあげてわたしを囲む令嬢に、顔に笑みを張り付け、軽く手を振りながら考えていた。ここの世界、ほんと顔面偏差値高いよなあ、と。そんな、顔面に似合わないことを考えているわたしは転生者だ。日本でしんだと思ったら、乙女ゲームの世界に転生していたという、ラノベで有りがちの王道展開である。ただ一つ違うのは、わたしが転生したのはヒロインでも、悪役令嬢でもなく、攻略対象の王子だったと言うことだ。・・・私の推し、ノアなのに。サラサラなで、後ろでひとまとめにした銀髪に、宝石みたいに綺麗な青色の瞳。すっごくかっこいいのに。同性じゃもう、結婚とか無理じゃない。
そんなことを考えて、ため息をつきかけていると、側にいるノアが声をかけてきた。
「フェリックス殿下、王子らしく振る舞ってください」
きゃあああ。かっこいい(#≧∨≦#)とは、もうならない。いや、なるけど、そうじゃなくて、きちんと振るわまわなければならないのは理解している。
「ああ。すまない」
にやけそうになる顔を押さえ、きっと、凛々しい顔つきを作る。ここは国中の貴族子女が集まる学園だ。気を抜いていては、なめられる。
女の子の集団を皇族にでもなったきぶんで、(まあ、実際に今は王族なんだけど)手を振り通り抜け、生徒会室の中へ入った。はあああ。と、大きなため息が出る。ノアには、じと目で見られるが、なにも言ったりはしない。小さい頃からの付き合いで、ノア以外の誰かの前ではきちんと振る舞うことを理解してくれているからだ。それと、あともう一つ理由がある。
「殿下、今日は初めて平民が入学してきますからね。今だらける分、きちんと王族らしく振る舞ってくださいよ。確実に、といっていい確率でいじめが起きますから。特別扱いはいけませんが、守ってあげてください」
そう、今日から乙女ゲームがスタートするのだ。ヒロインが令嬢達にいじめられているところをたすけるのだ。わたしが。物語が進んでしまうじゃないか、でも、王族として守らないわけにはいかない。なにせこのヒロイン、ソフィアはこの世界唯一の光属性なのだ。もう王太子である兄と婚約するのは暗黙の了承みたいになっているが、まだしてはいないのだ。いくらでも覆せる。乙女ゲームの世界では実際、フェリックスが婚約していた。まあ、乙女ゲームだしね。・・・まて、
「ノア!今だらける分、といったか?だらけてないぞ! きちんと後のことを考えている!」
そう反論すると、ノアははいはい、適当にあしらった。・・・いまわたし、王族なんだけど。
もうすぐソフィアがいじめられる時間になるので、すぐに助けられるよう、だけど怪しまれないよう、自然な流れでその場所に移動する。その場所、噴水のある中庭の、ちょうど目立たない場所にあるベンチに座り、イベントが起こるのを待つ。そうすると、一分も立たずに、ソフィアと令嬢達がやってきた。やはりソフィアはヒロインなので、すごくかわいい。ピンク髪にピンクの目。王道ヒロインってかんじ。ただ、にこりとしていないのに違和感を持つ。無表情でなんだかこわい。ソフィアは令嬢達が追いかけて来ていることに気づいていない見たいで、手にハンカチとお弁当をもってごく普通に歩いていた。ちょっとハラハラしていると令嬢達がソフィアに話しかけた。
「ねえ、そこのあなた、光属性だとかなんだとか知らないけど、きちんと身分を弁えなさいよ」
「そうよ!あなたのような賎しいものがいては、教室が汚れますわ!せいぜい教室の済みでうずくまってなさい」
「くれぐれもフェリックス殿下とノア様、それからジークフリート様には絶対に近づかないこと。いいわね?」
ソフィアは、返事をせずに俯いていた。
「いいわね?!」
令嬢がソフィアの髪を掴み無理矢理上を向かせる。わたしは助けに行こうと立ちあがったが、その必要はなかった。ソフィアの顔を見て、令嬢が目に見えて怯え出したのだ。ソフィアは口角だけすこしあげ、不気味に笑っていた。そして、ゆっくりと口を開け、つぶやくように言った。
「親の権威を借りて、威張ることしかできない女たちのいうことなんて、どうでもいいわ」
小さい声だったが、わたしも聞き取ることができた。ということは、周りにいる貴族達にも聞こえているだろう。
