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 ようやく私は考えついた。


 筋トレをしよう、と。



 なぜこんな考えに至ったかというと、単純に、筋力をつけたらSTRの数値が上がるのでは?と思ったから。

 

 だって、ゲームのキャラクターたちは、最初のステータスの時点で今の私より数値が上なんだもん。これは、体格差が影響していると思うんだ。


 だから、まず筋トレで筋肉をつけようかと思った次第。


 早速腹筋をしたいんだ、けど……。


 メイドの目があるからなぁ……。


 侯爵家の令嬢ともなると、常にメイドが近くにいる状態なのだ。


 なんなら今も自室の扉の横に一人メイドが控えていて、こちらを見ている。



 急に腹筋をし始める幼女。

 明らかにおかしいだろう。

 まぁ、そもそも地面に寝転がることを許されないと思うけど。


 腹筋は……夜にすればいいか。八時にはメイドが退室するし。



 じゃあ他に伸ばせそうな能力といえば?


 ……知力、つまりINTかなぁ……。


 INTが高い人は賢いし、数値が高ければ高いほど魔法の威力が高くなる。


 でも、これってどうやって高くすればいいの?


 うーん、暗算でもしてみるか?


 12かける14は168、3かけ―――


 ピコンッ




「びっ」



 危ない危ない、びっくりしたって言っちゃうところだった。

 びっ、とは言っちゃったけど。お陰でメイドから変なものを見るような目で見られている。辛い。



 何故そんなにびっくりしたかと言うと、不思議な音とともに、目の前にステータスパネルみたいなものが現れたからだ。


 どれどれ…。


『INT:72(+60)』



 は?



 ……ちょーっとまって。

 落ち着こう。


 ゲーム〈私の記憶〉では、ヒロインや攻略対象は1レベル上がるごとに大体ステータスが平均で5か6くらい上がっていたはず。


 それなのに、ちょっと計算したくらいでぷらすろくじゅう?


 ………レベル無限ってこういう事なのかな……。


 壊れスキル確定だわ、これ。



 まぁ、嬉しいんだけどね?だって、修行すればするほど強くなれるってことだし。

 ただ、実際に真ボスになってみたら、やはりヒロインは真ボスにかなうわけないって事がよくわかった。

 さっさと倒すのを諦めといて良かったぁ。無駄足になるところだった。


 それにしても、私のレベル上げに対するモチベーションはかなり上がった。だって、鍛えれば鍛えるほど強くなることが確約されているのである。



 よし、メイドが来てないときはステータスを伸ばすことに時間を使おう。


 私はそう決意した。







 それにしても、どうやって伸ばせばいいかわからないステータスもある。


 例えばMP〈マジックポイント〉。つまり魔力量。


 ライトノベルの典型にのっとると、魔力量は魔力を子供の頃に枯渇させることで大きくなるんだけど……。


 なにせ、私は魔法の使い方がわからない。

 ゲームでは魔法を使っていたから、多分使えると思う。


 うーん…図書館の本に魔法についての本があったりしないかな?


 うちは侯爵家であるから、家に大きな図書館がある。

 本の冊数はだいたい3万冊。本が貴重であるこの世界では有数の多さ。

 一冊くらいは魔法の本があってもいいだろう。


 とりあえず、メイドに頼んでみるか。


「ねぇ、あなた」


 ……名前、分からん。


 いや、典型的な悪役令嬢みたいに、べつに使用人に辛く当たったり暴力を振るったりしている訳ではないよ!?本当だよ!?


 ただ、名前がわからないだけなんだ!


 しょうがないじゃん!だって、この屋敷にメイドなんて数十人いるんだよ!?しかも毎日のように控えているメイド変わるし!全員の顔と名前を覚えろと!?

 ……無茶だよ。みんな同じに見えてしまう。


 まぁ、そのうち専属メイドがつくらしいし。その人の名前と顔さえ覚えればどうにかなるでしょ。たぶん。


「…お嬢様、どうかなさいましたか?」


 あ、メイドさんをほったらかして考え込んでしまっていた。おかげで再び変な目で見られている。


「図書館にあんないしてちょうだい」


 この体は3歳なので舌っ足らず。すごく言葉が発しにくい。


「かしこまりました」


 メイドは私に向かって頭を下げ、了承してくれる。


 そして、メイドの後ろを歩き、図書館に向かう。


 ちらっとメイドの横顔を見る。

 ……不審には思われては、いないか。


 図書館に行きたがる3歳児は、ひょっとしたら怪しがられるかと思ったんだけど、そんなことはなかったらしい。


 まぁ、考えてみればそれはそうか。もう家庭教師によって文字とかは読めるようになってるし、もっと文字に触れたいと思っている、とか考えているのかもしれないな。このメイドは。


 ……それにしても、図書館までの道程が長い。


 侯爵邸、でっかいんだよね……。前世だったら、東京ドーム◯個分とか言われてたと思う。


 もう5分くらい歩いたし、そろそろついても良くないか?

 メイドはスピードを落として歩いてくれているとはいえ、3歳児の足で長距離を歩くというのはなかなかきつい。

 息が切れてきた。


 もうついてくれ〜と願っていると、メイドが遂に立ち止まる。


「お嬢様、到着いたしました」


 ……やっとついた!図書館に!


 目の前には、メイドの背丈の2倍くらいの大きさの扉。そして扉の左右に鎧を着て槍を持った兵士。


 その上には、この世界の文字で『図書館』と書かれている。



 ……こんなに扉を仰々しくする必要はあるのだろうか?と思ったけど、口には出さない。

 兵士がいるのはわかる。本が盗まれたらいけないし。

 でも扉は普通でいいだろ。今兵士さんが開けてくれてるけど、めっちゃ重そうだぞ。あぁ、見栄を張るというやつだろうか。


 そして、扉が開ききった先にあった光景は……大量の本棚と、それに入った本。



 ……絶対魔法の本一冊くらいあるぞ!探せ!



 そう心のなかで叫び、私は歩き出した。


 ……走り出したかと思ったか、馬鹿め。そんなことしたらメイドが家庭教師に告げ口するんだぞ。そして授業中にそのことについて言及するんだ。


 ……カテキョ怖い…。


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