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第2話:放課後の英語トレーニング

タイムリープしても好きだった女の子とラブラブになりませんでした…という結末で元に戻るかと思ったのだが、その後も二周目の高校生活は続いていた。というわけで高校生としての務めを果たさなければならない。学生といえば勉学が本業である。恋愛については二周目なのにうまくいっていないが、勉学についてはさすがにアドバンテージがある。もちろんアラフォーの頃には高校時代に勉強したことは、ほとんど忘れてしまっていたが、それでももう一度読み返してみれば、いろいろと思い出すことも多いし、その時代にはわからなかった背景や相互のつながりもわかる。なにより英語については、社会人になってから英会話スクールにずっと通ったし、さらには海外出張でネイティブ同士の英語の会議にも参加して相当に鍛えられた。まぁ同行者に言わせると、最初の頃の俺の英語はボロボロだったらしいが。


一周目では根本的に勉強は嫌なものだったが、今は違う。勉強の大切さは社会人になってから痛感したのだ。だから勉強には本気で取り組んだ。そう、もうすぐ中間テストが実施されるのだ。


□◇□


中間テストが終わって、数日後のホームルームで、教壇に立つ小太りな先生からテスト結果の連絡があった。


「中間テストの結果がでたぞ。後で上位者は廊下に掲示されるので見てみるといい。上位に入れなかった者も、期末テストでは入れるように頑張るように」


この高校は進学校ということもあってか、競争を奨励するようなところがあって、成績上位者を廊下に張り出したり、科目別の優秀者についても教室の後ろに掲示したりしていた。今の時代ではこのようなことはできないらしいが。


「ちなみに学年トップはこのクラスからだ。向井よくやったな。数学、物理、化学、英語がすべて満点だ。国語と地理、歴史もほとんど満点に近い点数だった。」


周囲からおーという声があがる。そう、勉強での学年一位はタイムリープものの小説では定番だ。ここから俺の無双が始まるのか?


「おまえ、実はすごい奴だったんだな」

「実はって、その前はどういうイメージだったんだ?」

「突然ホームルームの時間に寝てたかと思えば雷と叫んだり、クラスの女の子にガチガチになりながら話しかける変な奴」


ぐっ。否定できないのがつらい。どうやら無双どころか、クラスでの評価は低めだったらしい。


「でも四教科で満点ってすごいよね」


ここで隣に座っている女の子、大塚さんが珍しく話に入ってきた。

大塚おおつか ゆい。さらっとした髪が肩ぐらいまである、かわいいというよりは美人な感じの女の子である。卓球部に所属しているので運動もかなりできる方で、好意を寄せる男も多かったはず。これまでほとんど隣に座っているにもかかわらず、話をしたことがなかった。


「今回はかなり勉学に打ち込んだからな」


何もしなくてもテストの点がよかったら、天才になってしまうので、ここは勉強を頑張ったと言っておく。

放課後の部活に行くときには本山さんからも話しかけてくれた。


「学年一位ってすごいね。こんど勉強教えてくれる?」

「喜んで」


ついどこかの居酒屋のような返事をしてしまったが、ここからタイムリープの定番ストーリーに復活できるのではないだろうか、と思うとついガッツポーズをしてしまうのであった。


□◇□


実際のテスト結果が返されたある日の放課後、いつも通りにボート部三人組が席にやってきたが、池田は隣の大塚さんの方を見ているようだ。どうやら大塚さんはテスト結果を見て渋い表情をしているようにみえる。


「大塚さん、テスト結果良くなかったの?」

「英語が好きなんだけど、なかなか点が取れないんだよね」

「具体的に、どのあたりが苦手なの?」

「リスニングかな?最初に聞かされる長い会話についていけなくて」


確かにリスニングテストでは、最初に長い英会話を聞いてから回答することになるので、最初の段階で会話についていけなくなるとほとんど点がとれない。自分も一周目ではリスニングが苦手だった。


「リスニングというと、ラジオの英語番組を聞くとか?」

「試してはいるんだけど、なかなか集中力が続かなくて」


そういえば、自分もラジオとかCDとかいろいろと試したことを思いだす。最終的にリスニングができるようになったのは、海外出張の会議へ参加したことだった。やっぱり仕事となると集中力が違うのだと思う。


「それなら放課後に俺たちと大塚さんでリスニングのトレーニングを一緒にやろうか?15分ぐらいなら大丈夫だったりする?」


このあたり、スムーズに勉強会の流れにもっていけるところがさすが池田だな。イケメンだけのことはある。でも俺たちって自分も含まれているのか?