「・・・これは、面倒臭いことになったな」
乙女ゲームの展開とは、余りにソフィアの行動が違いすぎる。これはもう、転生者だと断定してもいいだろう。ヒロインが転生者とは・・・やりづらい。しかも、今の言葉は他の貴族も聞いていることだろう。ソフィアはもはや、貴族を敵にまわしたようなものだ。普通なら処刑されていてもおかしくないのだが、貴重な光属性の魔法使いなのだ。次いつ現れるのかわからない以上、そうやすやすと処刑していい存在じゃない。となれば、わたしがするべきことはただ一つ。これをいさめること。
「落ち着かれよ。この学園は平等をうたっている。身分を振りかざることはいけないことだ。それから、口の聞き方にも気をつけなさい。令嬢らしく振る舞え。いいな?」
はい。とソフィアも含めた令嬢達が頷いた。反省してなさそうに見えるけど、ひとまずはいいだろう。このソフィアならきっと自分でなんとかするだろう。
「ノア、行こう」
「はい。殿下」
私たちは教室にもどった。
ノアは去年と同じく、同じクラスだ。今のわたしは王族である!。このくらいは簡単にできるのだ!って言っても、強引にではない。常に側にいる人がいるのは当たり前なのだ。側仕えみたいな感じである。護衛は別にいる。そう、あそこにいる・・・
「あー!殿下、やっと見つけました!お昼休みどこ行ってたんすか?さがしたっすよ」
王族に対しての口の聞き方がなっていないこの阿保ほど明るい男はジークフリート。わたしの護衛である。グレーの目に赤い髪。性格にすっごくぴったり。アホっぽさがよくでている。
「おい、ジークフリート。殿下に対する口の聞き方がなっていないぞ」
ノアが諌めてくれるが、ジークフリートには無理だ。ノアもわかっていながら言っているのだろう。わたしが別にいい、と手を振ると、黙って一歩下がった。
「ちょっと中庭にね。ほら、一年生に光属性の子が入ってきたから、どんな子だろうって」
ジークフリートの質問に答えると、ああ、とおおきくうなずいた。
「ソフィアのことっすよね?そういえばそんなこと言ってた気がするっす。教室にも遊びに行くね、とか」
え、と思った瞬間、教室の前がざわつきはじめた。
「ジーク、遊びに来たよ」
ソフィアの声だ。でもさっき聞いた声とはちがい、底抜けに明るくかわいい。
「ちょ、ソフィア、なんでくるんすか。ダメといったすよ」
ジークにもそこらへんの分別はあったらしい。急いでソフィアの前に行く。
「だって、会いたかったんだもん」
・・・完璧に分別がないのはソフィアの方だ。ん?てか、
「知り合いだったのか?」
ジークフリートは貴族でソフィアは平民だ。接点なんて、ないはずなのだが。
「そうっすよ。町を歩いていたらソフィアが襲われてたんで、助けたっす。そっから仲良くなったっす」
貴族が護衛もつけずに町を歩くとか、阿保しかしないことだ。・・・そうだ、こいつ、阿保だった。
「仲良くなったって・・・付き合ってんのか?」
ジークフリートにべったりくっついているソフィアを見ながら言う。ほんとにさっきの人と同一人物とは思えない。
「そんなわけないっすよ」
「当たり前じゃない」
二人の返事は、ピッタリとあっていたが、言っているないようは逆だった。
「・・・どっちがほんとなわけ?」
身分こそ貴族と平民で、本来なら釣り合わないはずだが、光属性なら、釣り合う。なんなら、どちらかといえばだが、ジークフリートの方が足りない。
「付き合ってないっすよ」
「付き合ってるわよ」
またもやピッタリ揃った。言ってるないようは同じだが。
「もういい。末永くお幸せに。ソフィアはきちんと教室に送っていけよ。」
「ちょ、殿下?」
ジークフリートがわたしを呼ぶけどもうどうだっていい。
「あ、一応伝えといてやる。ジークフリート、その子と身分は釣り合ってるから結婚できるぞ。それに、 入学試験、他の子のより三倍難しいの受けて合格しているから、頭はいいはずだ」
それだけ言って、二人を廊下においだしてから、教室の扉を閉めた。
後日、二人は付き合いはじめたらしいことを、風の噂できいた。・・・まあ、一目みればわかるだろうけどね。
