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最終話:タイムリープの終わり

卒業前に最後に8人で集まることになった。勉強会の成果があったのか、8人とも第一志望の大学に合格できたのだ。緒方は一周目では油断していたからなのか、まさかの第一志望不合格だったので、とにかく油断しないように言っておいたのが良かったかもしれない。


「みんな、第一志望合格おめでとう」

「「「乾杯!」」」


「こうやって皆で会うのも久しぶりだね。」

「高三になってからは集まらなくなっていたから、一年ぶりぐらいだよね」

「高二のときは最高に楽しかったよね」

「あのイベントは凄かったものね」


「俺らは男子クラスで悲惨な状態だったから、みんな救世主みたいだったよ」

「あの勉強会はオアシスだったよな」

「作戦会議とかがんばったよな」


「その作戦会議って何よ?」

「小野が清水さんに近づくためにだな」

「緒方と池田だってそれぞれ狙ってたじゃないか」

「そんなことをやっていたんだ」


イベントのときの思い出話や、これから通う大学の話などいろいろな話をした。


「またこうやって集まれるといいね」

「いくらでも会えるだろ、幹事の二人がつきあっているんだし」


すっかり小野と清水さんは、このグループの幹事に定着していた。まぁ付き合っているんだから当然だよね。


「「「それじゃ、また!」」」


集まりも終わって、さよならの挨拶をしたあとに清水さんから話しかけられた。


「向井は結局は茜と付き合わなかったんだって?」

「清水さんの後押しもあって、最後にいろいろと話せるようになったし、それで十分だよ」

「言えばOKだったと思うんだけどな」

「どうだろう?それはもうわからないけど、これから大学の生活が始まるのに、足枷にはなりたくなかったから。いや違うな、せっかく付き合えたのに大学に行って別れてしまったらと思うと怖かったという方が正しいかも」

「その考えすぎなところが、ダメのような気もするんだけどね」


一周目の大学のときには、高校からの彼女や彼氏がいた仲間はかなりいた。でも結局はすべて分かれて新しい人と付き合っていた。それを知っているから、どうしても大学に行ったら別れてしまうのでは?という怖さもあった。確かに清水さんのいう「考えすぎ」なのかもしれないが。


□◇□


卒業式も終わり、教室で卒業証書をもらえば高校時代も終わりである。


結局、一周目も二周目もどちらも高校時代で本山さんとはつきあえずに終わってしまった。一周目のときには勇気がなかったというのもあったような気がするが、二周目も「好き」までは言えたが「付き合って」までは言えなかった。付き合うところまで行くには、俺は一体何周必要なのだろうか?


いや、でもこれからは大学時代だ。今度こそ二周目のアドバンテージを活かして彼女をつくらねば。と考えつつ校門をでたところで俺は意識を失った。


□◇□


目を覚ますとベッドが並ぶ部屋の中だった。校門を出たところで意識を失ったような気がしたので保健室かと思ったが、これだけのベッドが並んでいるのなら、これはどうみても病院としか思えない。なにか病気にでもかかったのか?と思っていると看護婦らしき人がきた。


「向井さん、気が付いたんですね。説明すると、向井さんは登山中に落雷にあって、ここに運ばれてきました。幸い直撃ではなかったようで、やけどなどもなかったようです」


登山中に落雷ということは、俺は元の時間に戻ってきたということか。つまりタイムリープは終わったのか。あれ?これから大学生活編になるんじゃなかったのか?なんでタイムリープが終わってしまったんだ?


そうか、高校時代に戻りたいと願ったので、高校時代が終わったところで戻ってきてしまうのか…いや、そんな言葉尻を捕らえたタイムリープにするなよ!こんなのはタイムリープの定番にはないよ。


頭を抱えてうなっていると、


「大丈夫ですか?頭に違和感とかがあるのでしょうか?」

「あ~。いえ大丈夫です。定番にない設定だっただけです」

「はぁ。とりあえず意識も戻られたみたいなので奥さんをお呼びしますね」

「奥さん?」


しばらくして部屋にはいってきた女性は本山さんだった。すっかり大人の女性になったけど、一目で本山さんとわかる。


「本山さんだよね。久しぶり。20年ぶりぐらいかな?」


すると本山さんは凄い驚いた表情になって


「ひょっとしてタイムリープから戻ってきたの?」


と聞いてきた。あれ?なんでタイムリープのことを知っているんだ?これは二周目の世界なのか?一周目のあの落雷のときに戻ったんじゃないのか?


「あれ?タイムリープを知っているってことは二周目の本山さんってこと?」

「ひょっとして、これまでのこと覚えていないの?」


本山さんに言われて、過去のことを思い出そうとしてみる。そうすると、高校を卒業してからのことが自分の体験、記憶として流れ込んできた。


「なんか自分の記憶が今流れ込んできたよ。えーと、高校を卒業して大学に行ったと。」

「それで」

「本山さんとも時折連絡していたけど、大学二年ぐらいのところで本山さんに彼氏ができて…」


一周目ではここであきらめていたところだ。だが二周目の俺というか、タイムリープが終わって残された俺は、どうやらその後も諦めなかったらしい。


「でも諦めずに連絡を取り続けて、就職して社会人になってしばらくしたところで本山さんが彼氏と別れたのを知って、再度告白をしたと。」

「そこから付き合いだして、その先も覚えている?」

「えーと、数年間付き合った後にプロポーズして結婚、今に至る」

「そう」

「二周目の俺は諦めなかったんだな」

「そう」

「よく頑張ったな俺」

「ほんと、そうだね」


そうか、このタイムリープは並行世界じゃなくて一本につながるようになっていたのか。だから未来が変わっていると。


「えーと、いまさらだけどもう一度言うね。俺は本山さんが好きです。これからもずっと一緒にいてください」

「本山じゃないでしょ」

「あー。茜、好きです。ずっと一緒にいてください」

「うん。もちろん。それにしても、20年近く経ってからもどってくるなんて、本当にあなたは遅刻魔ね」


高校時代へタイムリープしても、定番のようにラブラブにはなれず、結局は失敗だらけでなかなかうまくいかなかった。一周目よりは良くはなっていたけど、最終的には二周目も好きだった女の子には付き合えずに終わってしまった。でもその後に未来を変えたのは諦めなかったから。自分に必要なのはタイムリープではなくて諦めないという気持ちだったのだ。

最終話まで読んでくださってありがとうございました。感想などお待ちしています。

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