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(閑話)第3王女 兼 魔法研究所所長リリアーナ


シリルが出て行ったあと、リリアーナは机に頬杖をついて座った。


(いやー、これから楽しみだ)


彼女の脳裏に浮かぶのは、ここ1カ月ほどの出来事だ。





1カ月前、彼女が魔法の実験を行っていると、副所長のライラがやってきた。


「リリアーナ様、外れギフトが出たそうです」

「へえ!」


リリアーナは実験道具を脇にやり、目を輝かせた。


「ギフトの名前は?」

「読心だそうです」

「おお、それはすごいね。20年ぶりか。もちろん生かして連れて来るんだよね?」

「はい。隷属の首輪を付けて、こちらに向かっているそうです」


リリアーナは興奮を隠せなかった。


10万人に1人に与えられるというギフト。

現在確認されているものは12種類で、「超魔力」「超記憶」「剛腕」など、多くは人間の能力を飛躍的に高めるものだ。

しかし、その中には少し異質なギフトもあった。


「読心」「誘惑」「操心」の3つの精神系ギフトだ。


これらは「外れギフト」と呼ばれ、エレシア王国では危険視されている。

理由は、100年前にこのギフトを持つ者たちが国家転覆を企て、王室を危機に陥れたからだ。

その後、国王は外れギフトを発見次第、すぐに処分してきた。


「成人の儀」は、貴重なギフトの発見を目的としているが、実際には外れギフトを見つけて処分するための意味合いが強い。


(まったく、身内ながら、愚かなことこの上ないねえ)


リリアーナは、外れギフトが非常に強力だと考えている。

たった3人で国家転覆を狙えたほどの力だ。うまく使えば国益を生み出し、その研究は新たな魔法開発に繋がると考えていた。


そのため、彼女は約5年前に『隷属の首輪』を開発した。

この首輪は「精神系ギフトを封じ、登録された命令に逆らうことができなくなる」もので、王族と指定された者以外は外せない。


その効果が証明され、外れギフト持ちを処分する制度は廃止された。


(まったく、ここまでしなければ駄目なんて、どこまで臆病なんだよ)



――そして、外れギフトが出たという知らせを受けてから5日後、

リリアーナは大神殿へ向かった。


ギフトは神に授けられるため、最初に神殿に預けられる。

王族自ら外れギフトを調査するわけにはいかないため、フードを深くかぶり、ただの魔法士として訪れた。


そこで、リリアーナは外れギフトを持つ青年シリルを見て驚いた。


(今までの外れギフト持ちとはずいぶん違うね)


過去の2人の外れギフト持ちは、どちらも大泣きして運命を呪っていた。

しかし、この青年は落ち着いていた。

頭の回転も速く、受け答えも的確で、調査はスムーズに進んだ。


(もしかすると、国賊ビスマスもこんな感じだったのかもしれない)




そして、分析を終えたリリアーナは、驚くべき結果を得た。


(すごいな、まさに国賊ビスマスだよ)


青年は、触れなければ能力が発動しないという定説を覆し、半径2~3m以内の人間の心を読める能力を持っていた。


(この青年が能力を開花させたら、どうなるんだろう)


研究者としての好奇心が刺激された一方で、能力を開花させるのは難しいだろうと考えた。

開花させるには、少なくとも半年は首輪なしで生活する必要があるからだ。


(まあ、さすがにそれは無理だよね)


それでも、この青年は研究対象として非常に興味深い存在であり、リリアーナは彼の能力を少し改ざんして報告した。

国賊ビスマスと同じだと報告すれば、彼は処分されかねないからだ。


その後、シリルの処遇はリリアーナの手を離れ、王宮の上層部で議論が始まった。

シリルの能力を利用すべきだと主張する者がいれば、危険だと反対する者もおり、なかなか結論が出ないらしい。


(くだらないなあ)


そんな中、大きな事件が発生した。

国の守護者である第2魔法騎士団の団長、ビクトリアが呪いにかけられ、意思表示ができなくなってしまったのだ。


王宮は急いで魔法研究所に解呪を命じたが、未知の呪いを解くのは非常に困難だった。


(せめて術者が分かれば…)


その時、リリアーナは閃いた。

ビクトリアの近くには、生活習慣を知る共犯者がいるはずだ。

その共犯者を探し出せば、解呪の手がかりが得られる。


(彼のギフトが最適だ!)


シリルの「読心」の能力があれば、共犯者を見つけることがきっとできる。

そして、もしシリルがこの仕事を引き受ければ、首輪を外して生活することになる。

そうすれば、彼の能力が開花するかもしれない。


「これだ! これしかない!」


リリアーナは素早く行動に移した。

ビクトリアを赤い帽子の存在で納得させ、同じ方法で王宮の長老たちを説得した。

かなり強引に王族パワーを使って物事を進めていく。


そして、彼女はシリルの管理権を手に入れると、彼を呼び出した。





彼の嫌そうな顔を思い出し、彼女はクスクスを笑った。


(まあ、これも国の平和と魔法の発展のためだから、仕方ないよね)


彼女はシリルが消えた扉を見ながら、笑みを浮かべた。



「さてさて、これから楽しみだ」





本日はここまで&第2章終了です。

あらすじまで一気に投稿しました。お付き合いいただきありがとうございます!


良かったらブクマしていただけると嬉しいです(*'▽')


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― 新着の感想 ―
ここまで一気読みでした! 面白いです! 続きも楽しみにしてます!
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