それからまた数日たったあるひ、またソフィアが私たちの教室にやってきた。
「ジークフリート?」
「ち、違うっすよ。俺はきちんといっといたっす。令嬢らしく振る舞えって」
しかたないからソフィアの方へ向かう。すると、ソフィアは綺麗なカーテシーを見せた。
「ごきげんよう、フェリックス殿下。ところで、生徒会ってどうやって入ればよろしいのですの?」
・・・めちゃくちゃ変わっている。なんだ、このかわりようは。ははあん。なるぼど。ジークフリートと結婚するためには令嬢らしくいなくてはいけないから。そういうことだろう。でも、まだ足りない。
「ノア」
ノアにこの場を任せてみる。ノアはこういうのうまいからね。
「かしこまりました。・・・ソフィア嬢、今日も大変可愛らしくございますね。そのピンク色の髪と、ピンク色の目が大変綺麗です。」
ノアは、ソフィアに向かってお辞儀をし、うやうやしく手を取った。そうしてノアが手本を見せているというのに、ソフィアは嫌そうに顔をしかめていた。・・・はあ?わたし、いわれたことないのに!なんでありがたく受けないのよ?!内心激しく怒りながら、ソフィアに向かって微笑んだ。
「これが正しい挨拶の仕方だ。まあ、こんなには正直できなくて全然いいんだが、君ならできそうだったからね。ああ、あと、こういうのは顔をしかめないで、ありがとう存じますって受け取らねばならない。いいな?」
すこし早口になった気がするが、まあ、いいだろう。ソフィアだし。
「ご指導、ありがとうございます」
ソフィアは一瞬だけ顔をしかめたあと、綺麗にお辞儀をした。
「それで、生徒会への入り方だよね。・・・わたしについて来て」
わたし達は生徒会室へ向かった。
「簡単だよ。生徒会長である、わたしが認めればいい」
生徒会室につき、みんなが椅子に座ったのを確認してからわたしはいった。
「そうですか、では認めてください」
ソフィアは聞いてすぐにそういった。
「そういうわけにはいかないかなあ。きちんと相応しいか見極めなくてはいけないからね。君が生徒会には要りたいと望むわけは?」
わたしは余裕ぶってそういうと、ソフィアは少し考えるそぶりを見せた。そして、きっぱりと言い切る。
「ジークが生徒会にいるからです。少しでも多く彼の側にいたい」
おおう。一切の恥じらいもなくのろけやがった。ジークは、あ、照れてる。
「ですが、きちんと仕事はします。これから、令嬢らしさもみにつけます。わたしは仕事ができる、優秀な人間です。しかも光属性です」
自分で優秀だと言い切りやがった。確かにこの短期間で声だけ令嬢らしさも身につけているし、頭がいいのも確かだ。それに、今の生徒会役員は全員二年生のわたしとノアと、ジークフリートだけである。ソフィアを入れるのはいいかもしれない
「どう思う?ノア?」
ジークフリートにはきかない。どうせ、対した返事は期待できない。
「そうですね・・・私的には入れて良いと思います」
きっと、わたしと同じ考えだ。
「そうだな。ソフィア、ようこそ。生徒会へ。さっそく、この書類へサインしてくれ。放課後、基本毎日生徒会室に来てくれ」
会長らしく、格好つけていってみた。
「はい。かしこまりました」
特になにも変わらなかった。・・・はずかし。
それから、ソフィアも混ざった日常が始まった。もうソフィアは教室に来なくなった。だが、生徒会室でめちゃくちゃいちゃラブしているのにはなかなか来るものがある。一度注意したが、返事が、
「なんですか?うらやましいんですか?殿下はノア様のこと、好きですものね」
で、生徒会室で堂々と言われたものだから、もうなにも言えなくなってしまった。ぎりぎりノアにはばれなかったけど、ジークフリートにはばれて、もうこれが大変。ジークフリートの口が固いわけなんてないから、ノアにばれないようにずっと注意しておかなければならないのだ。もう、ソフィア入れなきゃよかった。でも仕事が恐ろしいほどできる。はあ、休みは増えたけど、心は全然休まらない。
「ノアぁ」
机に突っ伏したままつぶやく。ノアにぎゅうって抱きしめてもらいたい。頭撫でてほしい。あそこのバカップルみたいに!
