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「……で?」


 男の方――鑑定によると名前はニールらしい――が私に問いかけてくる。


 で、とは?


「なに?」

「なに?じゃねえよ、お嬢ちゃんは何の用で攫われて来たんだ?

 それほどの実力なら、誘拐も防げたろ?」


 あーなるほど、目的を話せっていうことか。

 えー、話しても反発される気がするんだけど。まぁ試しに話してみるか。


「マフィアをのっとらせてちょうだい?」

 こてん、と首を傾げて私はそう言い放った。


 しーん……


 また静まり返った。

 3人とも固まってるよ。

 うーん、やっぱり駄目かな?私みたいな少女の下につくのって嫌だよね、普通に考えて。


 しばらくして、ニールが口を開く。


「……俺は良いんじゃないかと思うが」

「ちょっと、本気!?」


 アメリアさんがびっくり。私もびっくり。

 まさかの賛成!?

 絶対「何馬鹿なこと言ってんだ」みたいな反応されると思ってたんだけど。


 すると、二人は私から少し離れて何か内緒話をし始めた。

 ……聞いていいかな?

 悪巧みとかされたら嫌だし、聞いていいよね?


 強化魔法『聴覚強化』で盗み聞き。


(―――持ってるんなら、治せるかもしれないだろ)

(たしかに……)


 あぁ、最初から聞けなかった。

 全然何の話かわからん。

 でも悪巧みではなさそう。治すって言ってたし。

 いや、まだ分からないか。利用するだけ利用して、私を捨てるっていう可能性もあるからね。


 二人が内緒話を終えて、再び寄ってきた。


「俺達二人は賛成することにした」


 その方向で話がまとまったらしい。


「ありがとう」



 でも、スレイとゴーデルが起きないとどうしようもないと思うんだ。

 多分ゴーデルがこのマフィアのボスだし。

 でも、当分起きなそうだな…。


 ………無理矢理起こすか。


 水魔法で水を二人の頭にバシャンッッ!!!



「うおっ!!!」

「きゃっ!!!」


 よし、二人とも起きたみたいだ。

 アメリアとニールが呆れた目で見てくるけど無視だ。


 起きて早々、二人は私のことを睨んでくる。さらに殺気も向けてくる。

 まぁ、さっきまで戦ってたししょうがないか。

 ……これ、もう一度戦ったほうが良いのだろうか?二人はやる気に満ち溢れているけど。

 私も殺気を出し、拳を握って構える。


 一発触発の空気。


「ちょーっと待った!」


 声を上げたのは、ニール。

 すごい、この空気の中に割って入れるとは。殺気とか凄かったのに。

 あ、めっちゃ汗かいてる。やっぱり怖かったのか。かわいそうに。


「なぜ止める?」


 訝しげにそう言ったのはゴーデル。

 私を庇うような形だもんね。


 ニールはそんなゴーデルに近づき、ゴニョゴニョと内緒話を始めた。

 多分、私がお願いしたことについて話しているんだろう。

 説明するのはめんどくさいし、とても助かる。

 なので、静かに待つ。


 ゴーデルは難色を示していたようだが、ニールとアメリアが何かを囁いたことで、ゴーデルとスレイも真剣に悩み始めた。


 十分後。


「わかった。その提案を受け入れる」


 え、ほんとに?

 かなり無茶なことを頼んだと思うんだけど。


「ただし、条件がある」


 条件とな?

 何だろう。資金なら出せるよ。私って7歳のくせに、冒険者ランクSクラスだし。

 お金は貯金しているが、すでに侯爵邸を買い取れるくらいの値段にはなっている。


「話して」


「……この場にいる5人は『影炎』の初期メンバーなのだが、もう一人初期メンバーがいる。

 そいつはとても頭が良かったから、『影炎』の財政を担っていたんだが、1年前ほどに病で倒れてだな―――」


 それからゴーデルは、その人が倒れてから私を攫うという依頼を受けるまでの大まかな経緯を話してくれた。

 まさか『ポルカ』の名前がここで出てくるとは、ねぇ……。

 私は、厄介なマフィアに目をつけられたマフィアを譲り受けたのか。悲しい。

 まぁ、いいけどね。遠くない未来、学園に入学したら、子息と敵対することになるかもしれないんだし。

 今敵対したって同じようなものだろう。いや、同じではないか。……どうでもいいな。


 それにしても、病気かー。

 病気を治すには、治癒魔法では効かない。治癒魔法はあくまで怪我を治すものだ。

 よって、光魔法が必要となる。

 しかし、光魔法を持っている人はほとんどいない。

 ヒロインですら、序盤では使えなかったんだから。

 よって、それを私に頼むっていうことは、無理難題をふっかけていることに等しい。


 しかし、先程アメリアが私を鑑定したことで、光魔法も使えるということがわかった。

 だから、仲間の命を救うために私の言うことを聞くって感じかな?

 ……そう考えると、私がすごく悪党みたいに思えてきたな。


 そういうわけで、断る理由がないので一つ頷く。


 すると、ゴーデルは悔しそうな顔をしてポツリと呟いた。


「やっぱりもう一人潜んでいることに気づいてたんだな…」


 あ、そういえば、ゴーデルさっき5人って言ってたね。

 自然すぎてスルーしちゃってた。



 いや、でも気配消すのは上手だよ?私が強すぎるだけだよ、とあわあわしながら謎の言い訳をしていると、みんなが吹き出した。

 ……人が慌ててる様子を笑うなんて、なんという悪い奴なんだ!

 …………マフィアか。





 私たちは5人で―――潜んでいる人も合わせたら6人で、スラム街を歩いている。

 しばらくすると、一軒の家にたどり着いた。

 そこに、病を患っている人―――ユーリさんがいるらしい。




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