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第5話:悲惨な男子クラス

高校二年に進学した。この高校では文系と理系で高二からクラス分けが行われる。この当時、理系に進む女子は非常に少なく、文系のクラスはすべて共学だったのだが、理系のクラスは一クラスを除いて男のみのクラスになっていた。俺は理系選択だったので、当然男子クラスである。

女の子がいないので男子クラスは全く持ってクラスとしてのまとまりがなかった。高二では文化祭があるのだが、全く盛り上がらなかった記憶がある。いや男子高校ではクラスのまとまりがあったぞという声もあるかもしれないが、共学の中の男子クラスはなまじっか文系の共学クラスが目に入るだけにやってられないのだ。理系は将来的には自動車産業、電気産業や建築など日本をささえる仕事につくはずなのだが、高二から男子のみのクラスになるとか、ひどい仕打ちである。こんなことでは理系を希望する男がいなくなって日本の産業は衰退してしまうのではないだろうか?


ボート部3人組も理系選択だったのだが、二年になってしばらくして男子クラスの悲惨さに気づいたようであった。


「俺、この一か月女子と一言もしゃべってねーぞ」

「そりゃそうだろ、緒方。男子クラスなんだから」

「なんで俺、ボート部なんかにはいったんだろう」

「中学と同じバスケ部なら、部活では女子と一緒だったのにな」


そう、ボート部には女子がいないのだ。二周目なんだから本山さんと同じ弓道部にはいっていたら、それこそタイムリープ定番のストーリーになっていたかもしれないのに。タイムリープしたときには、すでに部活をボート部にしてしまっていたあたり、そう簡単にはうまくいかせないぞという神の意図のようなものを感じる。