「はい。なんでしょう・・・ところで殿下、少しその姿勢はいくらなんでも・・・」
ノアは注意しかけたが、わたしのようすを見て、そっとしといてくれた。
「殿下はいつも頑張ってくれています。たまには休んでください」
ノアはそう言ってわたしに自分のマントをかけて仕事にもどろうとした。
「ノア。好き」
わたしはノアのそでを掴んで引き止め、とっさにそう言ってしまった。
「え。」
ノアはそのまま固まってしまった。私自身も固まってしまった。・・・いやあ。言うつもりなかったのに!わたしのばか!
おそるおそるノアのようすを見ると、顔を真っ赤にしていて、こっちが困惑してしまった。
「え、ノア?」
「で、殿下、それは、どういう意味で・・・?」
ノアは片手で顔を隠していた。すごく、すごく、
「かわいい」
わたしはほぼ条件反射でそうつぶやいてしまった。そして、当然のように顔を隠している手を振りほどく。
「でん、か」
そしてそのままあごに手を添えてー
「殿下とノア?なにしてるっすか?」
ちょうどジークフリートはさっきまで集中していてやり取りを聞いてなかったのだろう。少し距離があり、机の上にある花瓶があるせいで、良く見えなかったのだろう。だが、だとしてもだ。空気を読めと言うものだ。
ノアとわたしはばっと勢いよくはなれた。・・・いつも、二人のいちゃこら見逃してやってるのにっ!
「な、なにも?」
「ああ。なにもしていない」
とっさに答えるわたしとノアに、ジークフリートは「そうっすか」と、ソフィアは「ふーん」と、対して興味なさそうにいった。それから、ソフィアは「やるじゃない」とあの時見たような不気味な笑顔でいった。
その瞬間、ぼんっとわたしの顔が真っ赤になったのが、感覚でわかった。
「ジーク。少しだけ二人きりにさせてあげましょ」
珍しくソフィアが気を利かせてくれた。少し言い方がやかましいけど。
そして、二人きりになった生徒会室で、わたしは勇気を振り絞った。・・・やけになったとも言えるけどね!
「ノア。わたしはさっき言ったように、ノアのことが好きだ。すべてが好きだ。だが、受け入れてほしいとは思っていない。伝えたかっただけだ。今まで通りに接するのは難しいかもしれないが、そうしてくれるとうれしい」
一息で言い切り、ノアの目を真剣に見つめる。ノアは、言いよどみ、少しわたしから視線をずらしてから、わたしの目を見つめ直し、口を開いた。
「殿下。それは無理です。私も、殿下をお慕いしておりますので」
はずかしそうに、ノアはそういった。わたしは、もうなにも考えられなかった。ただ、当然のようにノアに手を伸ばしてー
「たっだいまっすー。あれ?二人とも、なにしてるんすか」
ほんっとうに、空気が読めない男である。わたしは無言の無表情でジークフリートを部屋から追い出した。「なにするんすか!」という声が聞こえる気がするが気のせいだろう。
「ノア」
「はい。殿下。なんでしょう」
声をかければ、優しい声で返事がかえってくる。前と、なにも変わっていないのに、前よりも、ずっとうれしくて、ずっと幸せ。
「すっごくしあわせ。愛してる」
わたしはノアの返事を待たないで、頭に手をまわした。ノアは返事をしなかった。いや、できなかった。だけど、私もです。そう思ってるな、と実感できた。
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