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 そこは、スラム街の端にある、スラムにある家にしてはまだ綺麗な家があった。

 蔦とかが壁に這っていて、オシャレな感じになっている。

 それにしても、地面の草が邪魔すぎる。

 この人たち、雑草抜き全然してないよ。だって、私の背丈くらいまであるよ?


 しょうがないので、植物魔法を使って雑草だけを枯らす。

 この魔法は植物の生命力を吸い取って、自分のHPに変換する魔法。これから病気を治さないといけないし、自分のHPはたくさんあったほうがいい。


 周りの人たちが、また呆れたような目を向けてくる。言うなれば、「そんなことに魔法を使うな」だろうか。いいじゃん。魔法をどこで使うかなんて人の勝手じゃん。


 それにしても、潜んでいる1人は全然姿を見せないな。ばれてるんだから、そろそろ姿を現せばいいのに。


 そんなことを考えていると、ゴーデルが家の扉を開けてくれた。よって、みんなの後に続いて家に入る。


 家の中は結構きれい。まぁ、汚かったら病人の容態に悪いもんね。そこらへんはこの人たちもわかっているのだろう。

 そして、奥の部屋にゴーデルが一人で入って行き、私たちは扉の前で待つ。


 ……なんか言い争う声が聞こえるし、バチンッという頬を叩く音も時々聞こえるんだけど……ゴーデルさんや、大丈夫そう?

 でも、スレイたちは我関せずといった態度なので、もしかしたらこれが日常なのかも。いや、たぶんそうなんだろうなぁ。


 しばらくすると、頬に赤い手形がついたゴーデルが戻ってきた。

 ゴーデルは涙目になって赤くなった頬をさすりながら、口を開いた。


「入ってくれ。話がしたいらしい」


 なるほど。話、か。

 もしかしたら、マフィアを明け渡すのに反対派なのかもしれない。

 絶対説得しよう。


「わかった」


 と声をかけて、部屋に入る。私の背後には誰もついてきていないことから、おそらく一対一での勝負をお望みということなのだろう。

 よし、腹を括ろう。


 いざ、尋常に―――


「ごめんなさい!ゴーデルが無茶を言って!」


 うん?

 なんか、出鼻を挫かれたんだけど。

 ユーリさんは茶色の髪を下ろしていて、ベッドの上に座っている。しかし、顔色が真っ青だし、血を吐いた痕がある。結構重い病気なのだろう。

 やつれた顔には、失望の表情が浮かんでいる。


 それにしても、なんで私は今謝られてるの?

 酷いお願いをしたのはこっちだと思うんだけど。

 もしかしてゴーデルはマフィア譲渡の話、この人にまだしていないのかな?


「無茶?」

「……私、相当な数の商人とのツテがあるんだけど。

 昔、大商人の方が持っていた貴重な本を読ませてもらって。

 知ってるのよ。光魔法レベル10の魔法は、死者を蘇らせ、死病すら治すんだって。

 でも、同時にその魔法は術者の命を奪うものだと書いてあったわ。

 ゴーデルはあなたを騙して、私を治させようとしたんでしょう!?」


 ユーリさんの中で、ゴーデルがすごく悪者になっている件。

 いや、ゴーデルはマフィアを明け渡してまであなたを救おうと頑張っているんですよ!?なのに、それは流石に可哀想では!?

 チラッとゴーデルの方をみると、涙目になっている。そりゃあそうだ。

 ちゃんと弁明せねば。

 そう思った私はあわててゴーデルのことを擁護する。


「違うよ。私が無茶なお願いをしたから、交換条件としてあなたの病気を治すことになった。それに、『光魔法レベル10:神の軌跡』の代償は、HP5000。だから、HPがその二倍くらいある私は死なないの」


 私がそう言うと、ユーリさんは泣きそうな顔になって、

「本当に……?」

と呟く。

 だから私は、満面の笑みで頷く。


 それを見たユーリさんは、やっと、

「お願いします。

 ちゃんと恩は返します。例えその魔法があなたにとって何の代償もないものだとしても」

と言ってくれた。

 

 良い人だ。

 こういう場所で育った人は、すぐに人を裏切るような人ばっかりだと思っていたけど、そうではないみたい。

 それじゃあ……


 一応光魔法はカンストしているが、魔法名を念じた方が使いやすいため、心の中で唱える。


『光魔法レベル10:神の軌跡』


 生命力がごっそり減っていく感じがするが、気にせずに魔法を行使する。

 私から虹色のエフェクトが巻き起こり、光はユーリさんまで包んでいく。

 そして、光はゆっくり収まり……


「くるしく、ない」

 ユーリさんがポツリと呟いた。

 光はどうやら隣の部屋まで届いていたようで、皆が扉から駆け込んでくる。

「「「「「ユーリ(姉さん)!!!」」」」」


 うん?なんか今、一つ声が多かったような。

 そちらの方を見ると、さっきまで一緒にいた4人の後ろに、少年が一人増えている。

 ……あれ?なんか見覚えがある気が……ギルドとかであったのかもしれないな。

 でも、気配からして、この少年が設立メンバー最後の1人なのだろう。


 みんなはユーリさんに駆け寄って、心配そうに顔を覗き込んでいたが、ユーリさんの顔色に赤みが戻っているのを見て、みんなでユーリさんを抱きしめる。みんなの目には、涙が浮かんでいた。

 私は空気を読んで、部屋から退出する。

 とりあえず今日は帰って出直すか。

 流石にこのムードを壊したくない。


 なんか、いいなぁ。

 家の壁にもたれかかりながら私はそう思った。


 だって、話を聞くに、この人たちは血が繋がってないんでしょ?でも、命を救うために、大事なマフィアを手放した。

 私はお父様とお母様と血が繋がっているはずだが、例え私が病気になって、侯爵っていう地位を捨てたら病気を治せると言われても、きっとお父様は私を見捨てるだろう。きっとそれはお母様も同様。心を読んだことがあるし。



 私はこの先、彼らみたいに、全てを捨ててまで守りたいと思える人ができるのだろうか?



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