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第7話:次のイベント

イベントが終わって二週間後に再び、皆でファミレスに集合していた。写真を配るためである。この頃はまだフィルムカメラの時代なので、写真は印刷して配る必要があるのだ。それを口実に皆で集まれるともいう。今の時代だと、こういう口実は使えないのでどうしているのだろうか?


「なかなかキレイに撮れてるじゃん」

「モデルがよかったからじゃないか」


ここで機材が良かったとは言ってはいけない。ここは社会人になってからの経験が生かされているはずだ。


「学年一位の歯の浮くようなセリフもあったしな」

「忘れてくれ」


今になって思うと、キレイな風景を見てすっかり浮かれていたのかもしれない。タイムリープして黒歴史を作るとかなにをやっているんだか。


しばらく、キレイだったとか夜行バスは大変だったとか、イベントの感想を話合っていたのだが、


「せっかくだから、このグループで今後も集まらないか?」

「せっかく、みんな仲良くなれたし」

「また別のイベントやれたら楽しいんじゃないかな」


と池田、緒方、小野が提案してきた。なるほど、作戦会議にはここでの提案まで含まれていたんだな。


「どうする?」


と清水さんが、大塚さん、河合さん、本山さんに相談すると、


「それなら勉強会をやってほしい」


と本山さんが言ってきた。本山さんは割とおとなしい感じで、こういうところではあまり意見を主張してこなかったと思うのだが、今回に関してはかなりやる気のようだ。


「土曜日の午後にあつまって、一週間分の勉強会をやるというのはどう?」

「それなら、まとめにもなっていいんじゃないかな」


どうやら大塚さんも河合さんも乗り気のようで、土曜日の午後に集まって勉強会をすることになった。


□◇□


勉強会のおかげで女子と交流をもてたことで、男子クラスの悲惨な状況を脱することができた俺たちは、次なる企画を検討していた。夏休みといえば、花火か海水浴あたりが小説などの定番のような気がするが、実際のところ水着というのはかなりハードルが高いような気もしていた。


「次の企画でいい案ないかなぁ」

「カラオケとかボーリングとか?」

「来てくれるかもしれないけど、最初の女子側のリクエストは勉強会だったからなぁ」

「この集まりも尾瀬のあの凄い景色から始まっているんだから、また別の凄いところに行くとか」

「そんな簡単に行けるところにはないだろう」

「だよなぁ」


三人寄れば文殊の知恵とはいうけれども、男4人で相談してもなかなかいい案はうかばなかった。確かに社会人になって登山でいろいろなところには行ったので、すごい景色が見られる場所はいくつか知っている。ただ場所が北海道だったり東北だったりと、高校生にはハードルが高すぎるのだ。


「そういえば研修旅行っていつだっけ」

「たしか10月の二週目あたりだったと思う」


通常の高校は、高校三年に修学旅行があると思うのだが、この高校では高三の秋は受験勉強で旅行に行っている場合ではないはずということで、なんと高二で修学旅行に行くようになっていた。ご丁寧にも名前を研修旅行に変えて。まぁこの名前については、いろいろな大人の事情があるのだろう。ただ研修という名がつくだけあって、コースが選べたり場合によっては学生からの提案も可能ではあった。


他に思いつく企画もなかったので、研修旅行で同じグループにならないか相談してみることになった。


□◇□


夏休みが近づいた土曜日の午後、いつもどおりに勉強会をやったあとに池田から提案することになった。


「尾瀬にいってから次のイベントを企画できていないんだけど、研修旅行で同じグループになるというのはどう?」

「いいけど、京都コースにしても能登コースにしても別クラスとグループを組むのは無理があるんじゃないかな」


大塚さんは一応賛成はしてくれたが、確かに別クラスでグループというのも、さすがに不自然すぎるかもしれない。


「同じコースに行くクラスの友達からグループ参加をお願いされると断りにくいよね」


陽キャの河合さんあたりは友達も多そうだから確かに無理かもしれない。


「そういえば、研修旅行は学生からの提案も可能だったと思うけど、オリジナルコースなら行けるんじゃないの」

「確かにオリジナルコースなら他の友達はいないから、このグループというのが自然になるね」


清水さんからの思わぬ提案から、一筋の可能性が生まれてきた。


「時期はいつだったけ?」

「研修旅行は10月の二週目あたりだったと思う」

「どこかいいところないか向井」


そこで俺にふるのか。それならそうと事前に行ってくれれば…でも、そうか10月上旬といえばとても有名な場所があった。


「そういえば紅葉で有名なところならあるね」

「紅葉で有名といえば、京都か日光ってこと?」

「確かに一般的に紅葉の名所というと京都か日光あたりになると思うけど、また別の日本一の紅葉の場所があるんだよ」

「ひょっとして、また山?」

「そう。北アルプスに涸沢カールというところがあって、ここは登山をやっている人の中では日本一の紅葉が見られる場所として知られているね」


まぁ登山をやっている人に紅葉日本一を聞くと、いろいろな場所がでてくるとは思うけど、涸沢カールが日本有数の紅葉の名所という意見では一致するんじゃないかな。


「なんか凄そうだから行ってみたい気もするけど、どんな感じになるのか詳しい情報がほしいかな?」

「そうだね。尾瀬もすごかったけど、今回も日本一というぐらいだから期待できそうだよね」

「北アルプスといえば本格的登山になりそうだから不安もあるけど、行ってみたいのは確かだね」


大塚さん、本山さん、河合さんともにかなり興味はあるみたいだ。ただ尾瀬とちがって本格的な登山になるので、もっと詳細な説明は必要だよな。


「学校への申請も必要だし、情報をまとめた資料を作っておくよ」

「向井、ありがとう。知っているのはおまえだけだから、また頼ってしまうけどよろしくな」

「学校からOKがでるかわからないけど、とりあえずやってみるよ」


□◇□


今回は研修旅行を使ったイベントで高校への申請も必要ということで、社会人になってからの資料作成スキルをいかんなく発揮して完璧な資料を作成した。おそらく先生が作るよりもできが良かったのではないだろうか。そのおかげか、学校への申請はいくつかの質疑を経てOKをもらうことができた。まぁ先生も、まさか高校生の俺が作ったとは思っていなかったようだが、逆に親のフォローを完全に受けていると勘違いしてくれたことが良かったのかもしれない。

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