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外れギフトの眼鏡参謀は、最強無敗の剣姫様をなにがなんでも助けたい !~追放された元貴族の成り上がり~【第1部完結】  作者: 優木凛々
第4章 外れギフトの眼鏡文官は、最強無敗の剣姫を助けたい

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06.定例会議


魔獣討伐の翌週。

王都の街にある「魔法書専門店グリモ」の奥にある、本だらけの埃っぽい小部屋にて。


シリルは魔法士のローブを着たぐるぐる眼鏡の老人と向き合っていた。

老人は、お茶を片手にボソボソとしゃべっている。


「それで、わし、言ったんじゃ。そりゃおかしくないか、とな。しかし店主が……」


その話を、シリルが「ふむふむ」と熱心に聞きながら、素早くメモを取っていく。


そして、老人の話が一段落すると、シリルが書いていたメモを手渡した。


「今の話をまとめたのですが、これで合っていますか?」


老人はそれを受け取って読むと、深くうなずいた。


「合っておる。間違いない」

「もしも宜しければ、ここにサインを頂きまして、この内容を公表させて頂きたいのですが……」


シリルが恐縮しながら言うと、老人がふっと笑った。


「まあ、いいじゃろうて。本来であれば守秘義務っちゅうもんがあるんじゃが、愚痴みたいなもんじゃしな」


それに、と老人が真面目な顔になった。


「あんた、あのビクトリア様の下僕なんじゃろう? 守秘義務云々の前に、一市民としては協力せねばなるまい」


シリルは内心苦笑した。

下僕ではなくて専属文官だと言いかけるが、まあどっちも似たようなものかと口を閉じる。


そして、書類にサインをしてもらい、老人を見送ると、シリルは店のカウンターに向かった。

そこにいた白髪の女店主に頭を下げる。


「ご協力ありがとうございました。本当に助かりました」


店主が、人が良さそうに笑った。


「いいよいいよ、あんたはよく来てくれるからねえ。それに、あんた、ビクトリア様の下僕なんだろう? できることは協力しないとねえ」


シリルは内心苦笑いした。

下僕の出どころはこの人だな、と思いながらお礼を言うと、魔法書店を出る。


そして、外で待っていた馬車に乗り込むと、中にはビクトリアが座っていた。

クールな顔で長い足を組んでいる。


【どうだった?】


視線と心の声でそう問われ、シリルはため息をついた。


「まあ、予想通りでした」


そうか、とビクトリアが目を伏せる。


【やはり一発殴るべきじゃないか】


という心の声が聞こえてくる。


シリルはジト目で彼女を見た。


「……言っておきますけど、殴りに行くのは絶対にダメですよ」


ビクトリアが【……分かっている】と、気まずそうに目を逸らす。




その後、2人は第2魔法騎士団本部へと戻った。

執務室に戻ると、シリルは書類の作成を始め、ビクトリアは鍛錬場に向かう。


そして、シリルが書類に没頭すること、数時間。



ゴーン、ゴーン



鐘の音が鳴り響いた。

時計を見上げると、定例会議の時間が差し迫っている。


シリルは、急いで目の前の資料を集めて紙入れに入れていると、ビクトリアが戻って来た。

水を浴びたのか、その艶やかな黒髪が少し濡れている。


シリルが立ち上がった。


「行きましょう」


ビクトリアが落ち着いた顔で、分かったという風に視線を下に向ける。


2人は本部を出ると、王宮の会議室に向かった。

到着すると、すでに人がかなり来ており、中央にある大きな丸テーブルには15人ほどが座っている。

今日は規模が少し大きいようで、リリアーナの姿も見える。


ビクトリアが入っていくと、会場がざわついた。


【生意気な小娘ももう終わりだな】

【さすがに今回はダメだろう】


という心の声が聞こえてくる。

どうやら、この場でビクトリアの責任追及をして、あわよくば全責任を彼女に取らせることにしたいらしい。


(本当にロクでもないオッサンたちだよな)


こいつらが左遷された方が絶対世の中良くなるよな、と思いながらビクトリアの後ろに立つ。


その後、静かに会議が始まった。

特に揉めることもなく、淡々と報告が進んでいく。


シリルは、いつも以上に出席者の心の声に注意を払った。

おかしなことを考える者がいないか、慎重に確認する。


そして会議が進み、最後に第2魔法騎士団の番になった、そのとき。


「あー、コホン」


突然、総務大臣ワロンが、偉そうに咳払いした。

傲慢そうな顔でビクトリアを見ると、嫌味な感じに口を開いた。


「第2魔法騎士団のことで、1つ緊急に議題に上げたいことがありましてな。先週あった魔の森での討伐の件です」


ビクトリアが冷たい目でワロンを見る。

ワロンが偉そうに腕を組んだ。


「聞きましたぞ、大きな被害が出たそうじゃないですか。団長としてどう責任を取るのか、考えを聞かせてはいただけませんかな?」

「ことによっては処分も覚悟して頂かなければなりませんな」


誰かがワロンに同調するように言う。


(来たな)


シリルは、軽く息を吐いた。


チラリと見上げてくるビクトリアにうなずいてみせると、片手で眼鏡を押し上げた。


「その件につきましては、私の方からお話させていただきます」

「ふん、まあいいが、口の利き方に気を付けることだな」


ワロンが脅すような目でシリルを見る。

面白そうな雰囲気を感じたのか、リリアーナが頬杖をついてニヤニヤした。


「言いたいことがあるみたいだね。いいよ、シリル君、自由にしゃべっていいよ。私が許可する」


シリルはジト目でリリアーナを見た。

この人絶対に面白がっているよな、と心の中で苦笑する。


(でも、今回ばかりはありがたい)


そして、彼は【頼むぞ】と言うビクトリアに、「了解しました」とつぶやくと、眼鏡を押し上げて、声を張り上げた。



「それでは、今回の遠征の被害を増大させた原因について、私の方から説明させていただきます」



会議場にざわめきが広がった。






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