「すぐに部活にいかなきゃいけないわけじゃないから大丈夫だけど、いいの?」

「15分だと時間的には短いけど、毎日やればかなり効果があるんじゃないかな?」

「それなら、ぜひともお願いしたい。英語が話せるようになりたいし」

「じゃぁ明日からやろう」


まぁ皆で勉強するならいいかと、俺も合意しておいた。


□◇□


その翌日の放課後、早速英語のトレーニングとなったのだが。


「悪い向井。他の女の子からも勉強を教えてほしいと言われているので、大塚さんの方はお願いね」


なんと池田のいきなりの裏切りである。これだからイケメンは。


まぁ一人いなくなっても緒方と小野もいるしと思ったのもつかの間、なんと二人とも英語を教えられるほど得意じゃないのでと言いながら部活に行ってしまった。


「なんかごめんね。残念だけど無理しなくていいよ」


申し訳なさそうに大塚さんが謝ってくるが、大塚さんに非があるわけではない。せっかく英語上達のキッカケをここでなくしたら、それは大塚さんの将来につながるマイナスになってしまう。大人として(今は高校生だが)それは見過ごせない。


「いや大丈夫。やると言ったんだからちゃんとやろう。大塚さんもいいよね」

「本当にいいの?教えてくれるのなら助かるけど」

「このトレーニングは絶対にやるべきだと思う」

「ありがとう。」


申し訳なさそうな表情から、一転笑顔に切り替わった。そうだよ、高校生はこうじゃなくちゃ。


それから毎日、放課後の15分だけ大塚さんと一緒に英語のトレーニングを続けた。英語のトレーニングは人それぞれに向き不向きあるとは思うが、社会人になっていろいろと試した中で、特に効果があったと思うところをトレーニングに組み入れた。最初のうちは、二人で英会話をしていたこともありクラスでも目立っていたようだったが、続けているうちにいつものことと認識されるようになっていった。


「お前ら、ずいぶんと真剣に英語の勉強をしているね」


トレーニングが終わったころに、裏切り者の池田が話かけてきた。他の女の子との勉強会はどうなったんだ?


「そりゃ集中しないと上達しないからな」

「すごい本格的というか、完全に英会話スクールのレベルじゃないのか?」


まぁ事前にやる内容とかも考えてきてあるからね。社会人になってから通った英会話スクールでやったことも参考にしているし。


「うん、なんかすごい上達している気がするよ」


それは良かったと言いながら池田は部活に向かった。ドタキャンしただけに、少し気になっていたのかもしれない。


「なんか、わたしのためにここまでしてくれて申し訳ないというか」

「気にしなくてもいいよ。自分のためにもなっているし。でも、英語ができれば、海外との仕事ができるようになったりするし、ここで頑張っておいた方がいいと思う」


自分も社会人になって英語はかなり勉強した。そのかいあって海外との仕事をいくつか担当することができた。やっぱり海外との仕事は大変だったけど、そこで得られる経験や刺激はとても大きかったのを覚えている。まぁ海外出張といえばビジネスクラスと思っていたところに、平社員はエコノミーと知った時にはがっかりしたが。


「なんか…高校生なのに、もう働いたことがあるような体験談だね」


思わず自分の体験を力説してしまったが、いまは高校生だった。


「あ~。これは親戚の人から聞いた話ね。まぁとにかくがんばろう。」

「そうだね」


再び大塚さんとの英語トレーニングを続けるのであった。


□◇□


期末テストが近づいた放課後、部活に行こうとしたところで本山さんとすれ違う。


「本山さん、期末テストも近いし勉強会でもやらない?」


と声をかけてみたものの


「大塚さんと毎日勉強しているみたいだし、遠慮しておくよ」


といって去っていった。あれ?またダメになっているような。


「唯と二人で毎日放課後に勉強していれば、普通は他の人は遠慮するでしょう」


と後ろから清水さんが声をかけてくる。清水しみず まい、背は高めでスラっとした体形のどちらかというとかっこいい雰囲気の女の子だ。皆から頼られる存在で、多くのクラスメートから相談を受けていたはず。


「あー。そう言われてみればそうかもしれない」

「学年一位なのに、変なところで抜けているよね。どうするの?放課後の唯との勉強会やめる?」

「いや続けるよ。ここでやめたら大塚さんのためにならないし」

「いいの?茜に誤解されたままになりそうだけど」

「ここでやめる方が後になって失望されるんじゃないかな」

「まぁ唯のためには続けてもらった方がいいだろうけど」


とにかく中途半端にやめるのだけは避けたかった俺は、その後も期末テストまで放課後の英語トレーニングを続けた。


大塚さんは期末テストの英語の上位得点者に名を連ねたのだった。

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