「向井、なんか女子とのイベント考えてくれよ」

「なんで俺なんだ、モテる池田に頼めよ」

「同じクラスのときには話をしていた女の子はいたけど、クラスが変わってからはさっぱりなんだよ」

「向井なら河合さんとか清水さんとよく話をしていただろう」

「「「なんとか俺たちに女子の恵みを」」」

「いや絶対に池田には恵みは不要だと思うんだが。はぁ…まぁダメ元で清水さんに相談してみるよ。」


他人の世話をしていられるような状態でもないのだが、クラスの相談をよく受けていた清水さんに相談してみることにした。


「清水さん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

「いいけど、なにかあったの?」

「俺とか緒方とか男子クラスになったのは知っていると思うけど、みんな女子と話をする機会がまったくなくなってしまったんだよ。」

「なるほど?」

「それで男子4人、女子4人でイベントを企画できないかな?と思って。悲惨な俺たちに女子と時間を過ごせるチャンスをお願い。」

「ふ~ん。それで誰が希望?」

「いや、メンバーは清水さんに任せるよ。といっても男は清水さんも知っているボート部3人組なので、一年のときに同じクラスだった女子がいいかな」

「それで、企画は何を考えているの?カラオケとか?」

「ちょっとしたお出かけを考えている。」

「時期は?」

「すぐには無理だろうし、中間テスト前というわけにはいかないから6月末ぐらいかな?」

「わかった、何人かにあたってみるね」

「ほんとに!バッサリ断られるかとおもっていたから助かるよ」

「イベント企画してくれるなら、OKする子もいるんじゃないかな。面白そうだし」


ダメ元だったんだが、可能性がでてきたな。これは企画をがんばらないと。


□◇□


清水さんから前向きな回答があったことから、男4人で企画会議をすることになった。


「向井、ありがとうな。これで砂漠のような日々から抜け出せるよ」

「いや、まだOKがでているわけじゃないから」

「誰がくるかわからないけど、企画が重要ってことだよな」

「とりあえず、おでかけということにはしてある」

「カラオケとかだと、単にグループで遊んだというだけで印象に残らないだろうしな」


まぁタイムリープして凄いカラオケがうまいとかのニューゲームだったらカラオケでも良かったんだが、社会人になってからも音痴のままだったのだ。


「とにかく、それぞれで案を出してみよう」

「そしたら俺は、東京ネズミランドだな。定番中の定番だし」


池田案は大人気のリゾートテーマパークで、もはや説明不要だろう。おそらく女子のウケもいいに違いない。さすがイケメンだけあるな。


「じゃぁ、俺はフラワーパークで。やっぱ女の子は花好きだと思うし」


緒方案はフラワーパークだった。確かに花畑というのも定番かもしれない。


「小野案は?」

「SLに乗り行くのはどうかな?」

「鉄道旅行とはまたマニアックな。」

「もう少し遅い時期なら青春チケットという手もあったんだけどな。」

「いやそれはマニアックすぎるだろう」


小野に言わせると、日本ではまだSLに乗れる場所がいくつも残っているらしい。さすがに鈍行列車で一日旅行するのはマニアックすぎると思う。日程がずれていてよかった。


「最後に向井の案は?」

「俺は尾瀬だな」

「「「尾瀬?」」」


□◇□


しばらく後にイベントの打ち合わせということで、皆でファミレスに集まることになった。


「イベント企画に参加してくれてありがとう。案を皆で考えてきたので、どれがいいか教えてほしい」


清水さんの声掛けに賛同した女子陣は、河合さん、大塚さんにもう一人は本山さんだった。清水さんには、今後足を向けて寝れないな。


「舞から学年一位達がイベントを企画していると聞いた時にはびっくりしたよ」


二年になって男子クラスの悲惨さに気づいたからです。とは言えないので、それらしい崇高な理由にしておく。


「せっかくの高校生だし、青春のイベントの一つ企画してみたくて」

「いや、男子クラスが悲惨だからって清水に泣きついたと聞いているけど」

「「「ぐっ」」」


あっさり、河合さんに看破されてしまった。


「とにかくだ、順番に案を説明しておこうと思う。トップバッターは池田からよろしく」

「僕の案は東京ネズミランドだよ。ここなら高校生のイベントとしてはベストな場所だと思う」

「うん、東京ネズミランドは行ってみたいかも」


大塚さんはネズミランドには前向きのようだ。まぁここを嫌いな人はいないに違いない。


「次は俺ね。フラワーパークなんてどうだろう?」

「行く頃は何が見られるの?」


清水さんから思いがけない指摘が入る。フラワーパークなら年中花が見られると思っていた俺たちは冷や汗をかいていた。


「6月末だとバラやアジサイも終わりごろだよね」

「ルピナスやネモフィラも4月から5月ぐらいだしね」


本山さんと大塚さんの指摘もあってフラワーパーク案はかなり劣勢になった。旗色が悪くなってきたが、次は小野が説明することに。


「SLを乗りに行こうかと思って。まだ乗れるところがいくつかあるんだよ」

「SLってあの煙を出す奴?」

「まぁそうだね。」

「見たことも乗ったこともないね。」


意外と受けはいいようだ。


「でも鉄道旅行だと座ってばかりだよね」

「もう少し体を動かしたいかな」


清水さんや河合さんはどちらかというと体を動かす派らしい。


「最後は学年一位だね」


河合さんにはまだそのあだ名を続けるのか?と言いたかったが、話がずれてしまうので案の説明をすることにする。


「尾瀬に行くのはどうかな?」

「水芭蕉で有名な?」

「そうだけど、6月末だと水芭蕉は終わっていて、別の植物だね。」

「なにが見られるの?」

「ワタスゲが一面に見られるんだ。実際には花じゃなくて、花が咲いた後に綿毛のようなホワホワした白い毛玉のようなものを付けるんだよね。」

「聞いたことないなぁ」

「尾瀬といっても有名な尾瀬ケ原ではなくて、尾瀬沼の方だからあまり知られてないかも」

「なんでそんなところを知っているの?」


本山さんから鋭い指摘が入るが、ここで社会人になってから登山をやっていたからとは答えられないので


「以前に家族で行ったことがあるんだ」


とごまかしておく。幸いにも、これ以上の追求はなく他の話題に移ってくれた。


「尾瀬って登山のイメージがあるけど、大丈夫かな?」

「高低差はあまりないし、木道が整備されているから大丈夫。ただ尾瀬は遠いので前日に夜行バスで向かう必要があるから、イベントとしてはかなりハードになるかな。距離にすると7kmぐらい歩くし。」


ちょっと高校生にはハードな企画のような気もするが、社会人のときに行ったことがあるので、大丈夫なはずだ。


「とりあえず男子はドリンクバーに行ってくるので、女子同士で相談してみていいよ」


ドリンクバーで少し時間をつぶしたところで清水さんから合図があったので、席に戻ることにする。


「話し合ったけど、尾瀬に行ってみたいかな。このグループじゃないと行けない場所のようだし、それでいてすごくキレイみたいだし」

「けっこうハードだけど大丈夫?」

「4人とも運動部で鍛えているし大丈夫だよ。」


女の子だと夜行バスとか難色を示すかと思ったんだが、なかなかに行動派みたいだな。その後に日程などの話合いをして解散になった。


翌日に男4人で再び集まって作戦会議である。


「向井、俺らは尾瀬のことは全然わからないんだが、計画は任せていいのか?」

「段取りはこちらでやるから心配しなくていい。当日の荷物運びだけはよろしく」


高低差があまりないハイキングといっても水などは十分に持っていく必要がある。女子にあまりに荷物を持たせるわけにはいかないし。


「あと昼食は俺の方で用意するよ。夜行バスだと準備できないだろうし」

「助かるけど、何を用意するんだ?」

「サンドイッチを焼いたやつだな」

「サンドイッチを焼くのか?」

「ひと手間いれると美味しく感じるんだ」


「女子との旅行なんて緊張するな」

「池田はモテるんだから、慣れているだろが」

「いや、こんな大がかりなイベントはなかなかないだろ」

「確かに、よく女子もOKしてくれたよな」

「清水さんには感謝だな。」


普通なら断られて終わりだと思うのだが、清水さんのおかげとしかいいようがないな。


「向井、大塚さんが来てくれてよかったな?」


突然、小野がわけわからないことを言い始める。


「なぜ、そこに大塚さんがでてくるんだ?」

「だってお前、1年のときの夏に大塚さんに振られただろう?」


そういえば、土屋のせいでそういうことになっていたんだった。


「いや、それもう忘れていいから」

「大丈夫、俺たちに任せておけよ。それで池田は誰にアプローチするんだ?」

「そうだなぁ」


3人組はその後は誰がいいのか?を話合っていた。作戦会議ってそれかよ。


そして中間テストも終わった6月末にイベントの日がやってきた。

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