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祝いの鐘が鳴り終わるまでに  作者: 蔵前
全てを破壊したいほど愛している
5/9

大聖堂の地下通路は真っ暗のはずなのに明るい。

それは発光性の苔が石壁の隙間から生えているからだ。

いいや、明るさを得るために計算してそこかしこに埋まっているのだ。


なぜならば、私達が歩くそこは王国が出来る前からある地下神殿でもあり、一般人には知られていない秘密の場所であるからだ。


私達の目的地である大聖堂の真下にあたる場所は、心得無しを遠ざけるようにして迷路状となった通路で囲まれ守られている場所なのである。


地下迷宮においての中心となる広間が、目指す最終地点だ。広間を立体的な地図にすれば、広々としたがらんどうが描き出されるだろう。だが実は空っぽなのではない。床には太古には生贄の必要な召喚術だって行っていたような大魔方陣が刻まれている。


つまり、そこが破壊されれば、実はこの国自体が終わるんじゃないか、そんな場所でもある。


そんな所に爆弾を仕掛けた、とは。


がらんどうだから天井が崩壊すれば大聖堂自体が落ちてくる。

なんて恐ろしいことを計画したのか。

それよりも、そんな事が出来るぐらいの術式を刻み込んだ術具を作り出すなんて、本気で危険な男である。


「後学のために教えてくれ。お前ひとりだったら、あれをどうやって壊すつもりだった? ちょっと興味あるっていうか、お前が解除してくれ」


天井にある円形の無駄に大きなものを見上げている私は、私を揶揄うイアンの声などどうでも良かった。

盗み見ていた私が知っているものは違うものだった。

イアンに見せたイアンが設置したモノは、全く違うものだった。


「私が見て知ってたのは、あなたが作ったあの四角い奴で、……うそ」


「あれは単なるサインだよ。俺がやったって誰もがわかるためのもの。学園に仕掛けたのは不発弾で、ここが破壊されればここに残った同じもので確実に俺だとわかる」


「だから、簡単に解除できたのね」


「そうか、俺はお前を買いかぶり過ぎたか。ほっときゃ、私できな~いで、きっとお前は逃げていたと言うのに、俺は自分の浅はかさが憎いよ」


「に、逃げませんでした!!私はこんなどでかいのがぶら下っているなんて知らなかったけど、絶対にやってみせます」


「ハハハ。なんだか夜に聞きたいセリフだが、まあとりあえず、やって見せろ」


私はとりあえずイアンを睨んでから頭上を見上げ直す。

両手で抱えられるぐらいの大きさに見えるが、それは単に遠近法だ。

恐らく、直径が馬車一台分の大きさぐらいはあるはずのものである。


ほんと、どうしよう。

まず、天井まで自分を浮遊させるか、あれを衝撃を加えないようにして下に下ろすかして、自分の目の前に持って来ないといけない。


ハハハハ、どんな魔法で?


私の魔術も命も、今は他から取り出せないように硬化させている。

ガブリエラの体や口を動かせるのは魔力など関係なく、ガブリエラが協力してくれるから私の意識のまま動かせているだけなのだ。で、私の中のガブリエルさんは、そろそろ私への協力を放棄して逃げたいな~とメチャクチャ脅えている。


確かに、この子を巻き添えには絶対に出来ない。


ブイン。


魔法陣が展開する音に私は反射的に顔を向けた。

イアンが転移魔法陣を紡ぎ出していた。

青白い光を発する魔法陣は、二人乗るには小型すぎる。


「乗れ」

「やだ」


イアンと私は同時に言葉を発していた。

お前の考えることはお見通しだ。


「お前にはあれは破壊できない。だろ?」


「では先輩、お願いします。後輩が期待を込めてますんでお願いします」


「嫌だ」


イアンは、やっぱり、私のお見通し通りの即答だった。

わかってたけどね。

私、わかってたんだ。

私の生命エネルギーがイアンに注がれる度に、とっても彼が喜んでいたって。彼のその感覚は感じられていたんだ。エネルギーのやり取りって、精神を繋ぐ、そんな所もあるからね。


だから私は自分の責め苦に耐えてきた。

イアンがその力を聖女(シレーナ)と思い違いしていても、私はその瞬間だけは彼と繋がっていられたから。


そのぐらいイアンがシレーナを愛していることは知っている。

私だって仲間だったのだもの。

仲良しだった女二人に男四人の仲良し組の一人だったのだもの。

誰一人私をその仲間と認めていなかったみたいだけど。

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